中島みゆきさんの『糸』は、縦の糸はあなた、横の糸が私で、愛し合う男女二人の人生の織りなす布をテーマにしていますね。
実はお経の「経」も「たて」なんです。
サンスクリット語の「スートラ」が「たて糸」という意味で、漢語に翻訳した時に「経」になったそうです。
織物で重要な基礎となるのは経糸です。経糸がしっかり張られていればこそ、緯糸がきれいな模様を織りなせるんです。緯糸は簡単に替えたり継ぎ足したりすることができますが、経糸が切れたら結びなおしてピンと張り直さないといけません。新しい糸を結ばずにマチ針を使って継ぎ足しても強度的には問題ないのですが、途切れたままだと気持ちが悪いそうです。
経糸は、過去・現在・未来を貫く不変的なもの、精神的支柱…というか法則のようなものですね。
(織物業界では、縦糸・横糸ではなく、経糸・緯糸と表記するそうです。経度と緯度と同じで、壮大な感じがします。)
お経は、男女二人の織りなす布ではなく、人類の歴史というタペストリーを織りなすための経糸なのでしょう。