妄想blです。
お嫌いな方はスルーで。
わん!って声と共に視界に飛び込んできた白い塊。
ビックリして、思わず固まった。
だけど、固まったのは相手も同じだったようで。
生垣に前足を掛けたまま、じっとオレを見つめて。
パタパタと揺れる尻尾、だけど、顔をん?って具合に傾げる。
・・・可愛い。
撫でたいけど、こんな間近で見る大型犬は初めてでちょっと戸惑ってしまう。
・・・撫でても、いいのかな?
「たろうは賢いから、噛んだりしません。大丈夫。」
その松本さんの言葉に安心して、そっとその頭に触れた。
「・・・ふわふわ。気持ちいい。」
その感触は暖かくてふわふわで。
撫でるオレの手に頭を擦りつけてくる。
そうかと思えば、オレの手をクンクンと嗅いでは
松本さんを見て首を傾げる。
・・・なんだ?
たろうの仕草が気になって、オレも松本さんを見た。
「うん、そっくりだもんな。ビックリしちゃうよな。」
困ったような笑顔でたろうを見つめて、その頭を撫でる松本さん。
松本さんとオレを交互に見ながら、それでも尻尾を揺らしてるたろう。
たろうも混乱しちゃうくらい、オレはニノにそっくりなんだろうか。
「・・・そんなに、似てますか?」
「うん、似てます。似てるってレベルじゃないくらいです。」
その言葉に、ちょっとだけ切なくなった。
松本さんの言うとおり、たろうが混乱しちゃうくらい、ニノにそっくりなオレ。
本物じゃなくてごめんなって、ほんの少しだけ思ってしまう。
そんなオレの気持ちを察するように、たろうがオレの手をペロペロと舐める。
慰めてくれてんの?
「・・・たろう、ごめんな。ありがとう。」
ふわふわで暖かいその温もりと優しさにちょっと泣きそうになった。
「二宮さーん、こっちが玄関です。」
「あ、はい!」
声のするほうを見れば、門扉から体半分出してる松本さんがいて
慌てて追いかけた。
門扉の表札に書かれた名前で、ここが「大野」さんの家だとわかる。
どんな人なんだろうか。
知り合いだと言っていた松本さんは、合鍵で玄関を開けてすごく自然にオレを招き入れてくれる。
扉を開けるとそこは、広いリビングダイニング。
大きな掃き出し窓から続くウッドデッキにたろうの姿が見えた。
部屋の奥のもう一つの吐き出し窓からは、中庭らしいものが見える。
家の造りで外の通りからは見えないようになっているのが面白い。
キョロキョロと部屋を見渡してるオレをそのままに、松本さんは奥の掃き出し窓を開けてその向こうの中庭に向かって叫ぶ。
「あ、やっぱりそこにいた。大野さーん!」
初めて会うこの家の主に、今更だけどほんのちょっと緊張した。