我が家では牛乳は僕しか飲まない
でも最近は減るのが早かったんだ
どうやらばあちゃんが
じいちゃんの為に温めて飲ませてあげてるらしい
そんなじいちゃんは
癌に侵されている
肺癌
ヘビースモーカーだし
84歳だし
仕方のない事実なのだろう
放射線治療をして一時は良くなったのだけど
結局のところ
治りはしなかったんだ
昔は暴れん坊だったじいちゃんも
すっかり弱ってしまった
悲しいほどに
そんなじいちゃんに
ばあちゃんは牛乳を温める
薬なんかじゃない
そんなんで治るわけがない
そんなの分かってる
けれども少しでも身体にいいものをと
牛乳を温める
それは祈りであり
何十年もの思いのこもる愛情でもあるのだろう
温かい温かい思い
そう考えると
僕は涙が止まらなかった
そしてじいちゃんは眠るように
息を引き取った
僕はじいちゃんが亡くなる少し前
じいちゃんの手を握っていた
もはやろくに口も聞けず
目もあまり見えてないようだった
それでも僕は
手を握った
強く
強く握った
暴れん坊だったじいちゃん
でも家族に為に必死に働いたじいちゃん
かっこよかったじいちゃんの
バトンを受け継ぎたかったんだ
僕は継ぐ
僕は繋ぐ
じいちゃんから僕
僕から未来へ
そしてばあちゃんの牛乳のような
温かい思いで生きてく