企業犯罪が次からつじと出てくる。


今年は特に多いわけではないと思うが、でも、多い気がする。


 タカタのエアーバックはアメリカでまずは発火した。そして、そのアメリカで爆発したといってもいいのがドイツの優良企業、国家経済も左右するほどの世界企業フォルクスワーゲンの不正だ。アメリカで販売されたデイーゼル車の排ガス規制誤魔化し問題だ。エアーバックは犠牲者が出たようなニュースもあったが、フォルクスワーゲンの排ガス排出量誤魔化しは、地球の温暖化などへの影響はあっても、人間個人へと直接的な被害はないから、その対象車数が何千万単位であっても、それこそ地球規模の問題ではあっても、私たちには現実味のないものだった。



 横浜のマンションの傾きが発見されて以後の問題は、日本の建設業界の暗部をさらけ出した。私たちはマンションの所有者に同情するしかない。そして、突拍子もない言い訳を聞き、究極の手抜き工事を見せつけられ、責任転嫁のスゴ技的な言い訳に驚かされた。一技術者の、一人の一級建築士の、一人の現場代理人の精神的な問題として片付けようとした業者の言い訳には愕然としたものだが、その後は、上へ上へと責任企業の謝罪が続いた。最底辺の杭打ち業者から、その上の下請け業者から元請け業者まで、責任の所在が上へ上へと上がり、一応は行き着くところまで行った。一応の謝罪はして責任を言いながらも、最終的な責任はどこにあるのかは未だにわからないようだ。現在も責任問題は、マンションの所有者への納得のいく説明などできていないだろう。責任の転嫁は、まだ続いているようである。


さて、企業犯罪の新たな大口の出現だ。


 それが直接多くの人に影響を及ぼす、特に子供たちのインフルエンザに特別の影響を及ぼすとなると、驚きよりも怒りが先立つ。血液製剤の不正というか誤魔化しは記憶にも新しい。そうです、薬害エイズ問題は記憶に新しい。またまた、出てきた血液製剤のデータ誤魔化しや、諸々の誤魔化しを重ねての製造販売だから、驚きよりも先に怒りを感じる人は多いだろう。なにしろ、被害を被る人間が身近にいるかもしれない切迫感のあるし、同時に自分もその血液製剤やワクチンのせわになっている人も多いだろう。



 一般財団法人「化学及血清療法研究所」で通称「化血研」が今回の主役である。化血研は日本を代表する血液製剤やワクチンの製造会社らしい。その化血研が、厚労省の承認を無視して別の方法で血液製剤を製造してたのだ。製造記録を偽造するなどして、驚くなかれ実に40年以上も不正製造を続けて来たというのだ。
 


当然だが、厚生労働省は化血研を行政処分するだろう。


第三者委の調査結果を報告によると、

化血研は1974年に一部の製剤について加温工程を変更して製造していた。


そして、90年に血液製剤製造過程で血液を固まりにくくする添加物を使用するというとんでもない不正製造も始まったという。



 医薬品メーカーは法令に基づき、国の承認書に従って薬品を製造し、記録を残す義務があるという。厚労省は定期的に記録を確認しているはずだが、化血研は虚偽の記録で検査をくぐり抜けてきたという。悪質とも言える誤魔化しの方法として、記録用紙を紫外線焼けにして変色させ、古い書類だといって、厚労省の検査をくぐり抜けていたという。


 国も誤魔化し医者や病院などの医療機関を誤魔化し、そして、多くの患者を誤魔化し、多くの命への影響も考えられる不正が延々と続いていたわけでだが、さらに驚き怒りも増してくるのは、不正行為は会社のトップが認識していた事実である。



第三者委も怒りを顕にしての報告だ。

「常軌を逸した隠蔽体質が根付いていた」
「研究者としてのおごりが不整合(不正)や隠蔽の原因となった」と指摘したという。
 

厚労省は5月に化血研立ち入り調査。
血液製剤製造の不正を確認。
6月に血液製剤の出荷を差し止め。
他のワクチンなどについても調査。
化血研も9月に第三者委員会を設置し調査開始。
幸いなことに、まだ、健康被害は確認されていないという。



化血研は薬害エイズ訴訟の被告企業の一つだ。


 化血研理事長は記者会で自身も長年にわたり不正を認識していたと認め、「化血研の風土として積極的に対応できなかった。私もその一人だ」と訳のわからないいい訳だ。
さらに驚く発言は、血液製剤の供給がストップしてしまうことを懸念して、誤魔化しを改めることができなかった旨の発言だ。

 
 厚生労働省は化血研に対し、血液製剤の出荷差し止めに続き、ワクチンの出荷自粛を要請した。日本を代表する血液製剤メーカーの出荷差止めの影響は大きいという。代わりの血液製剤もワクチンも足りなくなる。

日本脳炎、A型肝炎、B型肝炎のワクチン不足は深刻な問題になる。

各地で予防接種の予約を中止する病院が出始めている。
 


 医薬品関係企業の誤魔化しなどの不正の社会的な影響は大きい。どんな企業犯罪でも社会的な影響は大きいが、特に医薬品などの企業不正となると、直接患者さんに影響し、また、多くの人の身内や友人知人など周辺の人々への直接的な被害があるわけであるから自分に影響する問題でもある。多くの善良な市民の健康被害へとつながる危険を孕んでいるだけに、個人個人が自分を被害者と考えることのできる問題となるである。


 マンションや高層建築物の不正も信じがたいが、薬剤などの不正はなお信じがたい。

 誤魔化し、不正のない健全な企業が当然の社会であって欲しい。