『戦争は女の顔をしていない』などの
聞き書きでノーベル文学賞を受賞した
スヴェトラーナ・アレクシェーヴィチ。
日本のアレクシェーヴィチと言ったら
らんぼうな例えかもしれませんが
詩人で作家の
故・森崎和江さんの仕事は
そのくらい稀有な価値があるでしょう。
森崎さんの身体感覚をくぐらせて
どっしりと書かれた
聞き書きは
社会の底辺や黙殺された人々の
おおらかでたくましい姿が
ひとくくりにできない
豊穣さをたたえたまま
描かれています。
森崎さんの著作で最も有名なのは
『からゆきさん』でしょうか。
彼女らの出身地と
炭鉱夫達の出身地が重なるという
『まっくら』では
炭鉱で働いた女たちを
重労働に追いやられた
しいたげられた者としてでなく
炭鉱奥深くで働いた女たちの話から
ある意味での自由さ、
勁さ、たくましさをそなえた者の姿を
浮かび上がらせています。
森崎さんが自分の思想に寄せて
美化しているのではないか、
と思いながら読んでも
彼女が綴る
女たちの語りや生き様は
あるいは森崎さん自身の覚悟は
今の私からかけ離れた
過酷な立場のもとで
掴みきれないほどの情念に満ちていて
まずはそのまま
素直に読み
腹に落ちるまで
何度も何度も
咀嚼したくなります。
1984年初版の
森崎さんの自伝エッセイが
先ごろ新版で
再び出版されました。
それぞれの出版社が
今求められている声として
発刊していること。
それに呼応するかのように
森崎和江さんについての
短い番組があるそうです。
初回16日、再放送21日です。
言葉足らずですが
番組情報を知り
とりいそぎしたためました。
私は録画予約をしました。
ご興味ある方、よかったら、ぜひ。
あたふたとして
ゆっくりとお便りできておらず
気にかかっております。
どうか皆さまが健やかにお過ごしでありますよう。