漢詩部分二回目です。

かなりたっぷりとした文字で、墨をしっかり磨らないとにじんでしまいます。



くじょう みやび日録-二、万里


万里人南去三春雁北飛不知

何處月得与汝同帰


潯陽江色潮添満彭蠡秋聲

鴈引来


【巻上 秋・雁 付帰雁】


 万里に人南に去る 三春に雁北に飛ぶ

 知らず何れの歳月にか 汝と同じく帰らむことを得む  韋承慶


 潯陽の江の色は潮添ひ満てり

 彭蠡の秋の声は雁引き来たる  劉禹錫


 ◇訳:私は万里の道を南に赴こうとしています。雁は春の天を北へ飛び帰ろうとしています。雁よ、いつの年いつの日にか、私はお前といっしょになって故郷へ帰ることができるのでしょうか。


  潯陽江の水の色は、潮がさし添って平らかに満ちています。彭蠡沢の湖上の秋風の声は、雁が導き来るようです。


 ◇参考:三春…春三ヶ月。潯陽(じんよう)…現在の江西省。この「江」は長江を指す。彭蠡(ほうれい)…潯陽の東にある沢の名。


なお、ひとつめの詩、大字朗詠集では「何歳月」ではなく「何處月」となっている。また、ふたつめの詩、「潯陽」は「尋陽」表記である。




[参考文献:川口久雄『和漢朗詠集 全訳注』講談社、1995年<21刷>]