中学2年、まだ義務教育でいやいやながら学校に通っていた。


季節は冬。


大して上手くもない吹奏楽の部活を終え、少し乗り慣れてきた自転車のかごに


ボロボロになった学校指定のかばんを入れた時だった。


後ろから聞きなれた声によって呼び止められる。


一緒に帰ろう。


彼女ははにかんだ笑顔を見せつつ、


そう言いながら、こちらへ近づいてくる。


幼馴染


ただそれだけの関係。


要するに帰路が同じなのである。


体育系の部活でかいた汗のにおいと


少女特有のふんわりとした香りが混じって


鼻孔をくすぐらせる。


それだけで十分なのだ。


まだ何も知らない


まだ自分の事も判っていない少年にとって


それだけで


欲望を掻き立てられ、理性など


どこか遠くへ行ってしまいそうになる。


幼馴染


ただそれだけの関係。


別に彼女に好意を寄せているわけではない。


未だ知らぬ


女の体と言うものに興味を示す


世間一般の


御年頃というやつである。


忘れ物をした。ちょっと待ってて。


そう言い残し


彼女は少し離れた建物の中へと小走りに駆けていく。


ふぅ。。。


気持ちを落ち着かせるべく


彼は星が瞬く夜空を見上げる。


吐き出した白い息は空へ昇り


やがて消える。


白と黒


そのコントラストを何度見ただろうか。


燃えさかる赤に包まれた青の光が


目の前を通り、校舎の陰へと目にもとまらぬ速さで消えていった。


空を見上げたまま


彼は固まった。


今のは何だったのかと。


息を切らせながら


先ほどとは違う胸の高鳴りを感じつつ


光が消えていった先が見える場所へと


駆けて行く。


もう赤い光も


青い光も


彼の視界の中に入ることはなかった。


代わりに


白い光がはるか彼方で


幾度となく八の字を描いていた。





※実話です。


今でもUFOだと信じています。