この世界に疲れたとき、わたしは空に逃げる。

と言っても、本当に飛べるわけじゃない。


目を閉じて深く深く息を吸い込むと、雲の気配がわかるようになる。


そのとき、小さな扉がふわりと現れるんだ。

扉をくぐると、そこは雲の上のティールーム。


まっ白な雲でできた椅子に腰を下ろすと、ティーポットが勝手に動いて紅茶を注いでくれる。


カップの中では、光がきらきら揺れていた。

「今日は、どんな風に疲れたの?」


声が聞こえた気がしたけれど、誰もいない。

きっと、雲そのものが語りかけてくるんだろう。


この部屋にいると、悲しみも怒りも、なぜか溶けていってしまう。


それは、誰かが「だいじょうぶ」って言ってくれているような、そんな安心感。

紅茶を飲み干すころには、心のどこかに、小さな羽が生えている。


まだ飛べないけど、いつかきっと、飛べる気がする。

静かに立ち上がると、扉はまた、ゆっくりと閉じていった。


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あなたの心にも、ひとときの羽休めが訪れますように。