よく利益が予想される会社に対し、節税目的で生命保険の外交マンが営業で声をお掛けすることがあります。「保険に加入することによって、当期の法人税等を軽減しませんか?」

もちろん、保険自体を否定するつもりはありませんし、将来の予期せぬ事態(社長の病気等)により、会社の資金が一時期回らなくなってしまうこともあります。

そんな時でも借入金の返済は継続します。従業員の給与の支払いも続きます。そんな時に保険金が下りれば、資金難に苦しむことはありません。

 

では、なぜ保険に加入することによって、当期の法人税等が軽減されるのでしょうか?その仕組みについて説明したいと思います。

翌期の家賃や地代など、「本来は」翌期に支払うべき費用を当期中に1年分まとめて支払って、当期の経費として処理することがあります。

このような費用のことを「短期前払費用」と言います。そして、この対象になる費用には家賃、地代、保険料、利息などとなります。

 

そして、この全額を当期の損金に落とす要件として、以下の3つがあります。

・支払った日から1年以内の役務提供の対価であること

・支払いの事実があること

・損金経理(費用として会計処理)をしていること

 

以下がその根拠となります。

 

基本通達2-2-14

前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち当該事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。)の額は、当該事業年度の損金の額に算入されないのであるが、法人が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、これを認める。

 

ただ、上記の基本通達には示されておりませんが、毎月のサービスの内容が「等質等量」であることも必要です。保険であれば、保険料を支払って受けるサービスの内容は毎月、同じ保証内容となりますので、「等質等量」となります。

逆に言えば、受けるサービスの内容が等質等量でないものは、短期前払費用の対象にはなりません。この考え方は国税不服審判所の裁決例や裁判所の裁判例でも示されています。

そして、毎月の内容が等質等量でないサービスの代表例として、弁護士や税理士の顧問料等があります。当然ですが、弁護士や税理士に依頼したりする内容が毎月、等質等量であるとは言えません。