最近、小説を読んでいないなと思って

 いました。

 たまには読んでみようかと手に取っても

 後回しになったり、読みきれなかったり。



 以前から気になっていたこちらの本。



 9篇からなる短編集です。

 

 いつも人を惹きつける文章でレビューを

 書かれているハイジさんが紹介されて

 いたので、ぜひ読んでみようと思い、

 さらに読書会に参加された方の

 感動しましたの一言で、やっと読み始め

 ました。


 どれだけ小説から気持ちが離れて

 いたのか真顔


 著者であるジュンパ・ラヒリは

 ロンドンで生まれ、両親はカルカッタ

 出身のベンガル人。幼少時に渡米。


 静かな文章で、とても細やかな表現。

 大きな事件が起きるわけでは

 ないけれど、小説の中にアメリカと

 インドが存在していて、書かれている

 日常に広がりを感じます。


 表題となっている『停電の夜に』

 これを読んだだけでジュンパ・ラヒリが

 好きになりました。


 「死産」を経験した若夫婦は、すでに

 お互いの気持ちが冷め、すれ違いの毎日を

 過ごしています。

 ある日電気会社から届いた停電の知らせ。

 その夜から2人はろうそくの灯りのもと

 秘密を言い合う。

 そんな素敵なシチュエーションなのに

 読み終えたあとの切なさ。



 『三度目で最後の大陸』

 

「息子が落胆したとき私は言ってやる。

 この俺は三つの大陸で生きたのだ。

 おまえだって越えられない壁がある

 ものか」

「これだけの距離を旅をして、これだけ

 何度も食事をして、これだけの人を

 知って、これだけの部屋に寝泊まりした

 という、その一歩ずつの行程に、自分

 でも首をひねりたくなることがある。

 どれだけ普通に見えようと、私自身の

 想像を絶すると思うことがある。」

 

 読んでいて胸が熱くなりました。

 久々の感覚

 そしてこの文章がこの小説を物語っている

 と思います。


 他の短編ももちろんおすすめです。

 

 短編集だったことで、リハビリに

 なりました。

 また是非読んでみたい作家です。