少し古いけど、『新潮45』の2011年11月号に『「最も危険な政治家」橋下徹研究』という特集記事が出ていた。
 書いているのは、上原義広氏・野田正彰氏・薬師院仁志氏・一橋文哉氏の4人。

 上原氏の記事は、ヤクザだった橋下氏の父親のことと、中学時代・高校時代のことや弁護士時代のことが出ている。立身出世話・生い立ちの記だ。
 「貧しい家庭で育ち、ハングリー精神で這い上がった」過程が関係者の証言などによって綴られている。
 読み物として面白いし参考にもなる。政治家としてどういう行動をとりそうかというところはあまり読み取れないが、性格・人間性の分析としてもまずまずだと思う。

 野田氏の記事にも、高校時代や弁護士時代のことが出ている他、大学時代の話も出ている。
 「橋下氏が早稲田の学生だった頃、中古革ジャンパーにワックスをかけて売る商売をしていた」などのちょっとしたエピソードがいくつか書いてある。
 弁護士時代は裁判が嫌いで示談交渉を重視していたそうだ。
 文の最後の方に「演技性人格障害」という言葉が出てきて「自己の劇化を止めない」「自己顕示欲型」「彼の言葉をまともに受けとめ対応していけば、常に彼の内容空虚性に突き当たるのである」とある。
 演技性人格障害というのは、歌手のマドンナとか飯島愛のようなタイプが浮かぶけど、橋下氏のような人もこのタイプになるのかもしれない。

 薬師院氏の文は、橋下府政と平松市政を比較し、「橋下府政は借金を増やしたが、平松市政は着実に市債残高を減らし続けている」ということが書いてある。
 確かにそれはそうなのだろうが、その理由・財政政策の内容がちゃんと書いてないので、あまり参考にならない記事である。

 一橋文哉氏の文は、島田紳助氏と橋下氏が知り合いで、北新地の高級クラブやミナミの寿司店などで飲み歩いた仲だと書いてある。
 橋下氏よりも紳助のことが中心に書いてある文で、橋下徹の研究になっていないと思う。

 4つの記事を比べてみるとどれもそれぞれ作者の個性や専門分野が反映されていて、その点では面白い。
 野田氏の文が一番参考になる記事で、上原氏の記事にもいいところがある。他の2つは、橋下徹研究としては、ずれていたり突っ込み不足だったりの記事だと思う。

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