タイトル「源さんの戯れ言」
テーマ「バカふざけ話」(1~200)
奥信濃の 晩秋気配
源さんの戯れ言
BF142「おらが晩秋」20221207
故郷の「おらが晩秋」
山深い奥信濃に老いた狸と狐がおった。
辺り一面、木の葉も落ち、すっかり寂しい山里になってしまった。
寂しがりやの狸は、山の木々の葉っぱがすっかり落ちて、その寂しさに仕事も手につかずにいた。そして、ぼんやりと、でっかい岩にポツリと座って、周りの枯れ果てた木々を眺めていた。
これを見ていた狐は、狸を驚かそうとお色気たっぷりの天女に化けた。
狸を騙そうと、化けるなどは造作のいらぬこと。とは言っても、もう年も過ぎ術も何かとおおざっぱになって、見るものが見ればあれやこれやと、その衣もつぎだらけのボロだらけであった。
寂しそうな狸を眺め 天女と羽衣に化けるか
こりゃ忙しくなるなぁ
すると、
すでに葉がすっかり落ちた枯れ山であったものが突然、黄色、赤などと草木が綺麗に染め上がり、丁度、絵の具を塗ったようになったのである。
これは、見ているものを退屈にはさせぬ。見ているものを釘付けにする。更に、この中に岩杉や松などが、赤や黄色に入り交じり、それは見事な晩秋の風情であった。更に、そこに狐が化けた天女と衣が降りそそいだのである。
狐が天女に化けた
これを見ていた狸は大層驚いた。
枯れ野に天女の羽衣が舞うではないか。
しかも枯れ木に葉が付き、その葉が真っ赤や黄色となって、色とりどりの花が咲いたように鮮やかになった。
だが、年はとりたくないもの、狐は上手に化けたつもりが化けきれず、尾っぽが少し見え隠れしているのが狸には見えた。
これを知った狸は「ドジな狐め」と、言うなり、その狸は妙な動きをするなり怪しげに変化し。それではお返しとばかりに天女の羽衣には風が必要であろうと、何とも厳めしい見たこともない風神に化けた。
雷神 風神
ただこれだけでは寂しくお返しにならぬと言うなり、眩い光が欲しいと思うなり、今度は、瞬く間に光と太鼓を持つ雷神に化
けた。
いやいや、これは雷鳴どころか花火だ。秋の寂しさが漂う山一面が、一瞬にして輝く眩しい赤や黄色の秋の嵐になってしまったのである。
すると、物思いにふけ物悲しい晩秋の佇まいが消えてしまった。何と恐ろしいことに、山を赤々としたのは寂しがりやの狐と狸の仕業である。
山寺
これを遠くから眺めていた寺の和尚と小坊主は、寺の縁の下にうず高く狸が積んだキラキラと輝くコナラの小判を、その山に向かって放り投げていた。
そこには金のかけ橋が、天女や雷神風神に連なった。すると、見事な虹の橋ができた。雲海もできた。
これが、奥信濃の、黄金の晩秋である。
お終い




