【前置き】
東松山市選出の埼玉県議会議員・江野幸一県議の発言が、
新聞、テレビ等で報道され、大きな波紋を広げています。

息子さんの高校の入学式に出席することを理由に、
新入生の担任となる高校の先生が、
入学式を欠席したことに対する発言です。
報道の詳しい内容は、埼玉新聞の記事をご覧頂ければと思います。

日頃から、江野県議とは親しくさせて頂いている身としては、
これほどの大きな問題に発展したことに驚いております。
恐らく、この件をFacebookに書き込んだ江野県議も、
これ程の騒ぎになることは予想していなかったでしょうし、
これ程大きく報道されることには違和感を覚えます。

物事を批判をすると必ず反作用として批判が出ますし、
ましてやネットで刹那に拡散していきますので、
丁寧に説明を尽くさないと反作用の波に飲み込まれてしまうこともあります。

世論では、江野県議の発言に賛成、反対も半々ぐらいみたいですが、
ネットでは、発言に否定的な意見が占めており、
発言の趣旨に関係のないことまで”あることないこと”書かれております。
所詮ネットの意見、として切り捨てることは容易ではありますが、
私のようなネット世代としては、やはりネットの意見も重要でありますし、
中には真実もあると思っています。

Facebookを公用と私用の中間のような形で使用していますので、
私も発言には気を付けていかないと今一度肝に銘じた次第です。
しかし、批判を恐れて政治家が発言を止めて日和見主義に陥ってしまっては、
政治家としての本懐を遂げることは出来ません。

この様な賛否が分かれる問題については、
どう書いたって批判的なご意見はあるとは思いますが、
私なりの意見を書いていきたいと思います。


【3つの論点】
まず、私の立場を明らかにするならば、江野県議の発言の趣旨に概ね同意します
ただ、もう少し丁寧に説明をされるべきだった部分もあると思います。

今回の問題は大きく分けて3つの論点があります。
①学校の管理責任
②権利の行使
③教師としての責任or親としての責任

①学校の管理責任
政策的課題として問題となるべき部分は、ここであると思います。
学校側の事前対応が不十分であったことが、
今回の騒動を招いた一因であると思います。

子供に新入生がいる教師は新入生の担任としない、
或いは、時季変更権に従って入学式は有給休暇の申請を受け付けない、
などといった対応をするべきでした。

このような事例で、時季変更権が行使できるのかは精査が必要でしょうが、
少なくとも今後、学校側は統一的な対策が必要であると思います。
ただ、個別のやむを得ない事情がある場合には、
配慮されて然るべきものであるとも思います。

②権利の行使
有給として休暇が認められた以上、
つまり、担任として入学式を出席することより、
親として子供の入学式を優先して出席することを学校が認めた以上、
権利を行使したこと自体については教師を責めることは出来ません。

ここらへんの論点については、
社会保険労務士である榊裕葵さんのブログが参考になります。
【「息子の入学式に出るので、欠席します」事件。悪いのは教師ではなく学校の対応だ!】
シェアーズカフェ・オンライン 2014年04月14日 13時59分配信
http://www.huffingtonpost.jp/sharescafe-online/my-son-enrollment-ceremony_b_5144004.html

江野県議は「権利ばかり言う教員はいらないの
ではないでしょうか?」
とFacebookに書きこんでおりますが、
権利には義務が伴うもの、ということを仰りたかったのだと思います。
これが③の論点に繋がってきます。

③教師としての責任or親としての責任
子供を持つ親としての責任が優先か、
生徒を預かる教師としての責任が優先か、
ここの考え方の相違が大きな議論を呼ぶことになりました。

どちらの子供が大事か、という観点で書かれる方もいますが、
親として教師として、どちらの子供も平等に大事であるのは当然のことです。
そうでなければ、教師の資質が欠けていると言わざるを得ません。
ここでは、その責任に対する考え方の相違が、論点であると思います。

江野県議の上記の言葉を噛み砕くと、
子供を持つ親として入学式を出席する権利を言う前に、
公務員、担任の教師として義務を果たすほうを優先すべき(教師の倫理観)、
といった内容になるかと思います。


【問題は③の考え方】
さて、
①②は、概ね意見の相違はない論点であると思いますが、
問題は、この③についての考え方になります。

江野県議の発言に反対の方は、
・滅私奉公は時代錯誤
・ブラック企業の考え方
・自身の子供を大事にできない教師に自分の子供は任せられない
・入学式に担任教師が居なくても子供たちには問題ない

等々の反対意見がネットで散見されます。

③については、考え方、価値観の相違に尽きます。
自分の子供も、生徒も、平等に大切なのは当然です。
しかし、ワークライフバランスの考え方が浸透した昨今では、
どちらを優先するか、ということになるのでしょう。

一方の考えを押し付けようとは思いませんが、
私も同じ公務に属するものとして、
教師の方々には教師としての自覚と責任を持って、
担任として入学式に出席することを優先して欲しいと思います。



【県議の意見に賛成する2つの理由】
以下、私が江野県議の発言に賛成する理由を2点書きたいと思います。

①公務員としての責務
教師も労働者、という意見がありますが、
公務員は、民間人とは全く異なります。
例えば、私が学んだ予備自衛官補の服務では、
どの様な過酷な環境下でも、或いは命の危険が及ぶような状況でも、
職責を全うすることが求められます。
集団行動では、個の権利よりも職業倫理が優先されるのです。
それは、個人が勝手な行動を取ると、隊全体に危険が及ぶからです。

公に仕えるということは、時には自己犠牲を伴います。
公務員は、いつでも滅私奉公で自己犠牲せよ、という意味ではありません。
時と場合によっては、自己犠牲が必要なこともある、ということです。

勿論、自衛官と教師はその職務は異なります。
しかし、警察官には警察官の、消防士には消防士の、
教師には教師の、順守すべき職業倫理、職責があるはずです。

今回のケースでは、権利の行使、という意味では勝手な行動とは言えません。
確かに、事前に生徒に欠席の連絡を回すなど対処をされていたということですが、
多かれ少なかれ、受け持つ生徒、保護者、他の先生方に、
影響を与えることに繋がったということは、
考えて然るべき点だと思います。

②入学式の主催者としての社会的責務
入学式の主役は、間違いなく新入生です。
そして、新入生の入学を歓迎する教師、学校が主催者です。
今回のケースでは、担任としての社会的義務だけでなく、
式典の主催者としての社会的責務もあると考えます。

つまり、担任として受け持つ新入生に対する社会的義務だけでなく、
入学式に参加した全ての新入生、保護者、来賓に対しても、
式典の主催者として全うすべき社会的責務もあると思います。

教師の仕事は、学校で勉強を教えるだけではありません。
特に担任としては、学校生活を送る上で集団生活で守るべきルールや
社会の一員として全うすべきことを教えることも仕事であり、教育
です。
個人の家庭事情を優先し社会的義務、責務を放棄するとなると、
それを教えるべき立場の担任は、生徒に示しがつかないものと考えます。


【反対派の意見に関するコメント】
反対派の意見に関して、少しコメントしたいと思います。
子供の入学式に参加することを、あたかも親としての当然の義務、
というような論調で書かれる方の意見には、納得できません。

そういった方は、今回の教師の行動を擁護され、
自身(教師)の子供を大切にできない教師には、
自分の子供を指導して欲しくない、
というような意見を述べられております。

子供が、親に入学式に参加して晴れ姿を見て欲しい、と言う、
或いは、幼稚園、小学生の幼い子供の入学式でしたら、
自身の子供の入学式に参加することを優先されるのも分かります。
今回は、高校生のお子さんの入学式に参加されたということですが、
子供の入学式に対する親の思いは様々あるでしょう。

しかし、そういった方々の意見の多くが、
子供の晴れ姿を見たいという
親のエゴを、
オブラートに包んで(色々と理由を付けて)、
さぞかし崇高なものとして捉えることで、
自身の子供の入学式に参加することが絶対正義、
最優先事項であると論じている気がしてなりません。

自分の子供の入学式に参加しない(出来ない)教師だって、
当然自分の子供も大事であると思っていることでしょう。
何もなければ、子供の晴れ姿を見たいと思うのが、親心だと思います。
しかし、どうしても仕事などの都合で子供の入学式に参加出来ない場合、
社会に生きる大人としての責務を全うする姿を、
子供に伝える、見せる、理解してもらうことも、
親として果たすべき、大切な家庭教育であり、義務であると思います。

入学式に参加する、子供の晴れ姿を見る、という事実より、
子供が入学式から帰ったその日に、心から子供を祝福する、
他364日一生懸命愛情を注いで育てることのほうが、
親としての社会的義務を果たしていると言えないでしょうか。
子供の入学式に参加することだけが、親の義務とは言えないと思います。



今回のケースは、賛否が分かれる問題であることは間違いありません。
ただ、これほど大騒ぎするような問題とも思えません。
こぞって連日報道したマスコミにも疑問を感じます。
①教師の倫理観②学校の労務管理を浮き彫りにした問題ですが、
教師の方々にはぜひ一度考えて頂きたいと思いますし、
学校側にはきちんと対策を講じて頂きたいと思います。