天使の刻印 - 葉桜夏樹 Blog -2ページ目


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嫌な夢でうなされて目がさめた。横で寝ていたはずの紀(き)乃(の)がいなかった。しかし昨夜、明日は就活だと言っていた彼女の言葉を思い出し、ホッとすると、ベッドに座ったまま、しばらくぼうっとしていた。目覚まし時計の針は十時をまわっていた。カーテンの隙間からは白くほのぼのとした陽射しが差し込んでいる。部屋は紀乃が残した甘い体臭や化粧の匂いがまだ張りつめている。リクルートスーツに身をつつみ、黒いパンプスをはいた紀乃の姿がふくらんだ。心がざわめいた。ムラムラした。ようやくベッドから腰をあげた。


着替えて玄関に行った。紀乃が昨日はいたストラップ付きの黒いパンプスがあった。今日は違うパンプスをはいて出かけたようだった。かがんで、右のパンプスを手に取った。目を皿のようにして灰色に汚れた靴底をながめた。本底の中央のギザギザを横線がふちから囲んでいる。ギザギザの溝にはちいさな砂をかんでいる。ヒールは五センチ以上はある。まだ買って間もないというのに、かまぼこの形をした踵の波線模様は潰れて消えかけている。就職活動にたいする紀乃の熱の入れようがわかる。


本底に唇をつけた。匂いを嗅いだ。パンプスをはいた紀乃が颯(さっ)爽(そう)と歩く姿が浮かんだ。このパンプスでいったい何を踏んだのか、踏まれたなかには生命もいたのだろうか、とうぜんトイレにも入っただろう、とそんな妄想に耽(ふけ)りながら靴底を舐めた。


紀乃とは同棲して一年になる。彼女とは同い年の幼なじみだ。家も近所だった。互いに一人っ子で幼稚園のときからずっと一緒だった。一緒だったが、幼なじみ以上の関係は意識したことはない、と言えば嘘になる。*紀乃は圭一にとって初恋の相手でもあった。高校を卒業したあと紀乃は近県の国立A大学に進学した。紀乃よりだいぶ学力が落ちる圭一も、同じ大学を受験したが、現役のときは、かすりもせずに落ちてしまった。圭一は二年遅れでようやく紀乃がいる大学に入った。



二年間疎遠だった紀乃と大学で再会し、あまりにも美しく変貌を遂げた彼女に驚いた。幼なじみでもなければ、ちょっと近寄れない感じだったが、昔のようにそこそこ話す仲までにはなった。



大学で紀乃はコンピューター研究会に入っていた。大学プログラミングコンテストでは昔から常に上位に入る古いサークルだと紀乃は言った。就職に有利よとも言った。そのサークルへの入部を紀乃からすすめられると気持ちが傾いた。就職がどうこうではなかった。紀乃が所属しているという理由だけだった。


じっさい入ってみると、ずいぶんと地味なサークルだった。部員は男が五人と女が三人の八人しかいなかった。そこに圭一が加わり計九人になった。二年と三年だけで四年はいなかった。一年は圭一だけだったが、二年浪人しているので二年や三年が先(せん)輩(ぱい)風(かぜ)を吹かすようなこともなかった。


そんなこともあってサークルには自然と溶け込めた。あんがい居心地もよかった。部員の男たちはみんなオタクっぽい感じがした。女の子に興味がないように見えた。女の子も紀乃以外は垢(あか)抜(ぬ)けない感じの子たちだった。紀乃だけが異様に垢抜けていた。掃(は)き溜(だ)めに鶴だった。


そんな紀乃とキャンパスに二人だけでいるとまわりの男たちの視線を強く感じることがあった。視線は、まず紀乃にまぶしそうに注がれる。そのあと圭一におよぐ。そして「なんだよ、こいつ」となる。


しかし圭一にはそれが心地よかった。彼女のことは幼稚園のころからいろいろと知っている。母親同士が仲が良く一緒によく出かけたことや、子供のときのいろんな出来事、そのときの紀乃の表情、様子、それらを全部圭一はおぼえている。紀乃のことは誰よりもよく知っている。男たちの嫉妬の目に動じないのも、そのことがあるからだった。


サークルで毎日のように顔を合わせるようになると、とうぜん紀乃との仲も深くなった。彼氏がいないことを紀乃の口から聞き、幼なじみから彼女に移行するのに時間はかからなかった。紀乃のワンルームマンションに入り浸るようになった。圭一は自分のアパートを引き払うと紀乃のマンションで四六時中「快楽」にふけった。男と女のノーマルな「快楽」だった。


同棲をはじめて半年が経った。四年になると紀乃も就職活動に入った。それはまだ二年になったばかりの圭一にも影響をあたえた。紀乃の話が妙に社会人っぽくなった。夜型だった生活も朝型になった。



圭一は、先に社会に出ようとする紀乃にたいし引け目を感じた。紀乃のリクルートスーツ姿を見ると、その引け目に加えて、そこに性的な興奮もまじった。すると、もとからあった「奇妙な性癖」が頭をもたげはじめた。紀乃が留守のあいだの行為もその奇妙な性癖のひとつだった。最近ではノーマルな快楽より、その奇妙な行為のほうが多かった。


紀乃自身より、彼女がはいていたパンプスのほうを愛するまでになっていた。左右のパンプスの靴底を舐めあげた。ベッドに戻り、やることをやると、またうとうと横になった。ドアがひらく音がした。夕陽が窓のカーテンからもれていた。


「ただいま――」リクルートスーツ姿の紀乃が部屋に入ってきた。疲れた顔でベッドの圭一を見た。「ずっと寝てたの? 大学には行かなかったの?」とたずねた。圭一は体をおこすとそれにうなずいた。講義にも出ず、部屋で寝ていたことに、やましさをおぼえた。今日やったことと言えば紀乃のパンプスに口をつけたことくらいだった。


これでは女のヒモではないか。紀乃が就職活動をはじめてから、それと似たものがよく心にかかるようになった。しかし、まだ自分は二年だ、四年の紀乃とは違う、とそのたびにそう思いなおした。 紀乃は服を着替えながら訪問した会社のことを話した。紀乃はIT関係の会社を中心に就職活動をしている。圭一は紀乃の話を聞くともなく聞いていた。紀乃にしてみると真剣な話だが、正直、そんな話にはまったく興味がなかった。また話が深くならないように避けてもいた。


というのも、最後に「圭一は、大学を卒業したら、どういう仕事に就くの?」と必ずそうなるからだった。それが鬱陶(うっとう)しかった。きかれたことに適当にこたえると、それはそれで、そういった心情は伝わるらしく、紀乃は不機嫌になる。そのあたりのことでちょっとした口喧嘩になることもある。就職活動をはじめてからの紀乃は短気になったと思う。ひととおり紀乃の話がすむと圭一は、「腹がペコペコだよ。何か食いに行こう!」と言った。


しかし紀乃は、「そうねえ・・・」と声を曇らせた。同棲をはじめたころは頻(ひん)繁(ぱん)だった外食も、就職活動にかかる費用がかさむという理由から、最近ではめっきり減っていた。圭一がひとこと「おごるよ」と言えばすむことだったが、バイトもしていない圭一にとって、それが言えるのは牛丼屋やラーメン屋程度だった。女の子が行けるようなちゃんとした店で「おごる」とは言えなかった。


圭一はそれを情けなく思っていた。紀乃にしても圭一にカネがないことは知っている。また食事を割り勘するおカネがあれば、それは就職活動に費やしたいと思っている。「私がつくるわ」と紀乃が言った。紀乃はキッチンに行くと冷蔵庫をのぞいた。


豚肉を出すと、「野菜炒めでいい?」と圭一にあかるくたずねた。「いいね」と圭一もあかるくこたえた。そして、「メシは僕が炊くよ」とベッドから腰をあげた。キッチンに行き紀乃の横に立つと米をといだ。とぎ汁を捨てながら圭一は、「今日、あれいい?」とたずねた。「いいよ」と紀乃はあっさりこたえた。顔は無表情だった。


食事がすむと、キッチンの流しに食器を戻す紀乃の背に圭一は抱きついた。胸に手をまわした。やわらかな胸の感触に両手は火(ほ)照(て)った。化粧とわずかな汗の匂い。リクルートスーツの匂いもする。後ろ髪に鼻を押しつける。髪の匂いを嗅ぎながら、圭一は、「あれ、いい?」と紀乃の耳もとでささやいた。紀乃は、こくりとうなずくと、「その前にシャワーを浴びたいのだけど・・・いい?」と返した。


それに圭一はゆっくりと首を横にふった。「化粧も汗も落とさず、その髪型で、今日、一日、外を歩いたときの姿で、今日はいていた、あの踵がとがったパンプスをはいて、踏んでほしい・・・」紀乃はちいさくうなずいた。圭一は紀乃の胸にまわしていた手をはなした。紀乃は隣の部屋へ行くと、普段着から今日着ていたリクルートスーツに着替えた。今日はいていたストッキングに足を通した。


そのあいだ圭一はあれのための準備をした。キッチンの壁際の床にブルーシートをひろげた。 玄関に行くと、昼間口をつけた黒いパンプスの横で、紀乃からはかれた紺のパンプスが休んでいた。一日じゅう彼女の体重を支え、その甲には履き皺と重い疲れの表情があった。


その疲れた紺のパンプスを取り、キッチンに戻ると、リクルートスーツを着た紀乃がすでにブルーシートの前で待っていた。その足もとのブルーシートにパンプスを置き、履き口を紀乃にむけて踵をそろえると、ストッキングにつつまれた右足がすぐにそれにのびた。


紀乃の身長は一六三センチある。部屋のなかで紀乃がヒールのある靴をはくと裸足の圭一よりもかなり高くなる。見あげる感じになる。圭一は服を脱ぎ上半身裸になった。紀乃の足もとに正座した。ブルーシートを踏みつけるパンプスのつま先をしばらくながめたあと、そこからすこしずつ目をあげた。リクルートスーツの紀乃を心で拝(おが)んだ。男なら誰でも惹かれる。容姿だけが企業の採用基準なら間違いなく採用だろう。


そんな紀乃がはくパンプスの前に甲を上にして両手を差し出した。右のパンプスが左手の甲をおおった。本底でぐいっと踏みつけた。すっと左のパンプスも浮くと右手の甲も踏みつけた。両手を両方のパンプスで踏みつけた。若い美人の女性とただの虫ケラの関係になる。彼女の気まぐれで踏み殺されても仕方がない関係になる。


首を突き出して、ひたいをブルーシートにつける。土下座になる。土下座の格好で両手の甲を両方のパンプスの本底で踏まれている。踏まれていると言っても体重の7~8割はまだふたつのヒールにある。それほど痛くない。強い痛みを求める。「ヒ、ヒールで踏んでくれ」と懇願する。


すっと右のパンプスがあがる。つま先が左手の甲をかるく突き、手を裏返せと言う。手のひらを上にするとその真ん中に右のパンプスのヒールが立った。本底は手首の裏側を踏みつけた。ヒールに紀乃の体重が注がれる。手のひらから血の気が引くのがわかる。その状態で左のパンプスの本底が右手の甲からはなれる。強烈な踏圧が左の手のひらのヒールに集まる。紀乃は手のひらの上に右足だけで立っている。傷みをこらえながら右の手のひらも上にする。そこに左のパンプスのヒールが立った。そこにも踏圧がこもる。紀乃に土下座する格好で今度は両手の手のひらを両方のヒールで踏まれる。


踏んでいるのはリクルートスーツの女子大生、今日一日外を歩いたパンプス、汚れた靴底、それで踏まれている。全体重を両手で受けている。頭の血管が切れそうになる。両手の手首から先は感覚がない。苦悶と快楽がせめぎ合う。それがつい口からもれてしまう。踏圧から解放される。紀乃は両手からいったんおりると、後頭部に片方のヒールを立てた。ヒールの先から後頭部に踏圧が注がれた。わずかに鼻が潰れた。程よい苦痛に情けない声がもれた。踏圧が強くなった。左のパンプスもゆっくりと浮きはじめた。後頭部を踏むパンプスにいっきに紀乃の体重が乗った。


土下座する後頭部に紀乃は右のパンプスだけで立っていた。壁を支えに片足を体重の軸にしてバランスよく立っている。浮いていた左のパンプスが背を踏んだ。頭を右のパンプスで裸の背中を左のパンプスで踏まれる。さすがに苦痛が込みあげる。踏んでいるのはリクルートスーツの女子大生。紀乃。それをまた思う。何度も思う。パンプスでゴミのように踏まれている。もういい。もうこのまま死んでもいいと思う。紀乃から踏み殺されたい。


「いつまで、そんな恰好をしているの? 歩けないじゃない?」紀乃が左のパンプスのヒールで背をかるく突いた。土下座の頭と背を踏まれ、圭一は紀乃を乗せたまま腰を沈めた。脚をのばした。沈むようにうつぶせになった。右のパンプスが後頭部をはなれた。背中を両方のパンプスが踏む。ヒールで踏まれた背の皮膚が焼けるように熱い。


就活前の紀乃はヒールのない靴ばかりをはいていた。圭一はスニーカーでばかり踏まれてきた。それにくらべると、同じ踏まれるのでも、靴底がたいらな靴とヒールが高く踵の面積のちいさな靴で踏まれるのとでは大違いである。裸で踏まれるのではなく、服を脱がなければよかったと後悔する。ヒールが刺さらないような生地の厚い服を着て踏まれるべきだったと後悔する。


しかし、そんなことはおくびにもださない。それを言えば紀乃は確実にこのようなことはしなくなる。紀乃は踏まれる苦痛を理解していないから踏んでくれているのだ。あんがい痛くないと思っている。だから踏んでくれている。


ところが、じっさいは痛いなんてものではない。妄想は現実に、とてもおよばない。皮膚を破り、肉を刺す、この肉体苦を、もし紀乃が知ったら人を踏むなんて真似はできなくなるだろう。それを思えば、めったやたらに苦痛を口にすべきではない、と奇妙な性癖が釘を刺す。紀乃がゆっくりと背を歩きはじめた。


皮膚に踵が食い込む。それでも踵に体重を置くことを遠慮している。前(本底)に体重はある。踏まれているあいだ紀乃との会話はないが、踏み方や踏圧から彼女が何を考えているのか感じ取る。紀乃は背を踏みつけていることを意識している。踵で背の皮膚を傷つけはしないかと慎重になっている。


首の下から太もも裏までを何度か往復する。往復するうちに踏み方が荒くなる。踵に体重がこもりはじめる。ほかのことに気を取られている。踏みながら今日の会社訪問のことでも考えているのか、と感じ取った。そして、そうなるのも無理はないと思った。化粧も落とさず、ふたたびリクルートスーツに袖を通し、一日じゅうはいたストッキングと靴を、またはいているのだ。それで歩いているのだ。


就活の気分にもなるだろう。頭や顔を両方のパンプスでしばらく踏んだり、背中や腰、尻や太もも、ふくらはぎをパンプスのヒールで刺しながら歩いたりした。背全体を歩いた。リクルートスーツを着ることやパンプスをはくことでオフィスの床でも歩いている、そんな気分になっているようだ。人を踏みつけているという意識はないようだ。そろそろ限界だった。「あ、ありがとう」と声をふりしぼった。


ふつうはその言葉で踏むのをやめるはずだが、紀乃の耳にそれは届いていないようだった。 右手をちいさくあげた。紀乃との決め事だった。「SOS」の合図だ。ところが、その手も目には入っていないようだった。踏みつけはとまらなかった。あげた右手を紀乃の視界に入れようと腰にまわしてみた。手のひらを上にしてふってみたが、パンプスはあっさり、その手をヒールで踏みつけていった。その瞬間、背は反りあがり、頭がおきた。パンプスは、その頭さえ、すかさず踏みつけた。頭がおきないようにと側頭部と左の頬を両方のパンプスで踏みつけた。


それまでの紀乃からは考えられない踏み方だった。「SOS」は出している。前なら、それを合図に、すぐに踏むのをやめる紀乃だったはずだが、なぜ今夜は、「ありがとう」の声が聞こえなかったのか、「SOS」の右手が見えなかったのか、それとも聞こえてはいたが、見えてはいたが、何かに気を取られ、うっかり踏んでしまったのか、とあれこれ考える。


そして、それは不安へと流れ、就活のあいだに好きな男でもできたのではないか、ほんらいであれば紀乃はもっといい男と付き合えるはずだ、背が高いイケメン男のほうが彼女には似合っている、などと不釣り合いはじゅうぶん承知していながらも、そんな厭(いや)な想像をかき立てた。紀乃は男は背丈や容姿ではなく人柄だと言う。が、圭一はそれを信用していなかった。まともには受け取らなかった。


それを紀乃の優しさと受け取り、気休めだ、とひねくれていた。そんな心情は何も今にはじまったことではなかった。子供のころからだった。たしかに紀乃が圭一の背丈や容姿にふれることはなかった。ふれることはないが、たとえば背丈で言えば、いくらこっちがそれをすすめても踵の高い靴をはこうとしない紀乃の態度は、かえって彼女が二人の身長差を強く意識していることを圭一に思わせた。


だから紀乃がヒールのある靴をはいて就職活動をはじめたことは内心すごくうれしかった。大人の女性がはくハイヒールやパンプスで踏まれてみたかったからだ。そんな靴で踏まれながら――もちろんそんなことを思う紀乃ではないが――彼女から「チビ」と蔑まれ見下されることを望んだからだ。ヒールでゴミのように踏まれることを望んだからだ。


ゆえに、このように「SOS」を出しても、まだ踏みつけられるシチュエーションは歓迎すべきことではある。それはわかっている。しかし、心ここにあらず、といった紀乃の様子が気にかかる。右手はまだ腰に残していた。手のひらを上にしていた。それをパンプスは、本底で踏んだり、ヒールで踏んだり、気まぐれな足の運びで路上のゴミのように踏みつけていった。


そのうち背中全部が火照って苦しくなった。肩で息をしていた。たえられない痛みに、わずかでも体をうねらせると、支持足の重心が崩れるらしく、紀乃の体は傾きかかり、不安定になった。安定させる重心の軸を探そうとする紀乃の足の意識がわかった。彼女がはくパンプスの靴底からそれが伝わった。


ようやく重心の軸を見つけると、ヒールに全体重を余すことなく乗せてきた。皮膚に深く食い込ませてきた。じっと同じところで踏みとどまろうとした。ぐいっと強く踏みつけたあとで、体全体のバランスを安定させると、パンプスはふたたび動きはじめた。


それにしても思うのは、踏まれているあいだ、紀乃のそんな何気ない一挙手一投足であっても、すべての動作において、かなりの苦痛がともなうことだった。大人の女性がヒールのある靴をはいて、ふつうに踏めば、踏まれる側にはこれほどの踏圧がかかると知った。


踏んでいる側が、どんなに優しい言葉をかけてくれようが、笑おうが、泣こうが、踏まれているあいだは、この強烈な苦痛にたえなければならない。 踏まれる苦痛は快楽だが、それは心のなかでせめぎ合っている。苦痛がかるければ、それはそれで物足りずに快楽ではなくなるし、あまりにも苦痛が重いと、それはそれで快楽を突き抜けて地獄になる。


ヒールのないぺったんこの靴から踏まれているときは、踏圧の痛みに感化され、自分が虫やコビトになって踏み潰される妄想をする余裕もあった圭一だったが、さすがにヒールのあるパンプスとなると、それもなかった。


その余裕のなさが伝わったのか、ようやく紀乃が思い出したように体からおりてくれた。踏むのをやめてくれた。「ごめんなさい。私、ちょっと、やりすぎたかしら」と言った。まるで夢からさめたような口ぶりだった。圭一は肩で大きく息をしていた。うつぶせのまま顔だけおこすと、「そんなことないよ」と首を横にわずかにふった。笑ってごまかした。両方のパンプスのつま先が圭一を見ていた。凶暴だったパンプスがすっかり大人しくなっていた。それを圭一は不思議にながめた。


この目の前のパンプスは、紀乃の性質とは関係なく、踏むという、その本来の性質にまかせて、ただ踏みつけていただけなのだろうか、それとも紀乃の性質がパンプスをとおして表出したものなのだろうか、とふり返った。



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【あらすじ】

マクロフィリア(巨大女性へのフェティシズム)&アルトカルシフィリア(女性から踏まれることに興奮する性的嗜好)の物語。圭一は、幼稚園のころからの幼なじみの紀乃に片思いをしていた。幼いころから可愛かった紀乃は大人になるにつれて神がかった美少女へと進化した。


高校に入り、紀乃が手の届かなくない存在になると、圭一は彼女にかわり彼女の靴を愛するようになる。そして、あるラノベ小説に影響された圭一は、紀乃がはく靴の靴底にコビトとして磔(はりつけ)になる自分を妄想するようになる。


二浪の末に紀乃と同じ大学に進学した圭一は彼女との同棲をはじめる。しかし、男としてのノーマルな行為より、女性の脚や足や靴や踏まれることに性欲が傾く圭一は、紀乃とのすれ違いが多くなる。そんなとき、家庭教師のバイト先で、高校生の陽菜を見た圭一は彼女に夢中になる。彼女もまた神がかった美少女だった。


紀乃と陽菜のあいだでゆれる圭一。美少女の足に踏まれたいという狂気に取り憑かれ、現実、過去、妄想、小説の物語のなかをさまよい、やはて圭一の精神は病んで壊れていく・・・


【内容から一部抜粋】

やはり、このニーハイブーツは別格だ。紀乃の踏み方も以前のそれとはまるで違うことに気づく。たとえば以前であれば、紀乃はヒールで怪我することを恐れ、靴の踵には――とくにヒールが細い場合は――体重をかけなかった。それに、さっきこのブーツは危険だと言っていたにもかかわらず、アイスピックのような二つのヒールに思いきり体重を乗せている。そうやって散々、うつぶせの背全体を踏みまわった。全身を火だるまにした。



とうとう幼なじみから見つかってしまった主人公はコビトとしてのそれまでの行為を彼女から全部白状させられる。主人公は土下座してあやまるが、幼なじみは許さない。女の子には知られたくない秘密がいっぱいあることを何度も強調した。激怒した幼なじみは、罰として、自身が学校ではく上靴の裏にガムテープで磔(はりつけ)の刑にする、と彼に言い渡した。幼なじみは私立の有名女子高に通っていた。


処刑の日、学校の昇降口に着くと、幼なじみは靴箱のなかで右の上靴だけを裏返して靴底を上にした。それから学校カバンに手を突っ込み、主人公をつまみあげると、人の小指半分ほどの主人公にむかってこう言った。


「今日一日、私の上靴の下にいるのよ。いい? 一日じゅう、私から踏まれているのよ。いい? もし学校が終わっても、生きていられたら、あんたの勝ち。許してあげる。本当は、私の友だちがいっぱい乗ったスクールバスのタイヤに投げ込んで殺してもよかったのだけど、幼なじみだから、さすがにそれは勘弁してあげる。私、優しいでしょ? チャンスをあげるのだから」



陽菜は踏むのをやめると玄関の上がり口に腰をおろした。右のローファーを脱いで黒のソックスのつま先を圭一の頭に届く位置にのばした。「顔をあげて」と言った。言われたとおりにすると黒いソックスを口に押しつけてきた。鼻を潰した。ソックスからぬるい湿気を感じた。豚鼻のようになった鼻でソックスの匂いを思いきり嗅がされた。前に嗅いだ靴の内側の匂いより何十倍も濃縮されたそれにむせそうになった。新陳代謝が盛んで身体からの分泌物が一番出る年頃である。強烈だった。「いい匂い?」と陽菜がきいてきた
 

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上靴の靴底から伝わる舌の動きに、彼女は「す、すごい! ホントに舐めてる! よく靴の裏なんて舐められるね」と感心した。声には、本当に舐めるとは思っていなかった、という驚きがこもっていた。醜男はすこし得意になった。さらに強く舌を靴底に押しつけた。


「ねえ、あんた、わかってるの? この靴はね、学校にいるあいだ、ずっと、はいていた靴だよ。この靴でトイレにも行ったしさ、トイレの床も踏んだんだよ。この靴の裏、バイ菌だらけだよ? 死ぬかもよ? いいの?」と彼女。


いいに決まっている、と醜男は思った。彼女ほどの美少女の靴底が汚いわけがない。しかも、この目の前の靴底が踏んだのは有名女子高の床だ。トイレだ。いいに決まっている。死ぬ? 靴底を舐めて毒で死ぬなんて、いいに決まっている。


醜男は舌の動きをとめた。そして思ったことを言った。「あなたの靴底はきれいです。バイ菌なんていないです」彼女は吹き出した。彼女は「じゃあ、お舐め」と女王様の口調になった。(下書き原稿)
 




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たとえば彼女がはいた靴の靴底に舌を這わせていることだ。高校時代にはじまり同棲している今も彼女がいない隙にそれをやっている。彼女が自分がはいた靴底を私が舐めていることを知ったらとよく思う。


中敷きや靴底には唾液だけでなく白い液体もつけていたことや、ちいさな生き物をこっそりと踏ませていたことや、コビトになり彼女から踏み殺されることに憧憬していることを知ったらとよく思う。


マゾヒズム的な心情でいえば、それらを知ったときの彼女の反応を見たい。彼女の口からどんな言葉が出るのか知りたい。しかし、ノーマルとアブノーマルの境界を見誤ると破綻する。彼女との仲も終わる。靴で踏んでもらうのでさえ、ノーマルな彼女からしてみると、じゅうぶんすぎるほど異次元の世界なのだ。


また、この秘密(彼女の靴の靴底を舐めている)をかかえていることで私にはうしろめたさがある。靴底を舐めた舌と彼女の舌が絡み合うなど、これもマゾヒズム的な心情でいえば、あり得ないことだからだ。


女の体の部位でも上位にくるであろう舌。そして部位ではもっとも下位であろう足。その足を地面の突起物や汚れから守るためにはかれる靴。私の舌など彼女がはく靴の靴底にふれさせてもらうだけでじゅうぶんなのだ。それで、ようやく対等なのだ。私の舌など、踏まれても仕方がない、地べたを這うミミズなのだ。それなのに彼女の舌に舌でふれている。もはや、うしろめたさなんてものじゃない。罪悪だ。{下書き原稿)


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「いつまで、そんな恰好をしているの? 歩けないじゃない?」と彼女。差し出した頭を右のパンプスで踏まれる。醜男は裸で彼女の足もとに土下座だった。言われたとおり、腰を沈め、脚をのばし、床に沈んだ。うつぶせになった。右のパンプスはすぐに頭を踏み越えた。


両方のパンプスで背中を踏まれる。ヒールの下の皮膚は焼けて穴があくようだった。それまでの彼女はヒールのない靴ばかりを好んではいてきた。だからスニーカーでばかり踏まれ続けた。それにくらべると、同じ踏まれるのでも、靴底がたいらな靴とヒールが高く踵の面積のちいさなパンプスで踏まれるのとでは大違いだ。


苦痛のなかで、裸で踏まれるのではなく、服を脱がなければよかった、と後悔する。それもヒールが刺さらない生地の厚い服を着て踏まれるべきだった、と後悔する。しかし、そんなことはおくびにもださない。それを言えば彼女は確実にこのようなことはしなくなる。



彼女は踏まれる苦痛を理解していないから踏んでくれているのだ。あんがい痛くないと思っている。だから踏んでくれるのだ。しかし、じっさいは痛いなんてものではない。拷問だ。彼女が、もし皮膚を破り、肉を裂くようなこの肉体苦を知ったら、ヒールがあるパンプスで人を踏むなんて真似できない。(下書き原稿)


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彼女の踏み方は「踏まれたかったのでしょ? それもこのピンヒールで」とでも言いたげだった。遠慮はなかった。ふつうであれば前のめりに本底に体重を集め、怖々と踏む彼女だったが、今夜は違った。壁に手をそえ、背筋ををまっすぐにして、思いきりヒールに体重を乗せ、背を踏みまわる。アイスピックのような二つのヒールに全体重を込めている。


ヒールの下は、その強烈な踏圧を受け、皮膚の細胞は死滅しているに違いなかった。痛いというより、燃えている感覚だった。火傷したようにヒールの下だけが熱かった。彼女が背を一歩踏むたびにそれが増える。火がついたように熱くなる。ピンヒールは背中と臀部をこれでもかというほど踏みつける。


右の太もも裏を踵が刺した。刺したままそこに踏圧を注ぎ込んだ。すると太ももが痙攣(けいれん)をおこした。全身の筋肉が硬直した。それでも踵の先をかまわず注射針のように筋肉に突き刺した。やはり、このヒールは別物だ。それまでの彼女の靴とは違う。命がけになる。このまま踏み続けられたら、と死を意識する。(下書き原稿)

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仰向けの醜男を両足で踏んだ瞬間、泉美のサディスティックな性格に火がついた。片手で壁につかまり胸部に両足で立っていたが、左のパンプスを胸部に残すと右のパンプスで醜男の顔をおおった。汚れた靴底で醜男の口をふさいだ。そして「靴の裏をきれいにして」と言った。


醜男は右の足首を両手で持った。踏まれたまま舌を靴底に這わせた。スマホのシャッター音がした。醜男はパンプスの靴底を舐める顔を泉美から撮られた。*右の靴底を舐め終えると泉美が右足を戻そうとした。それに合わせて醜男は支えていた足首から手をはなした。すると片足になった泉美が急にバランスをくずした。重心が定まらない状態でフラフラしながら、ふわりと浮きあがった右のパンプスを思いきり醜男の顔に踏みおろした。


醜男は絶叫した。勢いづいたパンプスで真上から顔を踏みつけられたのだ。踵に踏み潰された下唇から血が噴き出した。ひたいに靴底模様を深く刻印される。泉美の左足は胸から離れている。また片手で壁につかまり、右足だけで顔に立っている。右のパンプスの靴底に集中した泉美の全体重と踏圧。それを浴び続け醜男は苦痛と快楽のなかである夢におちた。(下書き原稿)





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一 マリンヒルズ


その山(やま)裾(すそ)の漁師町は、近年、海の景観や都市部に近いことから開発がすすみ、切りひらかれた山の斜面には海にせり出すような豪邸や別荘が積まれていった。土地が安かったぶん建物にカネをかけたのか、どれも派手で無駄に大きかった。「マリンヒルズ」と呼ばれるその場所からは広大な海の景観を一望できた。


マリンヒルズと山裾の漁師町とは県道一本をはさんで、くっきりと住み分けができていた。県道は見えない国境となった。両者が行き来することはほとんどなかった。


過去には親睦の意味もこめて運動会や祭りなどの行事や催し物を一緒におこなったこともあったらしいが、互いに相容れないものがあったのか、すぐにそれもなくなったようだった。

 

それでも学校や役所は漁師町にあった。マリンヒルズの住人たちがまったく国境をこえないというわけではなかった。子供の学校は親が車で送迎していた。

 

マリンヒルズの子供たちのなかには学校に馴染めない子もすくなくなかった。学校へ行けなくなる子もいた。どうしても漁師町の学校に馴染めない子は遠くの私立に通っていた。子供の学校のことでマリンヒルズから転出する家族もすくなくなかった。

 

親からの愛情を受けるそんな子供がいるいっぽうで、親から虐待を受けたり家庭環境に問題がある子たちが入る児童養護施設が漁師町にあった。地元の子はいなかった。ほとんどが遠くから来た子たちだった。

 

井上悠人も親からの虐待を受け、そこに入った一人だった。悠人はその施設から漁師町の中学に通っていた。

 

漁師町の大人たちは施設の子たちには寛容だった。施設を出たあと地元で働く子が多かったこともその一因だった。

 

問題だったのは子供を持つマリンヒルズの一部の大人たちだった。偏見を持っていた。口にはしないが我が子と施設の子が机をならべることが我慢できないようだった。そういう親はたいてい漁師町の子も色メガネで見ていた。学校で何か問題があるとたいてい施設の子か漁師町の子のせいにしていた。

 

そんな一部の親たちの影響もあり、子供たちは小学校のときから自分が所属するコミュニティー(漁師町か、マリンヒルズか、施設か)を互いに強く意識した。

 

中学にあがるころには完全にコミュニティーの棲み分けができていた。それは見た目でもわかった。たとえば制服から私服に着替えるとマリンヒルズの子たちは男子も女子もおしゃれに変身した。

 

漁師町の子たちも今風に小綺麗にはしていたが、どこかあかぬけない感じだった。

 

それにくらべて施設の子たちはあきらかにその両者より見劣りした。シミがあったり袖口がほどけていたりする着古しの服ばかりを着ていた。悠人が着ていたのは、学校の制服もふくめて、そういう着古しの服ばかりだった。服以外の持ち物もだいたいそんな感じだった。

 

また施設の子だけが持っていない決定的なものがあった。携帯電話だった。学校側では厳しくそれを禁止していたが、それを守る生徒たちでもなかった。秘密などは全部携帯電話でやり取りされていた。ネット上にもコミュニティーができあがっていた。自分が属するコミュニティーへの帰属意識をますます強めた。棲み分けと格差をあらわにした。

 

たとえば校門でもそれは見られた。登下校の時間になると校門前の路上にマリンヒルズの車がずらりとならんだ。運転席にはたいてい身ぎれいな母親が座っていた。「車に乗る」イコール「マリンヒルズの子」だった。

 

そんな車が漁師町や施設の子が歩く横を通り過ぎていく。漁師町の子たちは学校から家が近いからまだいい。彼らに車の送迎にたいする妬(ねた)みはたぶんなかった。

 

しかし学校からかなりの距離を歩く悠人は違った。車で送迎してもらえる子たちを妬んだ。そんな悠人の横をマリンヒルズの子たちの車がこれみよがしに通り過ぎていく。悠人には車の送迎が親からの愛情に映った。卑屈になった。言い知れぬ格差を感じた。そんなとき顔を伏せて下をむいて歩いた。そのせいで、ついこのあいだも危うく車に轢かれそうになった。

 

うしろからのクラクションで車道に出ていることに気づいた。悠人はあわてて歩道に戻ったが、そのとき手に持っていたもの(給食で出たサンドイッチ)を地面に落としてしまった。

 

車のスピードは出ていなかった。ゆっくりだった。それなのに車はサンドイッチをよけずに轢いた。助手席側の前輪後輪のタイヤで轢いていった。

 

助手席にいたのは同じクラスの戸田夏香だった。夏香は自分が乗る車がサンドイッチを踏んだことに気づいていた。助手席の窓から踏んだものにふり返る彼女の顔が見えた。口もとが笑っている。ついこのあいだ彼女からはかなりひどい目に合ったばかりだった。笑みはそのときのこともふくんで見えた。

 

サンドイッチはぺしゃんこに踏み潰されていた。パンの表面にはビニールの包装ごとタイヤの溝が立っていた。中身も全部出ていた。

 

悠人はそれを拾うとまた歩きはじめた。歩きながらサンドイッチを大事に食べた。パンにはタイヤのゴムの匂いもまじっていた。

 

夏香の顔が浮かんだ。間違いなく学校で一番の美少女だった。しかも学級委員だった。とても手を出せる相手ではなかったが、性格の悪さは有名だった。それでもコミュニティーを問わず、彼女のことを想う男子は多かった。彼らと似た心情は悠人にもあった。が、悠人の場合、夏香に限らず、どんな女の子にも積極的にはなれなかった。

 

ヨシアキにそれを話すと、
「俺たち、親から虐待されただろ? 母親からさ。だから女の子には自信がないんだよ」と説明された。

 

ヨシアキも施設の子だった。歳も同じだった。寮では部屋も同じだった。施設に入った時期もだいたい同じである。ヨシアキとは、学校側が考慮したのか、それとも施設側がそう頼んだのか、小学校のときから今に至るまでずっと同じクラスだった。さいわい彼とは気が合った。親から虐待された者同士、何か共通するものがあったらしい。

 

ヨシアキが受けた虐待は悠人のそれより深刻だったようだ。
「俺、母親からさ、何度も殺されかけたんだぜ」が彼の口癖だった。

 

夏香が乗った車から轢かれそうになった次の日、悠人が一人で学校から帰っていると偶然ヨシアキが前を歩いていた。そのことをヨシアキにまだ話していなかった悠人は彼に駆け寄った。

 

声をかけるとヨシアキが足をとめてふり返った。黙って目を伏せている。悠人は表情に不自然さをおぼえた。

 

ヨシアキがまた歩きはじめた。

悠人も彼の横を歩いた。

「きのう車に轢かれそうになったんだ」

悠人が言った。
あまり関心がなさそうな目でヨシアキは悠人を見た。
ところが、
「夏香の乗っていた車に轢かれそうになったんだ」と悠人がそう言いなおすとヨシアキの表情が動いた。

 

そのときの状況を話した。サンドイッチのことは伏せた。
「俺だったらよけなかったかも・・・」と本気とも冗談ともつかない口調でヨシアキは返した。

 

そのあともヨシアキとならんで歩いた。しかしほとんど何も話さなかった。最近は学校でも施設でも互いに立ち入った話はしなくなっていた。互いに黙りがちだった。仲が悪くなったわけでもなかった。無関心とも違った。思春期あたりから男兄弟は互いに口数がすくなくなると聞いたことがあるが、それと似た関係ではないかと悠人は勝手にそう思っていた。

 

ヨシアキが左手に持ったサブバッグが気になった。ふくらみすぎて開け口のファスナーが半分ひらいている。

 

悠人は中身をたずねた。
ヨシアキは何もこたえなかった。その表情にさっきと同じ不自然さをおぼえた。
サブバックの持ち手に悠人は手をのばした。無理に持ち手をにぎった。ヨシアキの足がとまった。悠人をにらんだ。「手をはなせ」とヨシアキがサブバッグを強く引っぱった。悠人は手をはなさなかった。引っぱり合いになった。サブバッグのファスナーが全部ひらいた。開け口がはだけ中身が出た。地面に落ちた。

 

二人は手をゆるめた。二人の目は地面に落ちたものにあった。上靴の片方が落ちていた。赤いゴムのふちがついた上靴だった。女子の上靴だ。悠人の手はサブバッグからはなれていた。

 

長い沈黙がおりた。
最近、教室で笛や体操着やノートなどが紛失することが続いていた。それはどのコミュニティーでもおきていた。悠人とヨシアキも上靴を盗まれた。というか捨てられていた。それも何度もだった。悠人はそれを「靴なんてお前らには贅沢だ。お前らは裸足でいろ」ととった。

 

いくら新しい上靴を買っても二人の上靴はすぐに捨てられた。二人は学校で上靴をはくことをあきらめた。生活指導の先生も事情を知ってか知らずか裸足の二人に何も言わなくなった。しかし裸足でいることで二人は学校で嫌がらせを受けていた。

 

悠人は地面に落ちた上靴を拾った。「戸田」と靴の甲にあった。戸田夏香の上靴だった。悠人は動揺している自分に気づいた。このあいだも二人は彼女からひどい目にあったばかりだ。悠人はあのときの復讐だと思った。サブバッグの開け口からはほかの上靴も見えた。それらも赤いゴムのふちがついていた。誰の上靴かそれもだいたい見当がついた。

 

ヨシアキが悠人の手から夏香の上靴を取った。上靴をサブバックに戻した。そして一人でまた歩きはじめた。先を急ぐように悠人から離れていった。

 
施設の寮に戻ってからもヨシアキは様子がおかしかった。いつもであれば食事がすんだあと食堂でみんなとテレビを観るヨシアキだったが、その日はそそくさと部屋へ戻っていった。

 

悠人も部屋へ戻った。部屋は二人部屋だった。ヨシアキは二段ベッドの上のベッドで横になっていた。ヨシアキの机にはサブバッグがある。バッグはまだふくらんだままだった。開け口はファスナーでとじられていた。

 

悠人も二段ベッドの下のベッドにもぐった。仰向けになった。そして上のベッドにむかって、
「どうして上靴を?」とたずねた。

 

すこし遅れて、
「みんなには黙っていてくれ」と返ってきた。

 

蚊の鳴くような頼りない声だった。上のベッドがきしんだ。ヨシアキがベッドのハシゴを伝いおりてきた。

 

ヨシアキが自分の机のイスに腰をおろした。ファスナーが走る音がした。サブバッグを持ちあげて開け口を逆さにした。複数の靴が机に散らばる音がした。部屋全体に靴の匂いがこもった。酸味のカビ臭い匂いが鼻をついた。女子たちの足の匂いだった。

 

悠人も二段ベッドから出た。自分の机のイスに腰をおろした。ヨシアキの机を見た。上靴が三足あった。「戸田」と書かれた上靴に目がとまった。上靴はヨシアキの机を踏んでいた。他の上靴にも名前が書かれていた。やはりエリとモエコのだった。二人とも美少女だったが夏香と同じくらい性格が悪かった。三人はマリンヒルズの子たちだった。目がヨシアキの足にむいた。両足の甲にはあのときの赤黒い丸いアザがあった。


 

二 あのときのこと


 

何度も上靴を捨てられ、上靴を買うことをあきらめると、二人は靴下をはいてしばらくは過ごしていた。しかし裏が真っ黒になり、すぐに破れるので靴下も脱いだ。裸足になった。ところが、そんな二人の足をわざと上靴で踏んでくる意地悪な女子たちがいた。夏香、エリ、モエコの三人だった。クラスで中心の女子たちだった。

 

最初は偶然だった。クラスの女子から上靴でうっかり足を踏まれたヨシアキが情けない声をあげた。そうとう痛がった。それを三人の女子たちは見ていた。素足を靴で踏む意地悪を気づかせた。

 

担任は無関心だった。男子が男子にそれをやると「いじめ」ととるが、女子が男子にそれをやっても「ふざけている」としかとらない担任だった。三人は女子という立場を利用して二人の足を踏む意地悪を繰り返した。

 

エリとモエコは人目も気にせずに露骨に踏んできた。しかし夏香は学級委員という立場がある。人前では踏まなかった。やり方も狡(こう)猾(かつ)だった。偶然を装い、人目につかないところで楽しむように踏んでいた。踏みつけ方も激しく容赦はなかった。片足でしばらく踏み続けることもあった。そんなふうに思いきり踏んでおきながら、そこにクラスのイケメン男子などがあらわれると夏香は急に態度をかえた。「ごめんなさい。痛くなかった?」などと聞こえよがしに心配そうな声を出したりもしたが、その目はあきらかに笑っていた。

 

そんなひどい目にあいながら二人は彼女たちに何も言い返せなかった。とくにヨシアキは三人の女子の前に出ると急にちいさくなった。自分から足を踏ませているようにさえ見えた。

 

三人の女子たちは痩せてはいるが背も高くそれなりに体重もありそうだった。姿勢も堂々としていた。それにくらべヨシアキはクラスの男子で一番背が低かった。悠人は二番目に低かった。体つきも二人は猫背で貧相だった。

 

そんな二人の素足を三人の女子は全体重をかけて踏むのだ。いくら上靴とはいえ、鋭利なギザギザの滑り止めが刻まれた靴底で素足を踏まれると痛さもはんぱではなかった。自分たちより体格がいい女子たちから靴で踏まれるのである。無遠慮に力を込めて踏まれるのである。

 

そのうち悠人も知恵がついた。苦痛で顔をゆがめるほど、声をあげるほど、彼女たちがそれを楽しんでいることに気づいた悠人は、できるだけ平然とした顔で声を出さないように努めた。要するに、なんでもないことのように強がった。すると予想通り三人の女子たちは悠人の足をそれほど踏まなくなった。

 

そのことをヨシアキにも伝えたが、彼はむしろ前よりも大げさに顔をゆがめたり声をあげたりしていた。三人の女子はますます彼を踏むのをおもしろがった。悠人はそれを歯がゆい気持ちでながめていたが、何かモヤモヤするべつの感情がくすぶっていた。悠人はそのモヤモヤがわからなかった。

 

ある日の昼休み。悠人が教室に入るとヨシアキの席にエリとモエコの二人がいた。夏香の姿はなかった。ヨシアキはイスに座って机に目を落としていた。いじめのけはいを感じた。悠人は自分の席に腰をおろしてその様子に目をむけた。目をむけるだけで体は動かなかった。女子たちがヨシアキにあびせる心ない言葉に胸をつかれるが、かといって「いいかげんにしろ」とそこに割って入る勇気はなかった。

 

ヨシアキの背中がちいさく見えた。もし、いじめにあうオーラがあるとしたら、それが出ていた。
「ほら、足を出して」とエリの声が聞こえた。

 

ヨシアキが曲げていた両膝を前にのばした。机の下から両足を出した。エリが前の席のイスを引いた。その背もたれを持ちあげ、ヨシアキの両足の甲にイスの後脚をかざすと、
「イスが踏めるように足をひらいて」と言った。

 

イスの後脚の幅にヨシアキが足をひらく。すると両足のそれぞれの甲をイスの二本の後脚が踏んだ。足の甲の厚みぶん、座面は前にすこし傾いている。背もたれもすこし高くなっている。

 

その傾いた座面にエリが腰をおろした。ヨシアキは言葉にならない声を教室じゅうに響かせた。教室には悠人以外にも数人の生徒がいるにはいたが、みんな彼女たちがやっていることには無関心だった。

 

ヨシアキにたいしエリは横向きに座っていた。座面は彼女が座っても傾いて見えた。エリは背もたれを右の脇にはさむと、それを支えにブランコでもこぐように両足をまっすぐとのばした。両方の上靴は床から離れていた。イスの後脚に体重を集めていた。エリはヨシアキの苦痛でゆがんだ顔を満足そうにながめていた。そばにいるモエコもそれをニヤニヤしながらながめていた。

 

エリが腰をあげた。くるりと体を返した。今度はイスの座面を右の上靴で踏んだ。左の上靴は床に残している。背もたれを左手でつかみ、前かがみに座面を踏む右足にぐいっと力を込めた。それに合わせてヨシアキの声も大きくなる。エリの左の上靴が床を蹴った。イスの上に完全に両足で立った。ヨシアキが静かになった。

 

すこし遅れてからおぞましい声が教室に響いた。エリもモエコもべつにその声に驚く様子はなかった。おかまいなしだった。むしろ悲痛な声をおもしろがっていた。エリは下をむいていた。自分が乗ったイスの後脚がヨシアキの素足を踏んでいるのを笑っている。モエコの目もそこにある。もちろん笑っている。

 

傾いた座面に立つのは不安定なようだった。バランスを保つのに適当に座面の踏む位置をかえている。座面の踏む位置によってヨシアキの苦痛の声が変化する。たとえばヨシアキの足を踏む後脚側に寄ったりすると声は強くなった。反対にイスの後脚側から遠ざかると声は弱くなった。エリとモエコの二人はそんな声の強弱でさえおもしろがった。

 

イスの脚の裏の接地面はハイヒールの踵ほどではないが、それでもわずかな面積だった。その面積の二本の脚に女子一人の全体重がかかっている。

 

モエコが「私も乗る」と言い出した。
エリ一人でもかなりの重みだ。その上、モエコの重みまでかかるとなると骨折するのではないか。やめさせるべきだ。しかし体が動かない。腰があがらない。「やめろ!」と叫べない。

 

モエコはイスの座面に足をかけている。彼女もイスに乗る気だ。たまらず悠人は目をそらした。エリとモエコの笑い声にネコが喉をしぼったようなヨシアキの声がまざる。

 

悠人はそらしていた目をヨシアキの席にむけた。エリとモエコの二人がイスに立っていた。二人とも後脚側にいた。二人の上靴はヨシアキの足を踏む二本の脚を分け合うようにその上の座面をしっかりと踏んでいた。

 

イスの上で二人がちいさく跳ねはじめた。彼女たちが跳ねるたびにヨシアキの陰惨な声が波打った。助けを乞う響きもこもっている。机に顔を伏せて両手にはこぶしをにぎっている。

 

さすがに悠人もイスから腰が浮いた。それをやめさせるためにヨシアキの席にむかいかけたとき教室の扉がひらいた。悠人は足がとまった。

夏香が入ってきた。エリが「おいで、おいで」とイスの上から夏香に手招きした。夏香はエリの手に吸い寄せられるようにヨシアキの席に歩いた。
「ねえねえ。夏香も乗ったら」とモエコ。

 

イスの上の二人をながめていた夏香だったが、うしろの席でうめき声をもらすヨシアキに気づくと、彼の両足にも目がふれ、なるほどね、という表情になった。

 

夏香は学級委員だ。教室には悠人以外にも数人の生徒が残っている。その目もある。イスの上の二人に口先だけの注意くらいはする。そう思った。ところが彼女の口から出た言葉は「おもしろそう。私も乗る」だった。

 

イスの上の二人が夏香が乗る場所を空けた。空けたのはヨシアキの足を踏む後脚の座面だった。夏香の右の上靴がその座面を踏んだ。左の上靴はまだ床に残している。背に人の視線を感じたのか夏香が突然ふり返った。
「文句ある?」と悠人をにらんだ。

 

憎々しげに目をとがらせた。
立ちすくんだまま悠人は夏香の目に何も言えずにいた。体がセメントのようにかたくなった。

 

ふん、と鼻を鳴らして夏香は体を前に戻した。左の上靴の踵を大きくあげた。右の上靴でイスの上に踏み乗った。ヨシアキの声色が変わった。夏香が両足をそろえたのはヨシアキの右足を踏む後脚のすぐ上の座面だった。脚のちいさな丸い接地面に夏香の全体重がある。いや彼女だけではない。イスにはエリとモエコもいる。彼女たちの体重もふくまれている。イスの座面が上靴だらけに見える。三人の女子たちは互いの体につかまり、イスから落ちないようにして立っている。




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【あらすじ】


ある地方の山裾の漁師町に様々な事情を持った子が入る施設がある、悠人とヨシアキの二人はその施設から中学に通っていた。学校で二人は学級委員の夏香をはじめとする女子たちから執拗な「いじめ」にあっていた。そんなある日、二人は夏香の誕生会に招かれる。そこでは夏香の二人の姉、冬香と春香が待っていた。美人三姉妹からの残酷極まる虐待が待っていた・・・



【内容より一部抜粋】


悠人は転がるようにヒールから逃げた。それをパンプスが追いかける。ボールを蹴り転がすように壁際に追いつめる。そこで背中を踏みつける。とがった踵を左右にひねり、鞭痕の皮膚にぐりぐりと無理に押し込んでくる。


背中は汗でねっとりぬれている。滑りやすくなっている。背中を踏むつもりのようだ。ヒールを皮膚にしっかり食い込ませてくる。背中からすべり落ちないためのようだ。強い踏圧が加わる。まだ片足だ。悠人は目をかたくつむった。両手のこぶしをにぎりしめた。すぐに両方のパンプスから踏まれた。


*


突然、頭上で空を切る音がした。皮膚が裂ける音がした。左肩から腰に熱いものが走った。刃物で切りつけられたのかと思った。声を出す暇もなかった。あとから激痛がじわりときた。


土下座の恰好で首だけをおこした。目をあげた。冬香の右手から鞭が垂れていた。鞭の先が生きた蛇の舌に見えた。その舌が床を舐めまわしていた。さらに高く目をあげた。冬香の顔を見あげた。目が不思議とまどろんでいる。すべてを本能にゆだねる目だった。


*


その夏香が運転する車がこっちにむかってくる。悠人は全力で走った。走ったと言っても下は砂地である。はやく走れるわけがない。足が絡まる。それに相手は車だ。すぐに追いつかれる。


体にふれるかふれないかギリギリで車が横を通り過ぎていく。その風圧で前のめりに悠人は砂に両膝をついた。車が行ったあとにタイヤの轍(わだち)が深い溝となって残った。砂は車の重みで圧縮されタイヤのトレッド模様が刻まれていた。その模様に夏香の重みがふくまれていることを想った。



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イスに腰をおろすと彼女が「舐めて」と右のハイヒールのつま先をあげた。靴底には踏んでいた食パンがイチゴジャムを塗ったせいで接着剤のようについていた。


その踵を床で、二、三度たたくと食パンはあっさりと床に落ちた。生地の真ん中は踏みあとで三角に深くくぼんでいる。靴底にはイチゴジャムがべっとりと残っている。彼女が言った「舐めて」とはこれのことだろう。私はそう判断した。食パンよりも先に靴底に口をつけた。


彼女は黙って靴底を舐めさせている。イチゴジャムの甘さが内臓にしみわたる。舌の音を立てて舐める。靴底からジャムがなくなるとハイヒールはまた食パンを踏みつけた。そしてイチゴジャムをたっぷりと吸った靴底を見せた。私はその靴底をまた舐めあげた。それを何度も繰り返した。(下書き原稿)






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