芸人8 | Review

Review

エンターテイメント評論(本、映像、音楽、お笑い…)



群雄割拠の2010年のお笑い界で頭一つ抜け出したのがピース。決勝進出したM-1グランプリの漫才も面白かったし、何と言ってもキングオブコントの2本目モンスターのコントが凄かった(観客の沸きも含めパーフェクトな出来に優勝を確信したのも束の間、キングオブコメディがまくったため、結果は準優勝)。又吉の台本だとは思うが、笑いの中に何とも言えない哀愁が漂い、見終わったあと優しい気持ちになるという、エモーショナルな内容で、これはなかなかの人が出てきたなと当時は思った。

又吉は「アメトーーク!気にしすぎ芸人」のやり取りが秀逸で、綾部は「町工場芸人」のトークがお見事だった。大阪弁の又吉と茨城出身の綾部のバランスが良く、いいコンビだなと思っていたところへ、又吉の芥川賞受賞。「火花」は確かに素晴らしく、終盤の漫才のシーンでは不覚にも泣いてしまった(挫折感と人間愛という身に覚えのあるような、ないようなの瀬戸際感にグッとくる感じ、これはコントにも共通するところ)。後に芸人がこぞって文章を書く先導者となった出来事だったと思う。



芥川賞受賞前に書かれた「第2図書係補佐」というエッセイがある。本紹介の体を取ってはいるが、ぶっ飛んだ展開になる話ばかりで、時々読み返している。



コンビのピークは2015年の紅白歌合戦。芥川賞作家として堂々審査員席に座る又吉の後ろで見切れる綾部というこれ以上ない演出に爆笑。ただこれ以降コンビとしての活動がほぼ途絶えてしまったのが残念なところ。



「小説家 又吉直樹」としては第二作「劇場」、第三作「人間」ともにそこそこの出来だった。ファンとしては「火花」を超える作品を待ち焦がれているのだがもう少しいい編集者が付けば一皮むけるのか