ことわざ漫談小話
ことわざ小話1~50
50「目引き袖引き」
これはもう分かりますね。そうです、口には出さず目くばせしたり、袖をひっぱったりして教えることです。それではばかばかしいですが、ちょっと危ないおはなしをします。
「こら、アブねぇじゃないか。ええ、俺の袖を引っ張っちゃダメだ。マグ毛剃り落とすところだ」
「だって、こうして教えなきゃ、知らないでしょ」
「何が知らないのだ、ええ、お客さんの顔剃っているとき、俺の袖を引っ張るヤツがあるか」
「何言っているのよ、そのお客さんは、顔は剃らなくていいお客よ」
「え?さっき顔剃りますか、と聞いたら、うんと返事したなぁ」
「寝ているお客の返事を真に受けちゃダメでしょう」
「それじゃ、ええ!・・これ、どうする?」
「顔半分剃ったから、これは今日のサービスと言ったらどう?」
「え?」
「それで良いんだよ、とうちゃん」
「おらぁ、長いことやっているが、顔剃り半分のサービスなんて初めてだ」
「心配ないよ、とうちゃん。その人はトラ刈り大好きな某球団の大ファンよ」
「そう云いや、よく見りゃちょっと頭も虎だったか!こりゃ、目が覚めたら褒められるなぁ。お釣りはいらないというよ、かあちゃん。俺の腕はまだ確かだ」
ええ、虎刈りの大サービスですか。でもカミソリで顔を剃っているときはむやみに袖を引っ張っちゃ危ないですよ。
毛など幾らさがしてもない 源五郎