庭先部分を相続した場合の小規模宅地等の特例の適用について、次のような文書回答事例が国税局より公表されました。

 

被相続人甲が居住の用に供していた家屋(被相続人甲所有)の敷地は、下図のようにX部分の土地とY部分の土地の二筆から構成されていて、相続人A(甲の子)と相続人B(甲の養子であり、Aの子)とで、これらの土地をそれぞれ相続により取得することとしました。

ここで、被相続人甲とともにこの家屋に居住していた相続人A(同居親族)が、X部分の土地を相続により取得し、申告期限まで引き続きX部分の土地を有し、かつこの家屋に居住することとした場合、相続人Aが当該相続により取得したX部分の土地について、特定居住用宅地等に該当するとして、小規模宅地等の相続税の課税価格の計算の特例(330㎡まで80%の減額)の適用を受けることができるでしょうか?

 

なお、この家屋はY部分の土地とともに相続人Bが相続により取得しますが、この家屋には、今後も継続して相続人Aが居住する予定です。

(図)

図

 

結論としては、相続人AがX部分の土地を相続により取得し、申告期限まで引き続きX部分の土地を有し、かつ、この家屋に居住している場合には、X部分の土地は、「特定居住用宅地等」として、本件特例(330㎡まで80%の減額)の対象になると考えられます。

 

1 何が問題か?

本件において、被相続人甲と同居していた相続人Aが相続により取得するX部分の土地は、相続開始の直前において、被相続人甲の居住の用に供されていた家屋で、被相続人甲が所有していたものの敷地ですが、X部分の土地の上に家屋が存在していない。

このため、居住の用を廃することなく、X部分の土地のみを処分することが可能であることからすると、80%減額の特例の適用は認められないのではないかとの疑問が生じます。

 

2 「特定居住用宅地等」として認められた理由

相続人Aが相続により取得するX部分の土地と相続人Bが相続により取得するY部分の土地は、一体として「相続の開始直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋で被相続人が所有していたものの敷地の用に供されていた宅地」であることからすると、居住の用を廃する必要があるかどうかにかかわらず、X部分の土地は、「相続の開始直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋で被相続人が所有していたものの敷地の用に供されていた宅地」に該当すると考えられます。

 

3 補足の解説

この特例は、相続開始の直前において、被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当する必要があります。

そして、その敷地の上には被相続人の居住用家屋が存在しており、被相続人と同居の親族がその宅地等を取得し、相続開始時から申告期限まで引き続きその宅地等を所有し、かつ、その家屋に居住していることが必要とされます。

 

そして、以前、東京地裁の判決で、以下のような見解が示されました。

この特例の趣旨は、「被相続人等の居住の用に供されていた小規模な宅地等については、一般に、それが相続人等の生活基盤の維持のために欠くことのできないものであって、相続人において居住の用を廃してこれを処分することについて相当の制約を受けるのが通常であることから、相続税の課税価格に算入すべき価額を計算する上において、政策的な観点から一定の減額をすることとした。」

 

となると、以下のような疑問が生じます。

・相続人Aが取得するX部分の土地の上には、居住用家屋が存在していないことから、自由に処分できるのではないか?

・そうであれば、相続人Aにおいて相当の制約を受けずに処分も可能なので、80%の減額特例は受けられないのではないか?

 

このような疑問に対する課税庁側の回答であることが推測されます。