笑いのつぶやき
笑いの散歩 151~200
167「彼(あ)の世」
これは誰も経験がありません。空想の世界です。それでは天国や地獄である、あの世に行ってきましょう。他に、誰か一緒に行ってみるかたはおりませんか?あらぁ、どなたもいらっしゃらないですか。それでは毎度のばかばかしい小話をおひとつご覧にいれます。
「おーい、あの世に行く役者は誰だ?」
「へぇ、俺でやんさぁ」
「何だ!お前か」
「お前は、あの世が分かるのか?」
「そりゃ監督、あの世というものは、この世とは違って金(きん)がいたるところで金ぴかに光ってやすよ」
「何だとう?あの世は金ぴらだらけと、お前はいうのか?金平ごぼうの食い過ぎで、適当に監督をごまかしているのじゃないだろうな?」
「そりゃ、へぇ、ですからどっち向いてもまぶしい金ぴかですよ」
「ああ、お前は貧乏暮らしが長かったからわかるのだなぁ。よーし、それじゃ、お前があの世に行ってこい。迷うことはねぇなぁ」
「ああ、道は知っているから迷わんですよ」
「台詞はねぇから、そんなむずかしい顔はするな」
「へぇ、この顔は生まれつきなんです」
「ああ、わかった。最初のおめぇの仕事は、あの世の金ぴかの金を手当たり次第盗んで、この世に送る仕事だ。むずかしい台詞はねぇから簡単だろう」
「でも監督、あの世には鬼がいやすよ。盗んじゃ、牙の生えた鬼にみつかる」
「誰が地獄へ行けといった」
「でも監督、鬼は、あの世にいく先々にいるだぁ」
「バカ、その鬼の目をくぐってする仕事が、おめぇの大事な仕事だ」
「そうは言っても監督、万が一、鬼に見つかったらどうしやす?」
「万が一見つかったらどうする?そうなったら、ほれ、奥の手があるだろう、鬼の涙だ」
「ええ?鬼の涙?!」
「鬼の目にも涙というものがあるだろう、それを使うのだ」
「え!それじゃ無口の俺が役者になる?」
「ああ、金を盗んで鬼につかまるより、鬼を騙す役者になれ」
お後もよろしいようで「あの世」でした。
お盆をあの世と思っている 源五郎