後輩に突然「僕、こう見えても実はシャワーじゃなくてちゃんと湯船に浸かるタイプなんですよ」と告白された。キョトンとしている僕を尻目に「やっぱりシャワーだけで済ませてそうに見えます?」と後輩は更に質問を浴びせかけ、戸惑っている僕に対して「いやどっちなんすか!どう見えてんすか!」とテンションのギアを一つ上げて迫ってきた。
「いや、正直どうとも見えてない。湯船に浸かってそうにも、シャワーで済ませてそうにも、別にどっちにも見えてないねん」僕の答えに、後輩は不満な表情を浮かべる。
「冷たいなぁ、僕の事嫌いなんですか?」
「お前が自分の事を好き過ぎるねん。逆にオレが普段、なんかこいつシャワーだけで済ませるタイプっぽいなぁ〜とか、お前見て考えてると思ってるん?」後輩は不思議そうに僕を見つめる。
「考えないんですか?」
「考えるか!そんなん言い出したら、あの杖ついて歩いてるおじいいちゃん家までちゃんとたどり着くかなぁ〜とか、あの女の人中盛り頼んだけど、ここの店の中盛りは他の店の大盛りぐらいあるの分かって注文してんのかなぁ〜とか、色々考えなあかんで」
「いやでも、僕はそこまで他人じゃないですよね?」
「ほんなら、京都に住んでるお姉ちゃん旦那さんと仲良く同じベットで寝てるかなぁ〜とか考えるか?」
「やっぱりお姉ちゃんいるんですね、僕お姉ちゃんいそうだなぁって思ってましたよ!」
「思ってたんかい!何でや」
「なんかぁ、物腰の柔らかさとか、細かい仕草がお姉ちゃんおりそうな感じですよ」
「めちゃくちゃ見てくれてるやん、えー、なんかゴメンな」
「じゃあ、僕どう見えます?」
後輩はまるで、彼女のように僕の正面に座り直して聞いてきた。僕は数秒間じっくりと後輩の顔を見つめ、誠実に答えた。
「普段、自分の家では絶対シャワーしか浴びひんけど、人の家に行った時だけはやたら湯船に浸かりたがりそう」