歌誌「冬雷」2017年 8月号 私の心に残った歌 その7 | 北山の歌雑記

北山の歌雑記

短歌初心者の戯言
「うたは下手でもよい自分のうたを詠め」
目指す旅路の道中記

前回に引き続き歌誌「冬雷」8月号の中で、私なりに特に心に残った 

歌を抜粋してみました。鑑賞・評などと大それたものでは無く

私なりに選ばせていただいた理由を少々、記させていただきます。  

(☆新仮名遣い希望者)


専用のタオルで拭かれたる犬はセルフで脱水全身を振る

茨城 吉 田 佐好子☆


(連作より)シャンプーを終えた作者の犬。  

作者に専用のタオルで一通り拭かれた。

それでも物足りずに、犬が水を弾く様子を「セルフで脱水」と表した作者。

一通り拭いてもまだこんなにとの思いや、「全身を振る」その勢いへの

驚きが感じられる。


日の陰にあえかに開くオダマキの花に気づきて水を欠かさず

東京 関 口 みよ子☆


「日の陰に(あえかに=弱々しく)開くオダマキの花」に気が付いた作者。

「気づきて」とあるからには、当然植えたものではないのであろう。

何らかの拍子に、こぼれ種かが発芽したようだ。

乾燥にはあまり強い花ではないようで、「水を欠かさず」行う作者。  

どういういきさつかは不明ながら、折角宿った花の生命。

それを最後まで生かし切ろうと試みる作者のやさしさが感じられる。


風にまふ小さき蝶のかたちして夏のはじめに雪の下咲く

埼玉 倉 浪 ゆ み


「雪の下」とは、日本・中国原産の多年草。

もともと山地の日陰や谷川沿いに自生する常緑の多年草との事

びらは五枚で上の三枚より下の二枚が長い独特の形をしている。

そのような花を「夏にまふ小さき蝶のかたちして」と表した作者。

ちなみに「雪の下」は俳句では「鴨足草」と書いて「ユキノシタ」と読ませる

夏の季語との事。

夏のはじめに雪の下咲く」の「夏」と「雪の下」の一見、対になるような

同じ季節のその取り合わせ。

そこに作者が面白味を感じているように感じられた。


隣家に住む人ありて一年余の空き家に今日より明かりが点る

東京 石 本 啓 子☆


「一年余の空き家」であった作者の隣家に入った転居者。

「空き家に今日より明かりが点る」と感慨深げだ。

実際の夜の隣家に灯る明かりという現実と同時に、しっかりと人によって

管理されるという状況が作者に与える心の明るさ。

その両方が詠み込まれている.

そのような気のする一首に思えた。


採れ過ぎるさやゑんどうを今日もまた何とかせねばとレシピを探す

東京 鈴 木 やよい


作者の菜園で採れたさやゑんどう。

「採れ過ぎる」と嘆くほどの大収穫であったようだ。

しかしながら、それは同時に無駄にしないよう心配りする必要を生じさせた。

「今日もまた何とかせねばとレシピを探す」と、大収穫に思わぬ日々の

さやゑんどうの活用法に、頭を悩ます作者の日常が窺える。


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