秋ですね…


 



  志村ふくみ

 染色作家・随筆家。31歳のとき母の

 指導で植物染料と絹の紬糸による織物を

 始める。重要無形文化財保持者(人間

 国宝)、文化功労者。



 日本語とは、このように美しい言語で

 あったのかと思わせる手紙のやりとり。


 手紙は季節を語る一文より始まります。

 例えば、春。


 「この季節に染めるからすのえんどうや

 八重葎、現のしょうこなど、日に日に

 延びざかり、そぞろ心をときめかし、

 野に出て草々を摘んできては染めて

 おります。その萌えいづるうすみどりの

 うるわしさ、おめにかけたく存じます」


 批評家・随筆家でもあり、詩人でも

 ある若松英輔さんに「詩」だと

 言わしめる志村さんの文章は、

 読んでいてため息がこぼれます。

 

 2人が語る内容は、リルケ、須賀敦子

 パウル・クレー、柳宗悦、小林秀雄など

 芸術や言葉、教育についてなど様々。

 教養のある人たちの会話とは、

 こんな風であるのかと思わされます。

 

 中でも2人とも交流のあった石牟礼道子

 さんについては、何度も登場します。

 

 「生身の肉声を書こうとは思うのですが、

  そのままではつろうごさいますので、

  言霊にして自分と一緒に焚いて、

  荘厳したいと思っているのです」

              石牟礼道子


 そしてこの本の題名も石牟礼道子さんの

 作品の中の場面より引用されたものです。


 実は何年も前に買ってそのままになって

 いた本でした。

 2016年に世田谷美術館で

 志村ふくみさんの展示を見たあとに

 (こちらも素晴らしかった)

 この本を偶然本屋で見つけて買ったものの

 なかなか最後まで読むことができず、

 3回目(4回目?)にして

 やっと読み終えることができました😅


 どうしても一文一文、味わって読まずには

 いられないので、途中で力尽きる…


 今回読み終えることができて

 良かったです😄


 この本と向き合っていた時間は

 静謐そのものでした。