タイトル「源さんの戯れ言」
テーマ「バカふざけ話」(1~200)
狐や狸の楽しい故郷
源さんの戯れ言
「宝の持ち腐れ」
(源さんの漫画風「宝の持ち腐れ」話)
ここは、
山深い信濃の国でのこと。
山間の小高いこんもりとした
見晴らしの良い山に
一匹の女狐が住んでいた。
この女狐は頭も器量もよく、上手に化け、
人さまを騙すことも上手であった。
ある夜、
大層可愛い夜狐にめかし込んだこの女狐は、
安心を装うかのように綺麗な娘に化けた。
すでに陽が落ちて暗くなった夜道、
家路に急ぐ男や女等を木陰に潜んでは
突如現れ、優しくぶつかっては
天性魔女の手の如く、何の触りもなく
財布を抜き取っていた。
おらは酔っぱらただ~♪
その夜狐、財布からカードだけを抜き取ると、
紙幣や小銭には目もくれず、
その財布を草むらに、ポイと、投げ捨てた。
この女狐は何が目的なのか?
盗んだ財布から何枚かのカードをつかむと
今夜はこれくらいと思った夜狐、
一目散にその場から立ち去った。
夜狐にとっては喉から手が出るほど
欲しいカード
この女狐、どれほどカードが好きなのか
を探るため、怪しまれず、苦労しながらも、
女狐の住み家をやっと辿った。
すると、
大層立派なその巣には、
これまで盗み取った人さまの大事な
保険証や銀行カード、何某商店街などの
さまざまなカードの山だった。
しかも、
カードを見ると忘れては困ると、
カードには暗証番号らしきものまで
記したもの際ある。
それなのに、これでは命をかけ盗んだ挙句、
使わぬことには宝の持ち腐れやないか。
それにしても、
盗られたものはさぞかし困っただろう。
さぁ、これから日本語学校よ
私、勉強大好き
それでは、この狐、一体何が目的で盗むのか?
更に、この女狐をよくよく調べてみた。
すると、
赤毛や金髪、茶髪等の外国人に紛れ込んで、
この村に唯一ある小さな日本語学校に
通っていることが分かった。
え!狐が・・日本語の学校、
こりゃ驚いた。
人を騙す狐が、言葉や文字を習うため学校に
通うとは、ますます怪しさが募る女狐だ。
それにしても、狐が
言葉や文字を習うなんて何のためや?
そしたら、その謎も難なく解けた。
それは、さまざまなカードに目が眩み、
カードの裏か表も分からず、
さらにカードの縦やら横も分からず、その、
分別をしたいがためと分かった。
それ等を、更によくよく調べてみたら、
カードでも
何と、盗み取るのは保険証と通院券が主な
目的と分かった。
それで、
この狐、何の目的で、何をする気や、
と、更なる疑問が頭にのしかかった。
あら、まぁー 行儀よくてねぇ
ちょっと痛いわよ
まさか、人に化け、コロナのワクチン接種
でもしてもらう算段か?
それとも、悪性腫瘍や物忘れや何某の病で
通院したい病気でもあるのか?
そしたら、
これ等も造作なく、その謎も解けた。
高齢が狸の世界にも及んできて、
認知症や歯が痛む、
腰が痛む、目が回るなどと、わけの分からぬ
病を患う狐や狸も多くなってきた。
それで、
仲間の狐や狸に、盗んだカードを必要に渡し、
風邪をひいた、熱がある、
血圧が高い、白内障や
肩が凝る、腰が痛いという狐や狸に
整骨院や整形外科、内科や外科に通うものの
手助けに命をかけていたのである。
やっと、診てもらえそうな
これを知って更に驚いた。
そうであるなら、大した女狐である。
それで、暢気で暇な岡目八目の自分は、
その狐の知恵を、
人さまの助けに使ってしてほしいと、
ミミズのような達筆で、
メモを書いて目立つ
巣の入口にぶら下げて来た。
狐といっても学校に通っているから、やっと書いた
文字でも、何とか意味は通じるであろう。
賢い狐、こぼれそうな
技量や驚くような知恵があるのに勿体ない。
その利口な頭で、人さまの前へ、次から次へと
化けて出るのであれば困る。
その技量は正しく使わぬことには
宝の持ち腐れやないか。
自分は、何もできないが
そう思ったから、
それを記して家路についた。
それでは
次回、またお会いしましょう










