去る2019年12月某日、約30年ぶりに、成田空港近くにある航空科学博物館を訪れてきました。



http://www.aeromuseum.or.jp/

時間が出来たらいつかは…とは思っていたものの先送りになっていたので、ようやくのチャンス到来です。

この航空科学博物館は、毎年3月・9月に「航空ジャンク市」といって、空港カウンターの備品や、機内食の食器、航空機部品などが売り出されることで有名です。私は、実はこのようなものにも目がないのですが、混雑が苦手なこともあり、しかも現在ではe-bayなどのオークションサイトを利用した方が確実かつ、安く(決して安価なものではありませんが相対的という意味で)入手可能なので、そちらを利用しています。

今回のお目当ては、「セクション41」と、「B737(モーションレス)フルフライトシミュレーター」です。

空港ゲートの金属探知器を模した入場ゲートを入ると、そこでは、このようなボードが出迎えてくれます。



一般の家族連れさんなどは、特に興味を示すでもなく通り過ぎて行きますが、これは、空港オペレーションセンターのブリーフィングルームに設置されていたであろうチェックボードです。

この記事を書くにあたって、改めてこのボードの機能と、そこに書かれている内容を考察してみました。

航空会社が使用する機体は、同じ機種であっても、機体ごとに微妙な相違があるのが普通です。長距離用や短距離用、国際線用や国内線用、そして国際線用であっても、ニューヨーク便などはビジネスクラスがほとんどを占め、エコノミーはわずか。一方、ハワイ便などは、エコノミーが客室の大部分を占め、ファーストクラスはありません。

また、このボードが使用されていた時代背景を考えると、ジャンボ機でも二階席が短いLR型とSR型、また、二階席が長いSUD型が混在しており、どうやら、ボードのスイッチを切り替えることで、これから乗務する機体の装備がランプで点灯する仕様になっていたのではないかと思われます。

そしてこのボードには、国際線の歴史を物語る「すごいこと」が書かれています。

〔※3〕POLAR KITS TO BE EQUIPPED ON POLAR FLT.
(極地用装備は極地経由便に装備される)

その昔、東京発の欧州便は、アメリカのアラスカ州アンカレッジを経由して、北極上空を経て運航されていました(他に南回り便がありましたが時間がかかり過ぎでした)。

安全確保上、当然北極圏での不時着陸なども想定せざるを得ませんでしたから、その際のサバイバルキットも搭載されていたということです。非常食のみならず、サバイバルナイフや防護用の拳銃なども搭載されていたと聞きます(古い記憶なので間違っていたらすみません)。極地で生き残るには、アザラシなどを捕獲して食する必要もあったということでしょう。

その後、ソ連が崩壊し、ロシア上空の航空路が解放されてからは、貨物便を除いては直行便がメインとなり、このような航路は消滅しました。

さて話を戻し、一般に航空会社のCAさんは、(その航空会社がベースとしている空港の場合)空港ターミナルビル近くにある「オペレーションセンター」に出勤します。そして、出勤手続きを終えフライトの集合時間になると、「ブリーフィングルーム」に集まります。「ブリーフィング」とは「ちょっとした打ち合わせ」のようなニュアンスでしょうか。

キャビンクルーは、月々の乗務スケジュールで割り当てられた一連の旅程は同じメンバーで行動しますが、旅程初日は基本的には初対面です。そこでまずは、1人づつ自己紹介から。「L1担当の478期松本()です。宜しくお願いします。」といった具合に順に自己紹介をします。「L1」とは担当するドアの位置です。L1は、機体左側の最前方のドアです。

CAさんは、乗客サービス要員である前に保安要員ですので、ドアに対して持ち場が決まっています。緊急時には、自分の担当する持ち場で非常脱出等の乗客誘導を行なうことになります。

このボードは、ブリーフィングの際の確認のために使用されていたのでしょう。国内線の場合は、シップ(乗務する機体のこと)に搭乗後、機体の客室前方に集まって、さらさらっと済ませることも多いようです。

それが終わると、コックピットクルーとの合同ブリーフィングを経て、皆で揃って航空会社専用のクルーバスに乗って空港まで向かいます。

何気ないボード1枚にも、ドラマがあります。

)この意味が分かる人は、今ではもう「おじさん」「おばさん」ですね。恥ずかしがらないでも結構です。私もそうですから。

このテーマは続きます。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。