めっきり寒くなりましたね。
師走の用が気になりつつ
ここしばらく
気分は中世でした。
未消化なので備忘録。
映像美が話題の
14世紀の叙事詩が原作の映画
歴史選択を口実に
子を誘って観ました。
主人公ガウェインは
アーサー王物語では
高潔な騎士として有名なようですが
映画では脚色され
年若く放蕩者で
良き騎士になるよう求められていながらも
何者になるか、なりたいか
まだ悟らず、定まらず、
道半ば。
クリスマスの日
老いたアーサー王の代わりに
緑の騎士の怪しげな誘いに乗り
遊び事とは名ばかりの
リアルな首切りゲームに参加することになります。
行き先がわからないまま
名誉のために旅に出る。
志が我がことになっていなくても
進むしかない。
数々の試練は
詳しくは話しませんが
ときに怪談の趣きがあり
ことの成り行きを
息をのんで魅入ってしまいました。
監督は
グリーンナイトの叙事詩が
1000年の時を越えて
今っぽい物語だと語ります。
中世ものの昔の映画は、
西部劇の中世版のように感じていたけれど
この作品の演出はひと味違って
中世の空気感を纏いつつも
(見たことはありませんが💦)
現代に通じる物語に仕立てています。
いろいろと深読みして、語りたくなりました。
私は、成長譚、あるいは
現代社会のサクセスストーリーを
暗に批判しているように読めて、
そこが面白かったです。
監督の次作はピーターパンのリメイクとのことで、気になります。
『中世騎士物語』
ブルフィンチ作
野上弥生子訳
映画を観るまで
騎士物語のジャンルにあまり興味がなくて。
この本は中世騎士概論のようで
初心者にわかりやすい一冊でした。
なんというか少年漫画を読んでいるような既視感とワクワク感。後続の作品が今も影響を受けている物語群なのですね。
野上弥生子さん翻訳も読みやすかったです。
騎士とは
門地と財力のある家柄の息子が
武器の携帯をゆるされた者で
幼少から
肉切りや給仕など
召使的な仕事をしつつ
舞踏や竪琴を習い、
狩猟、鷹狩、漁猟
角力、馬上槍試合、武芸一般
馬術を優美にこなせるよう
修行を重ね
宮廷内の婦人の一人を心の愛人として決め
愛人に奉仕することが
騎士の光栄であり任務だったと。
うーん、鍛錬の様子はわかるのですけれど
独特の世界観、まだしっくりしません。
アーサー王が魔法にかけられ
魔法を解くために
「婦人が最も望むものは何か」を
東奔西走して答えを探す話があります。
ある謎めいた婦人が
若い騎士との婚姻の約束とひきかえに
教えてくれたのは
「すべての女が自分の意志をもつことだ」
ということ。
婦人もまた魔法にかけられており
騎士との婚姻で魔法が解けてゆきます。
美しき乙女だの、
騎士の愛に破れ自死する乙女といった
受け身な女性の話が多い中
中世の女性の地声が挿し込まれたような物語が
興味深かったです。
ちなみに
アーサー王の悪い魔法が解けたあと
約束の婚姻に名のりをあげたのが
騎士ガウェイン。
ガウェインはいつも礼儀正しく相手を尊重して
実に頼りになる便利な家来でした。
『サー・ガウェインと緑の騎士』
J・R・Rトールキン
山本史郎訳
古英語研究の教授でもあったトールキンが
叙事詩を解釈し
現代語に翻訳した物語。
映画よりも
優秀で勇気があり
「礼節の権化」のガウェイン
にもかかわらず
人間的な弱さと向き合いながら
試練に立ち向かう物語。
原典は中世文学の最高傑作とも言われているそうです。
人物設定や試練の意味など
映画との相違を
あれこれ読み比べるのが楽しかったです。
『忘れられた巨人』
カズオ・イシグロ著
土屋政雄訳
こちらもあらすじに食指がうごかず
読まずにいたのですが
アーサー王亡き後のブリテン島を舞台にし
老戦士ガウェインが登場するというので
カズオ・イシグロが彼を
どんな人物として描くのか興味が湧き手に取りました。
はい。読まなかったことを後悔しました。
ミステリーあり
冒険ありで
寝る間を惜しんで一気読みでした。
物語では
記憶が不確かな老夫婦が登場し
どこに住んでいるかうろ覚えの
息子に会いにいくのだけれど
その命がけの不安な道行きが
『グリーンナイト』の
ガウェインの旅にも重なりました。
今の私はどうやら
“不安を抱えながら辿る先のわからない旅”という設定に響くようですね。
補助線になったのは
『グリーンナイト』の映像世界
(↑ネタバレなく観られる紹介動画です)
(↑ごめんなさい、見直すと結構内容わかりました
)
アーサー王の物語なら
魔法がとければ
問題が解決するけれど
魔法がとけることで
露わになる感情の屈託を抱え
その先をどう生きるかは
主人公と
観客なり読者に委ねられている。
『グリーンナイト』も
『忘れられた巨人』も
次に観て、読むときには違う感想をもちそうです。
いい作品に出会えました。
そして今読んでいるのは
『西洋中世の男と女』
阿部謹也著
歴史研究を「自分のなかを掘る作業」だと捉える阿部先生による、
女性史ではなく、男と女の関係の歴史について。
アメリカにヨーロッパ中世の伝統が息づいている話や中世での不幸の処理の仕方など、導入のお話がどれも好奇心をそそられます。
読む予定の本を脇において
芋づる式に紐といた中世のお話が
意外や現代にいろいろと通じていて
個人の背景には
連綿と続く大きな歴史があることがうっすらと感じられ、大海の前に佇んでいるような心境です。
受験生、陰ながら応援しています。
皆さまが健やかにお過ごしでありますように。






