待ち合わせを兼ねて行ってみたら
興味深い展示でした。
『あなたの知らない古代 オホーツク文化』
アイヌ文化以前にあった
オホーツク文化の展示です。
島の突端や海沿いに建てられた住居に
北方民族が南下してきた、最南端の文化。
どこからの民族系統か謎。
(解説談話より)
熊を祀り(アイヌに似ている)
クジラやサメを獲って食べていた。
手のひら大の釣り針や
ヤスの工夫なんかあって
クジラの骨の器もあるけれど
(↑右下写真。気泡あるので汁物には向かない)
どんな船で
どんな漁をしたか、
詳しい方法はわかっていない。
勢力争いなのか矢印のように
文化が混じり、吸収されていく。
それが土器の形で推測される。
オホーツク文化は
アイヌの北方貿易の元となったよう。
ルーツが謎なところ
熊などの意匠が写実的で
現代に通じる感性にすら思えるところ
発掘された土器の形状から
文化が入り交じる様子がわかるところ
そのあたりが印象的な展示でした。
ゴールデンカムイの影響か
本州では珍しい展示のためか
一見地味ながらも、盛況でした。
これから大阪で展覧会がはじまるそうです。
行けなくても、太っ腹な展覧会の解説動画が
ニコニコ生放送のアプリで観られます。
約4時間!
研究者の熱量が伝わります。
↓北の異界
オホーツク文化の関連資料
(未読なのでリンク貼っておきます)
文化の混淆はこうやって
繰り返されてきたのだろう・・
現代にも通じるのかも。
そんなふうに思い、
気になっていた本を手に取りました。
『熱源』川越宗一
ブロニスワフ、ヤヨマネクフ、金田一京助
二葉亭四迷、大隈重信など
実在の人物と史実をもとに
フィクションとして語り直した作品。
直木賞受賞。
資料を調べすぎとの批判もあったようですが、
そのおかげで
当時の人々の躍動を感じながら
歴史を理解しやすくなりました。
他国の政治に翻弄されるポーランドや、
大国に追いやられながらも
自文化に誇りをもって
生き抜こうとする人々の心情を読んでいると、
歴史を読む立ち位置が
日本中心の軸足から、
北や大陸へずれていくような
不思議な感覚を体感できました。
アイヌ、ニブフ、ギリヤークと民族が混じり、
ポーランドやロシア、清、日本・・と
国家の思惑が入り、
それらに巻き込まれながらも
自分の生きる熱源を探し貫く姿は、
かつてオホーツク文化の人々もそうしながら、地を探してここまで来たのかもしれません。
大河ドラマのようなていねいな実写で
観て、聴いてみたいです。
『ク スクップ オルシペ』砂沢クラ
10年前に読んだ本を思い出し、再読。
舞台はかわって北海道内。
時代は『熱源』と重なり、共通の人物も登場します。
アイヌの叙事詩や固有の文化について意識的に残した記録が紛失したものの、高齢になって語られた貴重な記録です。
『熱源』ではアイヌの女性達は凛とした姿で描かれていました。
『ク スクップ オルシペ』では夫を待ち、支え、亡き後の妻、母、女としての数々の苦難が語られます。
多くはアイヌが冷遇され利用、搾取されたことがきっかけとなっているものの、
女であるために
聡明であっても自分で決断させてもらえず、
自由に動けず、
納得いかない判断に
運命を任せなくてはいけない
悔しい出来事に何度も何度もみまわれます。
また、アイヌのための学校を作る側の苦闘が『熱源』で描かれ、『ク スクップ オルシペ』では教育を受ける側の心境や苦労が吐露されています。大義と現実のはざまで、学びたい者が自由に学べない姿が浮き彫りにされます。
砂沢さんの親族にはロシアや和人の婚姻もあり、熊を狩る猛々しさはあっても穏やかな生活がつづいていました。
そのまま、緩やかな民族同士の繋りのなかで誇り高く生きていける道があったなら、もっと違う世界があったはず、と夢を思い描きたくもなりました。
『熱源』は複数の視点からサハリンとアイヌの歴史を描いた意欲作ですが、『ク スクップ オルシペ』はそこには描かれなかった、夫を待ち、子どもとの生活を支えた女性の生き様が描かれています。
同じ時代を別の視点で語る、ある意味では対になる二冊でした。
『サガレン』梯久美子
2020年のノンフィクション本屋大賞ノミネート作品。
前半は「乗り鉄」梯さんの視点から、林芙美子の紀行をたどりつつ過去と現代を行き来しつつのサハリンの鉄道旅。車内やカフェの食べ物などの細かな描写が旅気分を味わえます。
後半は作家研究に秀でた梯さんとともに
妹亡き後の宮沢賢治の樺太への旅をなぞりながら、春と修羅、銀河鉄道の夜などの作品論と信仰と後半生を中心とした宮沢賢治論が論じられます。読み応えがありました。
時代も場所も『熱源』に重なり、川越さん、梯さん共に、奇しくも時期を同じくして同じ人々に焦点をあてていたことに驚かされます。
樺太を訪れた作家、詩人の言葉と
現代に残る
伐採されつくされて寒々しい景観
わずかに残った鉄道の跡
今もある
空、海、草花のすがたに
かつての人々の暮らしや自然が
幻影のように見えるようでした。
試し読みもできます。
乗り鉄、原武史教授の書評も端的です。
↓
『流れのほとり』神沢利子
『サガレン』で美しい本と紹介された、児童作家の神沢利子さんの自伝。小学生の頃に家族でサハリンに移住したときの邂逅です。
澄んだ子どもの観察眼で、樺太日本人の人間模様や一足先に青年になっていく兄姉を見つめます。
地の文の自然の描写が絵本のようです。
布団の衿が白く凍り、
霜が降りたようになる寒さ。
怖くなるほどの満天の星空。
片目をつむって自分の鼻を観察したり
橋から花を落として、反対側にながれる様子を眺めたり。
厳しい自然を畏れつつも
好奇心でいっぱいな
子どもらしい無邪気な姿が描かれます。
一つの章ごとに瀬川康男さんの見事な絵があり、挿絵というより、絵についての物語を読んでいるような気にもなります。
「みっともない」
少女がなにかとたしなめられ続けることで、
だんだんとその言葉の枠の中で生きるようになる閉塞感、
自分らしく生きたいと願う当時の思いも綴られます。
神沢さんは物語を書きながら、
当時はまだ定義づけられていない
もどかしい思いを
言葉にしようとされてきたのだと
初めて知りました。
未来を生きる子どものために、自分のために。
先人のたゆまぬ歩みがあっての今日とも思いました。
どの作品も、
天然痘を防ぐための種痘の認知に奮闘したり、拒んだためにあえなく命を落とす家族がいたり、
次々に結核にかかり、思う道を選べない若者の姿が描かれています。
コロナの変異に怯え警戒する今だからこそ、よけいに当時の人々の気持ちに共感しながら読めるのかもしれません。
どれも一昔前を描く作品でありながら、どこかしら当時の空気が今に通じるものも感じつつ読みました。
先日の雪から一転
春のような陽気、そよ風も心地よいお散歩日和でした。
皆さまが健やかに過ごされていますように。













