初秋に出かけたところ。
どなたもどうかお入りください。
決してご遠慮はありません
『注文の多い料理店』ですか?
いえいえ、こちらは「文房堂」。
文房具と画材のお店。
手書きのポップで紹介される
魅惑的な文房具の品揃えに
買い物の理由を
探してしまうような心持ちに。
いけないいけない、
4階のギャラリーに用があるのだった。
「自然の生命を描く12人展」
『雨の動物園』 舟崎克彦 (作、絵)
ある生物学者が
その道を志すきっかけになった本とのことで、興味をひかれ手に取りました。
絵本のノーベル賞ともいわれる
国際アンデルセン賞の
優良作品賞も受賞されています。
終戦の年に生まれた作者は
小動物を
友や家族のように思い
庭に禽舎を作ってもらうほど。
少年は野鳥の飼育にのめりこみ、
鳥博士と呼ばれるほどになっていた
その愛情にみちたまなざしで、
さまざまな小動物との出会い、交わり、
そして別れを、細やかに描く。
7歳で母親をうしなった少年の心が
映し出された自伝的作品。
(裏表紙より)
16編の小さな作品には
コウモリ
カルガモ
エナガ など
それぞれに生き物の名の表題があり
小学生の時分の
ときには亡き母の面影を
それらの小動物に重ねる
作者の心象風景が
絵本の物語のようにつづられます。
ヒキガエルは伯爵で
ヤモリは哲学者
小さな恐竜のトカゲが
しっぽを残して逃げた姿をみて
こんなふうに
身のまわりのことに
あんまりわずらわされないで
生きているものは、
どんな時代にもいちばんつよい。
中略
太古の、あの地ひびきをたてて
大地をかけずりまわづていた連中は、
たしかに堂々としてはいたかもしれないが、
敵にしっぽをくれて逃げだす知恵も
やみにまぎれて生きのびる方法も
知らなかった。
トンネルの掘り違いでか
日にあたり死んだ
モグラのからだをみて
少なくともそこには
生きることがこれ以上できなくなって
せっぱつまってのたれ死にしたような
暗さはない
言外に戦後の東京で
幼心に見聞きした
時代のにおいをかんじさせます。
鳥かごの鳥たちは
コマドリはおばあちゃん
ウソは無口な父親
マヒワはませた弟
メジロはいとこ
でも、
かごの鳥のなかに母親はいない
猟鳥で安く手にいれた
カルガモの雛が
野鳥なのに独立心なく
作者を母のように慕って
一人寝の夜を寂しがる
まるで昔の自分のようだと
いとおしく思いながら
かいがいしく世話をする
そして突然に訪れる別れ
気がつけばいつも残されているのは自分だけだ
世界に唯一の研究をしようと
もくろみ飼育する話。
思いがけない光景に
観察も記録も、どこかに消し飛んでしまう。
人よりも
小動物にいれこむ少年を心配して
いささか乱暴に気づかう兄二人の
不器用なかかわりの
男くささに
昭和の薫りを感じもしました。
鳥よりも人に興味が芽生えはじめる頃
生き物たちののどかな自然が
高度経済成長の勢いに
壊されはじめます。
同時代に生きたわけではないけれど
読んでいると
大人の私よりも
地面がずっと近くて
土くれのにおいや
草いきれ
見つけた小さな生命を
懸命に守ろうとした
幼い頃の景色がよみがえりました。











