このあたりは、いわゆるヤマトタケル伝説に関連してくる部分です。


「記紀」の景行天皇の記録では、それがたっぷりと描かれます。

しかし、『水鏡』では、ヤマトタケル伝説はなんとばっさりカットなのです!


■12代:景行天皇

垂仁第二皇子、母は皇后日葉酢姫命。

皇子時代、欲しいものを問われ、「皇位」と答えて東宮になった(即位は84歳)。


武内(たけしうち)が、皇子であったのちの成務とともに、宴の最中も門を警護していた逸話が載っている。蘇我氏などの遠祖とされる忠臣・武内の系譜は『水鏡』では「孝元天皇の孫」とされるが、はっきりしない。



■13代:成務天皇

景行第四皇子、母は皇后八坂入姫命。


上記の武内を「大臣」とした。


また、この天皇の描写がすごく、以下の通り。「御容貌殊にすぐれ、御たけ一丈ぞおはしましし。」※一丈=約三メートル



■14代:仲哀天皇

景行天皇の子・日本武尊(ヤマトタケル)の第二子。母は垂仁天皇の娘。


筑紫にて、52歳という若さ(このころの天皇の崩御年は軒並み100歳超)で歿する。理由は語られず、次代の神功皇后へとつづく。



“ヤマトタケル伝説”がないので、「記紀」にくらべても味も素っ気もない記述。だけど、成務の背丈が三メートル(!)とか、さりげなくスゴイことも書いてあります。美しく大きな天皇……一種の理想型かなにかでしょうか? 拝謁してみたいものです(笑、いや、怖いので遠くから覗くだけでいいや)。 しかしそういう御方にかぎってお世継がいらっしゃらない。



ヤマトタケルについては「記紀」がおもしろく、また一番のオススメ小説は、(古いですが)氷室冴子さんの『ヤマトタケル』 です! これは中学生くらいで読んだのですが、美しい漢字が多用されていたり、大人っぽいカラーイラスト(本文もツルツルのコート紙で厚めの美しいものでした)が満載で、まるで魔術のようにドキドキしたものです。


この小説は、ヤマトタケルや景行天皇、その他の登場人物たちの独白形式で話がすすんでいきます。ヤマトタケルも興味深いのですが、景行天皇の独白はグッときます! 垂仁天皇の項でみたサホヒメ関連のことも触れられますので、背景がわかっているとなおおもしろいでしょう。ちょっといまでいうBL的展開もあったりして……とにかく素敵な本です!!