上映作品解説① 11/14(火)〜19(日)アリスセイラー出演友松直之監督作品大特集 | 友松直之のブログ

上映作品解説① 11/14(火)〜19(日)アリスセイラー出演友松直之監督作品大特集

 

アリスセイラー出演友松直之監督作品大特集アンノウンシアター

 

〒166-0002
東京都杉並区高円寺北2-21-6 レインボービル3F
JR高円寺駅徒歩6分 純情商店街 磯丸水産前

http://uk-theater.com/access/

11月14日(火)〜11月19日(日)
平日 START/17時〜22時半
土日 START/14時〜22時半

14日〜17日¥2,300/1ドリンク付き 18日、19日¥2,800/1ドリンク付き

上映プログラム

 

●「宵闇探偵」30分(1988年)自主

 俺が大阪で高校生をやっていた頃、京都発のアリスセイラーは関西インディーズシーンを席巻していて、俺などもその自主レコードを買って来ては漫画研究会の部活8ミリ映画に(勝手に)使っていたわけだが、この「宵闇探偵」もその流れでアリスセイラーの名曲「お父さん」他楽曲を(無断で)使っている。高校を卒業して大学を一年前期で中退して自主映画を撮っていた頃の一作。十八歳とか十九歳とかそんな頃だが、当時横溝正史やら江戸川乱歩が何度目かの再評価がブームになっていた、というほど大きなムーブメントではなかったかもしれないが、少なくとも俺はハマっていて、その影響下で作った。「恋のため盲目と成り果てた」盲目探偵と、「嫉妬の炎で身を焦がし全身大火傷」の包帯鬼面の殺人鬼が、日本刀と二丁拳銃で殺し合う物語。アンドロイド技術で天皇が死なない「昭和百年」、という時代設定は、実は今でも気に入っている。親父が経営する木材工場のガレージ倉庫に木材を無断拝借して勝手にセット(と言ってもたいしたものではない)を組んで撮影した。どら息子もあったものだ。口約束で工場を継ぐとか言ってたので親父も大目に見たのだろうが当然約束は守らなかった。室内はセットで建物外観はクレヨン画、オープン場面は近所の公民館の舞台を使って舞台劇ふうに表現。ちなみに劇中に登場する医療用ステッキは、バイク事故の大腿部骨折で俺自身が使っていたもの。入院中のベッドでシナリオを書いたのだが、同じく劇中に登場する車椅子は退院の際に病院から盗んだもので、本作は窃盗の証拠映像満載でもあったりする。まあ、諸々時効ってことでご容赦を。

 

 

 

 

 

●「夏色浪漫」30分(1992年)自主

 時代はスプラッターブームであり、俺も「屍の街」というゾンビ自主映画で特殊造形を含む特技監督として参加し、Vゾーンの創刊二号で紹介されたりして、その縁で兵庫県伊丹市の映画祭に出入りするようになり、岡秀樹監督や鉄ドンの連中とつるむようになって、鉄ドン参加監督がアリスセイラーの知り合いだというので紹介してもらい、ご本人との付き合いはこの頃以来である。まあ二十歳そこそこであり、青春時代なわけだが、そのような馬鹿映画の有象無象が群雄割拠するような場にあっても、俺の作品は誰にも理解も共感も評価もされなくて、それが悔しくて、本作は、伊丹市市役所文化振興課職員がべた褒めしていた自主映画作品を真似して、というか製作者にリメイクの許可を得て、こういうそれっぽいのを撮れば評価してもらえるかと思って撮った一作。何やら戦争やら空港問題やら少年少女の胸キュンやら、受けそうな要素が詰まっていて迎合を感じさせる。せっかくそこまでして媚びたのに腹立たしくも残念ながら伊丹市界隈では全然評価されなかったのだが、のちにツタヤインディーズムービーフェスティバルで佳作入選してレンタルビデオ化された。何でもやっとくもんだ。ちなみ同期ツタヤのグランプリは北村龍平監督だったな。アリスセイラーにはじめてまともに依頼してテーマ楽曲「うさぎ」を作ってもらい、看護婦役で出演もしてもらっている。

 

 

 

 

 

●「バラードに抱かれて」60分(1993年)ENKプロモーション

出演/岡秀樹 三澤史郎 竹橋団 友松直之 平みゆき

 俺の商業映画デビュー作。上京して内田春菊の漫画アシスタントをしたが務まらず、逃げ出して高校漫研時代の先輩に紹介してもらったAV制作会社ペンジュラムに助監督としてもぐり込んで、そこの社員監督がピンク映画を撮るがシナリオがまだないというので、じゃあ書かせてくれと言ったのだが書かせてくれそうな気配がないので、ひと晩で書いて押し付けたら採用され、その主演男優だった久保新二に紹介してもらった大阪のホモ映画専門の映画会社ENKプロモーションで監督デビューとなったわけだ。どんなわけだかよくわからんが、まあ、若さゆえの迷走時代というか。いただいた製作費三百万円は大金だが、それまでの自主映画スタイルでは全然足りないのが目に見えていたので、昼間はパン工場、夜はミナミのホストクラブでバイトして自費を百万用意して現場に挑んだ。ついでにホストクラブに客として来ていた風俗嬢とアフターでセックスしたらコンドームが破れて子供ができた。監督でビューと同時に父親デビューしてしまったわけだが、出産費用を出せと迫られそんな金はないので妊婦ものAVを作ってその出演料でなんとかしてもらった。この長男がもう二十五歳にもなるのだから人生は面白い。物語は、死んでしまったホモの親友の想いに応えられなかった罪悪感から性的不能のノンケの主人公が、自分が売らされている裏ビデオの中で、かつての親友によく似た青年が殺され、その死体が蹂躙されているのを見て、裏ビデオ製造者たちを殺す計画を立てる、という展開。何が現実で何が幻覚かよくわからないストーリーが好きなのはこの頃から変わらない。「ビデオドローム」とか「タクシードライバー」を意識したような気がする。アリスセイラーには死体の第一発見者とライブハウスで躍る女の二役出演もしてもらっている。

 

 

 

●「わがまま旋風」60分(1995年)ENKプロモーション

出演/風太郎 三澤史郎 松原宏明 江口恵美

 風俗嬢が産み捨てた長男を引き取って、「バラードに抱かれて」に出演してもらった大阪芸大の演劇科の女子大生を口説いて退学させて結婚して次男を作りながら撮った本作だが、ドキュメントふうを意図して、四季の風景を取り込みつつ一年を越えて撮影した。こんな大変な制作は二度とできまい。間違いなく自選代表作なのだが、誰も観ていないのであまり語る機会のないのが残念な一作。物語は、隠れホモの既婚サラリーマンである主人公が学生時代の劇団仲間にしてホモの恋人の訃報を聞き、それをきっかけに脱サラ離婚して劇団を作る。ホモの恋人ができたりもする。とにかく世間や周囲に迎合して自分のやりたいことをやらないのは間違っていると気づくわけだ。生きたいように「わがまま」に生きるのが正しい人生の生き方だと。舞台の演目は「宵闇探偵」であり、人類が滅亡し独りだけ生き残った男がクローンを大量生産して滅亡を隠蔽している暗黒未来劇で、男のコピーなので世界人類皆男であり、当然恋愛も男同士となる。舞台劇と舞台を作るまでのドキュメントふう展開がごっちゃになった構成。舞台劇とドラマがリンクするようでリンクせず、何が現実で何が虚構か境界が曖昧になって何が何だかわからなくなって、ああ、俺、こういうの好きだわ。アリスセイラーは舞台上で歌われる主題歌「僕らの薔薇刑」を作ってもらい、主人公の恋人になる少年に対して同性愛を批判する姉の役で出演してもらっている。

 

 

 

 

●「あの娘は自転車に乗って・予告編」5分(1995年)自主

 せっかく結婚したのだから妻で一本と考えるのは映画野郎の常であろう。風俗アルバイトで学費を稼いで芸大演劇科に通う女子大生が、恋がうまくいったりいかなかったり友達に風俗バイトがバレたりレイプされたりという残酷青春ものだが、アリスセイラーには主題歌「自転車と私」を作ってもらうとともに、先輩風俗嬢役でがっつり出演してもらっている。アリスさんの紹介で当時「鉄男」でブレイク中の田口トモロヲ氏にも出演してもらったりして、自主のくせに勝負作であったりする本作がなぜ予告編のみかと言うと、まあ、離婚したから未完成なのであった。残念。

 

●「カラオケ×2本」10分(1997年)TMP

 かつてこの世にはレーザーカラオケというものがあって、カラオケの映像と歌詞がレーザーディスクに収録されており、一曲ごとにオリジナル映像が作られていたのだが、わしゃ大阪でそういう映像の制作会社の社員監督をやっていたのだ。当時はまだ結婚していたし次男も生まれて生活を安定させたかったのかもな。アリスセイラーに出演してもらった、そんなカラオケを二曲。ただバック映像だけ流しても仕方ないので、当日はアリスさんと俺で合唱する。お耳汚しはご勘弁を。

 

●「コギャル喰い大阪テレクラ篇」60分(1997年)大蔵映画

出演/加藤みちる 藤田裕樹 青木こずえ 結城哲也

 カラオケ映像制作会社で社員をやりながら大蔵映画に飛び込み営業をかけて撮った一本。ピンク映画業界というのは徒弟制度が残っていて、助監督を務め上げて監督の後ろ盾の下で監督デビューするものらしいが、そんな風習があるなんてわしゃちっとも知らんかった。そのような横紙破り企画を通してもらえたのは、大蔵社内の体制改革とか冒険とか実験とかたまたまタイミングがよかったんでしょうな。知らんけど。作品内容も酷いスプラッターで物議をかもしたりもしたらしいが、俺としてはいつもの通りの俺作品を撮っただけで、冒険の意識は全然まったくちっともなかった。マジで。それがありがたいことに好きものに受けたらしく、その年のキネマ旬報ベストで五十七位に選ばれたりして。カラオケ映像制作会社の社長に内緒で会社所有の機材を使い、社員仲間をノーギャラスタッフにして撮影した。物語は、テレクラで殺人請け負いする快楽殺人者の主人公が、テレクラで知り合った少女を自宅に連れ帰るのだが、彼女には背中に大きな疵があって、羽をちぎった痕だと言う。自称「天使」少女は鳥籠を抱えていて、中には文鳥の人形があるのだが、少女が見つめているときだけは生きてさえずったり飛んだりする。彼女自身はまともに歩けず、いつも寝ているだけでたまに吐血したりして、どう考えても今にも死にそう、という。父親が母親を惨殺するのを目撃する主人公の回想場面を二歳の長男に演じさせた。二歳児に血のりをぶっかけて撮影するのはトラウマものであり、今なら虐待事件であろう。いや、当時でも問題あるか。ちなみにテレクラというのはテレホンクラブであり、男どもが電話機だけの個室にこもって女性からの電話を待つ出会い系みたいなもので、かつては全国にたくさんあったのだ。アリスセイラーには主題歌「たくさんの果物」を作ってもらった。

 

 

 

 

●「電脳大奥」70分(1997年)新東宝

出演/白石ひとみ 隆西凌 沓水文人 西野美緒 宮まさ子 村上ゆう 大矢剛功 菅原研治 清水ひとみ 結城哲也

 こちらは新東宝に飛び込み営業でもらった仕事。「コギャル喰い大阪テレ蔵篇」と同じく、カラオケ映像制作会社の社員仲間をノーギャラスタッフにして撮影した。物語は、根暗なサラリーマンが、ネットゲームにアクセスして大奥のお姫様と恋愛しようとするのだが、これは新東宝プロデューサーからお題を与えられたプロットで、時代劇は金が掛かるけど半分は現実で時代劇はゲーム内限定にしたら安く上がるのではないかという発想だったようだ。当時、チャンバラトリオのゆうき哲也氏が大阪で俳優プロダクションをやっていて、カラオケ背景映像にキャスティングしたりする付き合いがあったのだが、そのご縁で口をきいていただき、京都太秦撮影所の武家屋敷セットで撮影している。お姫様は主人公が片思いする同僚と二役で、口説けばいいのにそれをせずに一生懸命ゲーム内で攻略しようとする、という展開。その後長い付き合いになる主人公を演じた稲葉凌も、思えばゆうきさんの紹介であった。本作以外に「コギャル喰い大阪テレクラ篇」にも出演してもらっているゆうきさんだが、前後して萩庭貞明監督も紹介してもらい、岩城晃一主演のヤクザ映画「なにわ忠臣蔵」のシナリオを書かせてもらい、のちにヒットシリーズ「ミナミの帝王」のシナリオを十年以上の長きに渡って書かせてもらうこととなった。一方、カラオケ制作会社はこの時期にクビになっている。親会社であるカラオケメーカーの社長との会食中に居眠りしたのが原因であったのだから笑える。何だアイツはクビにしろ、というわけだったが、そのくらいでクビにする会社も会社だが、俺も寝るなよ。さておき、Vシネマ全盛期であり、「なにわ忠臣蔵」のシナリオ料に四百万円ももらったので、それで有限会社幻想配給社を設立、東京に事務所を借りて、制作会社をやり始めた。「世の中なんてちょろい」は前述の「わがまま旋風」で書いた台詞だが。二十代も終わり、男三十にして立つなんて言うとカッコつけ過ぎだが。本作も挿入歌、主題歌にアリスセイラーの楽曲を使い、主人公が勤める会社のOL役で出演してもらっている。

 

 

 

●「疑惑の診察室 私を犯した整形外科医」70分(1998年)オンリーハーツ

出演/栗林知美 倉本梨里 隆西凌 久保新二 野上正義 愛染恭子

 前述の通り、ツタヤインディーズムービーフェスティバルで佳作入選した自主映画「夏色浪漫」であるが、このインディーズムービーフェスティバルはツタヤがビデオメーカー各社の協賛を得て企画したもので、その授賞式にはメーカー各社の代表がごっそり集まっていて、当然格好の名刺収集の機会であり、飛び込み営業の足掛かりであった。佳作入選させたんだから評価した責任取って仕事くれ、という恫喝営業とも言える。「STACY」のGAGAや、本作のオンリーハーツもそのような営業の結果であった。特にオンリーハーツ(カレスコミュニケーションズ)は定番仕事となり、ペンジュラム時代の仲間、新里猛作や石川二郎を呼びつけて監督デビューさせたりしたのもこの頃だ。物語は、オンリーハーツ社長からお題を与えられたプロットで、美容整形外科医が患者のエロ動画を撮影していたという実際の事件をもとに書いた。「電脳大奥」に続いて主人公の青年整形外科医を稲葉凌が演じたが、他、悪徳院長を久保新二、手術の失敗で自殺した娘のカタキ討ちを誓う定年間近の刑事を野上正義、その妻を愛染恭子が演じていて、ピンク映画オールドファンにとっては何気に豪華キャストであったりする。母親の死を看取る幼年期の回想はやっぱり長男が演じている。主題歌を「夏色浪漫」と同じ「うさぎ」、他挿入歌もアリスセイラーの名曲集から使わせてもらっている。

 

 

●「レイプハンター 連続暴行」70分(1999年)スターボード(TMC)

出演/倉本梨里 栗林知美 小沢まどか 水野理恵 樹かず
「ヤラせない女は犯せ」などという暴言を言うようになったのはいつの頃か覚えてないが、まだ本作にレイプ肯定論は出てこない。とにかくレイプもの。お題企画だったような気もするが、持ち込み企画だったかもしれない。シナリオ仮題は「女狩都市(メガロポリス)TOKYO」というカッコいいものだった。レイプ犯青年の母親に虐待された回想場面をまたしても五歳になった長男が演じている。ちなみに、本作出演女優との不倫が原因で妻と離婚したわけだが、離婚と同時に彼女にも振られるという冗談みたいな展開には笑えた。さらにその女優の両親からストーカーで訴えるぞと弁護士を通して内容証明が届き、あんまり面白いのでそのあたりの顛末を「純愛戦記 届かなくても愛してる」という本に書いてイーストプレスから出版した。とっくに絶版だがアマゾンで中古が入手可能なので興味のある人はどうぞ。この頃からシナリオを書きはじめた竹内力主演の「ミナミの帝王」シリーズはVシネマとレンタルビデオの全盛時代を象徴するような作品で、一本六千万(二本撮り一億二千万)くらい予算があって、シナリオ料も百万円であった。それを毎年二本書けば、まあ生活費くらいはそれで何とかなるわけで。さらに言えば取材から何から時間も労力もそれなりの大変さで、かなり消耗する作業でもあった。もちろん並行して自分の監督作品も継続して制作していたが、JANK(TMC)のパロディ作品(「濡れる大走査線」「こきせん」は結構気に入っている)や、仕事があるから撮る的な受注仕事、製作から興行までがシステムとして完成していて遊びの余地が少ないOPピンク映画が中心であり、これぞ俺創作、と呼べる作品は少ない。もちろん職人に徹する仕事を否定するつもりは全然なく、それはそれで腕の見せ所でもあろうが、やはり高校漫研ではじめた部活映画こそが「創作」であると思ってしまう俺だから、仕事を創作とは呼びにくい。エクセスポルノとして製作し、PG(ピンク映画グランプリ)で監督賞と主演男優賞と脚本賞を同時受賞した、「私が初潮になったとき…」(DVD版タイトル「高感度AI搭載メイドロイド」)と、その姉妹篇「メイドロイドVSホストロイド」くらいか(リリースは「レイプハンター」と同じくTMC)。そんなわけでアリスセイラーの楽曲を使用するのは、本作「レイプハンター」を最後にしばらくお休みとなった。創作ではなくプロとして仕事に徹するなら、著作権フリーの無難な音楽を当てておいたほうが客受けする、ということでもあったのだろう。