最近、自分の体の変化について考えることが増えました。
きっかけは、眠りのことです。
以前は布団に入れば自然と眠くなり、朝までぐっすり眠れていました。
ところがここしばらくは、夜中に何度か目が覚めたり、まだ外が暗いうちに起きてしまったりする日が続いていたのです。
何か大きな悩みがあるわけではありません。
仕事が特別忙しいわけでもないし、人間関係で困っていることもない。
それなのに、なぜだか眠りだけが以前と違うのです。
最初のうちは「たまたまかな」と思っていました。
でも、それが何週間も続くと少しずつ気になってきます。
眠れないほどではないけれど、眠った気がしない。
体調が悪いほどではないけれど、なんとなく疲れが抜けない。
そんな曖昧な不調は、意外と人に相談しづらいものです。
「この程度で病院へ行くのも大げさかな」
そう思いながら過ごしていました。
そんなある日、たまたま目にしたニュース記事で「プレ更年期」という言葉を知りました。
更年期というと、もっと先の年代の話だと思っていたので少し驚きました。
けれど記事を読んでみると、睡眠の質の低下や疲れやすさ、自律神経の乱れなど、自分に当てはまることがいくつもありました。
もちろん記事だけで判断するのは危険です。
それでも「もしかしたら」という気持ちが生まれ、一度きちんと相談してみようと思いました。
少し勇気を出して婦人科を受診したのです。
病院へ行くまでは正直緊張していました。
大げさだと思われたらどうしよう。
こんなことで受診していいのだろうか。
そんな気持ちもありました。
ところが待合室へ入ると、少し意外な気持ちになりました。
そこには私と同じくらいの年代に見える女性たちが何人も座っていたのです。
静かに本を読んでいる人。
スマートフォンを見ている人。
診察券を握りしめている人。
誰も何も話してはいませんでしたが、それぞれが何かしらの不調や悩みを抱えてここに来ているのでしょう。
その光景を見たとき、不思議と肩の力が抜けました。
私だけじゃないんだ。
そう思えたのです。
人はつい、自分だけが取り残されているような気持ちになることがあります。
周りの人は元気そうに見えて、自分だけが不調を抱えているように感じることもあります。
でも実際には、多くの人が見えないところで体や心の変化と向き合いながら毎日を過ごしているのかもしれません。
診察では先生が丁寧に話を聞いてくださり、体質に合いそうな漢方薬を処方してくださいました。
そして生活習慣についてもいくつかアドバイスをいただきました。
診察室を出たときには、原因がすべて解決したわけではないのに気持ちが軽くなっていました。
「相談してよかった」
素直にそう思えました。
それからは漢方を飲みながら、ぬるめのお風呂にゆっくり浸かったり、寝る前のスマートフォンを見る時間を減らしたりするようになりました。
急激な変化はありません。
でも少しずつ、自分の体を大切に扱うことを覚え始めたような気がしています。
そんなある朝のことです。
いつものように早く目が覚めてしまいました。
時計を見ると、まだ朝の五時前。
以前なら「また眠れなかった」と落ち込んでいたと思います。
けれどその日はなぜか、そのままカーテンを開けてみました。
すると、窓の外には思いがけない景色が広がっていました。
空が淡いピンク色に染まっていたのです。
少しずつオレンジ色が混ざり、その上にはまだ夜の名残を感じる青色が残っています。
静かな朝焼けでした。
車の音も少なく、街全体がまだ眠っているような時間です。
私はしばらく窓辺に立ったまま、その空を眺めていました。
こんな景色を最後に見たのはいつだったでしょう。
もしかすると何年も前かもしれません。
眠れないことばかりに意識を向けていましたが、その時間だからこそ出会えた景色もあったのです。
もちろん、眠れないこと自体が嬉しいわけではありません。
できることなら朝までぐっすり眠りたいと思います。
でも、少しだけ考え方が変わりました。
不調は敵ではなく、自分の体からのメッセージなのかもしれない。
そう思えるようになったのです。
若い頃は無理をしても平気でした。
多少寝不足でも頑張れました。
けれど年齢を重ねれば、体は少しずつ変化していきます。
それは決して悪いことではなく、生きているからこその自然な変化なのでしょう。
以前と同じように頑張ることではなく、今の自分に合った過ごし方を見つけること。
それが大切なのかもしれません。
最近は夜になると意識して照明を少し暗くしています。
温かい飲み物を飲みながら本を読む日もあります。
眠りを急かすのではなく、「今日も一日お疲れさま」と自分に声をかけるような気持ちで過ごしています。
すると不思議なことに、以前ほど眠りのことばかり考えなくなりました。
体の変化を受け入れることは、決して諦めることではありません。
今の自分を知り、今の自分に合った方法を見つけることなのだと思います。
婦人科の待合室で見た女性たちも、それぞれ自分の体と向き合っていたのでしょう。
そして私もまた、その一人です。
あの日見た朝焼けは、特別な出来事ではありませんでした。
けれど私にとっては、小さな希望のような景色でした。
変化することを怖がらなくていい。
少し立ち止まりながら進んでもいい。
そんなことを静かに教えてくれた気がします。
これからも体は少しずつ変わっていくのでしょう。
だからこそ、自分の声に耳を澄ませながら、無理をしすぎず、穏やかに付き合っていきたいと思います。
そしてもしまた早く目が覚めた朝があったなら、今度は少しだけ窓の外を見てみようと思います。
そこには、その時間だからこそ出会える景色が待っているかもしれませんから。