ことわざ漫談小話
ことわざ小話101~150
124「二階から目薬」
この「二階から目薬」とは、まるで効果がなく、もどかしいことを言います。或いは、自分の、おもうようにならないことをいいます。それではばかばかしい小話と参ります。お寺の小僧の「一番鶏」のまきです。
「これ常吉、この頃は東の空が明るくなっても、一番鶏が鳴かぬではないか?」
「へぇ、鳴きませんなぁ」
「それで、おまえは朝が起きられぬと言ったなぁ」
「へぇ、一番鶏が鳴かないと、まだだろうと布団にもぐります」
「東の空が明るくなっても鶏が鳴かないとは、何故だろうとは思わぬか?これ、常吉。なぜ、黙っている?」
「へぇ・・」
「寺の小坊主は一番鶏と一緒に寺の掃除をし、それで太鼓や鐘をたたかなきゃならないのだ」
「へぇ」
「ところが、その太鼓は、村のものが朝飯を食うころになると、山寺から一番鶏の鳴き声と一緒に、やっと、寺の鐘が聞こえてくると、村の者は奇妙がっていたぞ」
「へぇ・・そうですか」
「この、わしも、そう思うぞ」
「へぇ・・」
「これ、常吉、元気なお前は、何故黙っている?」
「それじゃ和尚さん、それはおらぁのせいだから、明日の朝から夜明けとともに一番鶏を鳴かせます」
「何?一番鶏を・・夜明けとともに鳴かせる?」
「へぇ、おらぁは、朝早く起きるのが嫌で、それで、鶏小屋を黒い幕で覆った」
「何?鶏小屋を暗幕で覆った?」
「一回やったら、これがうまくいったので、病み付きになった」
「あれほど日ごろの行いに注意をしているのに、お前は、ええ、何でそのようなアホなことをするのだ。なんべん教えても、お前はダメな小僧だなぁ」
「へぇ、じき忘れるから、おらぁ、鶏の罰が当たったのだ」
「何、鶏の罰?」
「へぇ、二歩までは覚えている」
「何、二歩までは覚えている?」
「三歩あるくと、もぅ忘れるのだ」
「だったら、さんはやめて、いちに、いちにと言って歩け」
「それじゃ、今度は喧嘩好きなシャモになる」
お後もよろしいようで「二階から目薬」でした。
本当にこれじゃダメですね。ああやれば良いものを、お前は何で、できぬのだ。ええ、まったく、じれったいし、ああ、気がもめる。
鶏を、ナマズの次に怖がる 源五郎