今日は、朝から暑かった。

いつものように出勤していると、

反対側の歩道に、人が倒れていた。


ん?

あー、人か。

ん?

・・・

おー、人が倒れてる!!


二度見して、

ようやく事態を把握できた。


声かけして、

救急車を呼んで、

水を用意して・・・

1人では到底無理だな。


道の前には誰もいない。

私だけ。

後ろを振り返ったら、

10メートル後方に何人か人が見えた。


「お願いしまーす!」

と大きな声をだし、

後方に向かって大きく手を振りながら、

倒れている人に駆け寄った。


大丈夫ですか?

大丈夫ですか?

救急車呼びますよ。

足をたたいて声をかけたが、

反応なし。

これだと、意識がない状態。


そうこうしている内に、

2人の人が救助に加わってくれた。

(アピールしておいてよかった。)


倒れているのは、50歳くらいの男性。

細身で日焼けしている。 

足元はビーサン。

頭を打ったかもしれないが、

顔色は悪くない。

汗もさほどかいていないし、

呼吸も穏やかに見える。

その方のスマホに着信が来ている事から、

きっと仕事に行く途中なのだろう。


1人の方が、警察に連絡してくれた。

もう1人の方が、自身が首に巻いていた濡れタオルを、その方の首に当てた。

私は、倒れている方のタオルを拝借し、自分の水筒のお茶で濡らして、その方の首にかけた。


警察を待つ間、

倒れていた方が目を閉じたまま、

ブツブツ話しだした。

支離滅裂!

寝言?

なんか、卑猥な事を言った?

・・・薬とかやってないよね💦


もう1人の方に、

「少し下がりましょう」と声をかけ、

一歩下がり、

引き続き、声をかけ続けた。


すると、倒れていた方が、

はっ」と目を覚ました。

俺、何してるんだ?

えっ?仕事行かなきゃ。

あれ?身体が動かない?


じっとしていてください。たおれていたんですよ。今、救急車が来ますから。


倒れた?救急車?

俺なんか、助からなくていいんだよ。生まれてくるべき人間じゃなかったんだから。


そんなわけないですよ。


本当だよ、言われたんだから。母親に。生まれてこなきゃよかったって。


それは、たまたま出てしまった言葉なんでしょうね。


母親は酒の依存症でさ。いつも酒ばかり飲んでて。嫌だったな。だから、俺は酒が好きだけど。飲みすぎないように、ちゃんと気をつけてるんだよ。今の仕事が好きでさ。


それは、素晴らしいですね。そのようなお母さんを見ていたのに、ご自身は大好きなお酒をセーブできるだなんて。


すごくなんかないですよ。


立派じゃないですか。


そうですか・・・?


そうですよ。ちゃんと好きなお仕事もなさってるいて。立派です。


あっおれ、彼女の夢みてたなぁ


きっと、心配なさってますよ


そんな会話をしていたら、

警察が来てくれた。


倒れた方は、目は閉じたまま。

もう1人の方が、ポカリを差し出すと。


いいんですか?

ありがとうございます。


と、倒れたままゴクゴクと飲まれた。

よかった。

私は、更に手持ちのお茶で首に巻いたタオルを濡らして差し上げた。

その間に着信があったため、ご本人の了解を得て、状況の説明をした。これで、無断欠勤にはならないな。


警察がいらしたので、私はその場を去った。

その方は、名前もしっかり警察に言えていた。

よかった。



職場に向かいながら思った。



人はああいう時に、

心の奥底にあるものを、

無意識に吐き出すんだなぁ、と。

母親に言われた言葉。

彼のトラウマなのだろう。

卑猥に聞こえた言葉は、

彼女に向けた言葉だったのかな?

(恋人としかできない会話)

きっととても大切な彼女なのだろう。


私との会話は、

彼は覚えていないだろう。

あの時

「もっと吐き出していいよ」

と私は思っていた。


そして彼が目覚めた時に

1ミクロンでも

胸のつかえがとれていたとしたら、

いいなぁ。


私ももうろうとした時、

他人様に何を話すんだろ。

なんか、怖いな😂