一月は早いですね、もう月半ば。
いまさらですが年末年始に読んでいた本。
読んでいる間
昔なじみの親しい友がそばにいて
彼女の打ち明け話を聞いている気がしていました。
この友がいたら
誰もいらないと思えるような
中毒性のある友。
『すべての月、すべての年』
『掃除婦のための手引書』
ルシア・ベルリン
岸本佐知子 訳

こちら2冊の底本は
『A Manual for Cleaning Women』
合わせて43篇の短編です。
書かれたのはずいぶん昔ですが
作者ルシア・ベルリン(表紙写真)の死後
まとめて出版され
近年ベストセラーとなりました。
どの短編も
ルシア・ベルリンの体験をもとに
書かれていますが
とても一人の人生とは思えないくらいに
起伏にとんでいます。
3回の結婚と離婚
4人の息子をシングルマザーとして育て
高校教師、掃除婦、
電話交換手、看護師として働く
のちに
刑務所などで創作を教え
大学准教授になる
アルコール依存症と
脊柱側彎症に苦労し
がんで亡くなります。
どの短編も無駄のない文章で
読むと
自分が見聞きしているかのように
イメージが喚起され
身体のあらゆる感覚が持っていかれます。
「さあ土曜日だ」という
刑務所での文章クラスの物語では
ルシア・ベルリンと目される先生が
囚人にテーマを出します。
あなたの理想の部屋を書いて、とか
あなたは切り株です、どんな切り株か説明して
とか、痛みについてとか。
囚人は
「親切ヅラしてお可哀想な社会の犠牲者達の心を開かせてやりましょうってつもりだろ」
と突っかかり、
先生は
「あたしはあんたの内面なんて屁とも思っちゃいない。
・・あのね、嘘を書いたつもりが真実を語っていた、ということもあるのよ。
・・・どんなふうに書いたんであれ、ここには真実がこもっている」
これは文学について、そしてルシア・ベルリンの作風に通じる話なのだと思いました。実体験を脚色しても嘘ではなく、そこには真実がある。
ルシア・ベルリンの物語には
内面の吐露はなく
渦中の混沌とした感情からは距離があって
おびやかされずに読めます。
にもかかわらず
まとまらない感情のまま
誰にも代われない一人の孤独と
痛みが伝わってきます。
愛や慈しみが届きます。
語らない行間に
真実が語られていて
そこに読む者の心のなにかと
共鳴する気がします。
もし神がいるなら
こんな何ごとをも受け容れる眼差しで
人の運命を眺めているのではないかと
思いました。
ずいぶんとドライでクールな神ですけれど。
ルシア・ベルリンが生前残した短編は
76篇。
おそらくあと一冊で全作品。
岸本佐知子さんの仕事が待たれます。
そう、
ケイト・ブランシェット主演で
映画化の話があるそうです。
絶対適役!
日本公開してほしい!
ケイト・ブランシェットにも四人のお子さんがいらっしゃるのですね。
ルシア・ベルリンの作品には
簡素な料理のほかに
ガーリック、コリアンダー、ライムで味つけしたアカザエビのグリルとか
チャヨーテのスープとか
アイスをメレンゲでおおって焼くなんて
面白そう。
一度はチャレンジしてみたいな。




