空いてる車両内に、『電源切れ!!』と怒声が響いた。
その車両だけは電鉄の方針で電源オフ車両とされていて、車掌もマメに出てきて携帯を操作する乗客に対しては丁寧にやめさせている。
ついうっかり。
あるいは、知ったことかと居直り。
どちらでもいいことだが、それについて、乗客のオジイが直接噛み付いたようだ。
遠いので誰が噛まれているのかはわからない。
ただオジイの怒声だけが車両内に響く。
それにしても、『~は電源が切れてない証拠や!』とか、とにかく執拗に大声で叫ぶ。
車掌も気付いて出ようかと様子をうかがう。
こうなると、どっちが迷惑なのやら。
ちいさなちいさな、(もういっぺん言うとこ。)ちいさな『大義』を振りかざして斬り掛かるさまは、まことに見苦しく、その怒声は聞き苦しくもある。
そのとき、ふと思った。
ああ、そうか。
そーゆーことか。
あのオジイ、なにかの憂さ晴らししたのか。
自身の鬱憤を、ちいさな大義にのっけて振り回しただけか。
だけど、そんなことでは何も解決しないのに。
気付いてないやろなぁ、そんなこと。
いつもあんなことばっかり、やっとるのかなぁ。
面白くないことばかりと嘆き苛立ってるから、いつまでも同じことの繰り返しになるのよ。
いつもと同じことをするから、いつも同じことになるのよ。
いつもと違うことをすれば、違う結果があるのよ。
毎日おもしろくないなら、いつもと違うことやればええだけなのよ。
そしたら、自ずと変わってくるのにね。
