わたしは、ずっと羨ましかった。
本当にやりたいことがあって、それに没頭している人たちが...。


わたしだって、やりたいことさえあれば
思いっきりエネルギーを注ぐのに...!!怒る
いつだってそう思っていた。


でも、わたしにも、なかったわけじゃないんだ。
本当はやりたいことがあったのに
それを胸の奥に仕舞ってしまったことが...あったんだ。




* * *




わたしは高校生の頃、
ライターになりたかった。
国語の成績は赤点スレスレくらいに悪かったくせに、
書くことだけは好きだった。


なんとなくしか覚えてないけれど、
・文章を書くこと
・何かを発信すること
・時代の先端に立ってるようでカッコいいよね~

そんなことを思っていた。




でも、中学からエスカレーター式の学校に入り
高校・大学と進むことしか考えていなかったので、
まさか、高校を卒業して専門的なことを学ぶとか
夢を叶えるために一歩を踏み出してみるとか...そんなことはまったく考えていなかった。
ただただ、大学の推薦枠に入れること、それだけに意識を向けた高校生だった。




晴れて大学に入れば、
悩み事なんてひとつもなくて、
「わたし、こんなにしあわせだったら、いつか事故にでも遭うんじゃないかしら?
そうじゃないと、帳尻合わないよ!」って本気で思っていたほど、
あの頃は気が狂ったようなしあわせの中にいた。




就職活動の時期になり、
わたしが行きたいなぁ~!と思っていたのは出版社。
でも、わたしの能力では、出版社の総合職なんて引っかかりもせず、
(というか、入るための努力もろくにせず...)、
就職氷河期だし、どこも受からなかったらどうしよう~あたふたあたふたとビビリながら、
まったく思いもよらない業界へと就職することになった。




社会人3年目くらいだっただろうか。
わたしは、ライター学校に1年(?)通っていて、
そこを卒業したら、どこか出版社へ転職したいと思っていた。でもね...


ここである事件が起こるのよ!!(大げさだけど。笑)




1年間の学びの最後に、
クラス全員でフリーペーパーを作るのね。
編集長を一人決め、
あとは全員一人一人がライターとなって紙面を作る。


実際に取材に行って文章を作り、
カメラマンさんにはいくつかの写真を撮ってもらう。
その中からいいものを選んで組み合わせ
見開き1ページは自由に作っていい、
もちろん、フリーペーパー全体の統一感はあるんだけれど、
見開き1ページ分は、わたしとカメラマンさんとで作っていいという
なかなか楽しい授業だった。


まぁ、わたしも若かったんだけど...
そのときに、わたしは編集長役の男の子と
かなりのバトルをしたのね。


彼はわたしのことなんて、もう覚えていないと思うけど
わたしはハッキリ覚えているわ(笑)


今思えば、彼はまったく間違っていないんだけど、
編集長である彼に、赤でペンを入れられることがわたしはどうしてもイヤで、
一字一句わたしのオリジナルで書いた、わたしにとっての完璧な文章を(笑)、
なんでこんな風に直されないといけないのよ!怒るって
夜中の電話で大バトル!!!




困った彼は、先生に相談したんだろうね。
後日、わたしは先生に呼び出されました(笑)




「この業界は、人との繋がりがとても大切なの。
今のあなたのような態度を続けているようじゃ、誰もあなたと仕事をしたいとは思いません。
わかりますか?」って。


そりゃ、そうだよね。
実際の出版社だって、編集長が赤を入れるのなんて当たり前。
駆け出しのライターがそんな編集長に噛み付いたら
即効クビかもね(笑)


でもね、
わたしはそのときに思ったの。


「はっは~。。ということは、わたしがもしも出版社に転職できたとしても
わたしの自由には書けないわけね。
こうやって編集長に直されるわけね。
だっったら、こんなこと、絶対にやりたくないわ!」
って思ってしまったの(笑)


出版社に勤めている人が読んだら
アホか!って思うだろうね。


なんとかして出版社に転職するために
自分を改めよう!ではないのよ。
自分の書きたいことを書けないのであれば、ムリして出版社に入ろうとしなくてもいいや!って。
そう思ってしまったの。


あの学校を卒業したあと、
何人かの人は出版社に転職したけれど
わたしはフリーペーパーでイヤな思いをしたから
すっかり出版社に行きたいという思いなんて消えてしまって


「だったら、私が編集長にならないと、好きな雑誌は作れないってことじゃん!」


そうハッキリ思った。




あれから、わたしの "ライターになりたい" なんていう思いはどこかへ行っちゃって、
そんなわたしを見ていた親友はよく言ってくれていた。
「になちゃん、書くことはもういいの?」
「本当にもういいの?」


よく聞いてくれていたけれど
わたしはそのたびに、「いいの、いいの」と言っていた。




ちなみに、この話をある男性にしたときに、
「その選択は正しかったと思うよ」と言ってくれたことがある。


「そこで、自分を曲げて出版社に転職できたとしても
時代に迎合される "イチ・ライター" になるだけ。
そんなライターなんて、ゴマンといるよ。
になさんのしたいことは、そんなことじゃないでしょ?」って。


あの言葉には感動したなぁ~。。




わたしにもあった「本当にやりたかったはずのこと」を
あのとき一度、諦めた。
でもね、やっぱり心のどこかには残っていて、
奥の奥の奥のほう~~~に押し込めていたはずでも
ふとした瞬間に「ふわっ!」と浮き上がってくる。


あのね、ライターになりたいわけではないんだけれど
わたしの中にずっとある思い、ずっとある思いが...あるのよね。


nina*