私がハルキさんからその絵本を受け取ってから、暫くは忙しくて読む時間が取れなかった。
きちんと集中できる時間を取ろうと思うと、未就園児が居るとなかなか難しくて…。
受け取ってから3日後くらいに、子どもを寝かしつけて、絵本を開いた。
絵本のタイトルは、『おおきな木』だった。
村上春樹に心酔しているハルキさんらしく、村上春樹が翻訳している絵本だった。
初めて見た絵本だったので、何の先入観も無く読み始めた。
(ここからはネタバレありです。)
そこには、小さな少年と、その少年の事が大好きな一本の大きな木が描かれていた。
木は自分の所に遊びに来てくれるその少年が大好きで、少年が会いに来てくれると一緒に遊んだ。
自分の木の実のりんごを食べさせて、自分の木陰で眠らせて…
やがて成長した少年は木のところには遊びに来なくなって…
成長して青年になった少年は、木に「お金をちょうだい」と言うのだけど、それは出せない木は、自分の木の実を売ってお金を得て幸せになれと言う。
それで木は幸せを感じる。
次に少年が来た時は「家が欲しい」と言う。
木は自分の枝を切って家を作ればいいと言って、枝を持って行かせる。
それで木は幸せを感じる。
次に少年が来た時、人生に疲れた(年老いた)少年は、一人で遠くへ行ける船が欲しいという。
木は自分の幹を切って船を作ればいいと言う。
木の幹を切られて、ただの切り株になった木は…それで幸せ…とは感じなかった。
でも、またその切り株の所に(年老いた)少年が現れて…。
木は少年に言う
「ごめんなさい。
もう私には何も無いの。
何もしてあげられない。」
少年は言う
「僕は疲れてしまった。何も要らない。
静かに休める場所があればいい」と。
木は言う
「それなら、この切り株は休むのにピッタリよ。」
少年は切り株に座って休んだ。
木は幸せでした。
…おおまかに書くと、こんな感じのストーリーだった。
……え……?と思った。
私が「止まり木になりたい」とハルキさんに告白して、全く止まり木になれていない事から、この本を思い付いたの?
確かに、ずっとハルキさんに甘えっ放しだけど…。
そもそも、与えっ放しのこの木は、幸せでした、幸せでしたって…。
…なに…?
私はすぐにハルキさんにメッセージを送った。
「大分複雑な気持ちなのですが…。
私は「木」であり「僕」でありたいと思っているのですが…
ハルキさんが選んだ本がこれなのが考えさせられます。」
その後、ハルキさんから返事が来た。