本屋さんから小冊子をもらって帰り、
文庫リストを眺めるのは
ちょっとした夏の風物詩かもしれませんね。
このロボットのキャラクターは、博報堂のクリエイターの作品だそう。
100%ORANGEのYonda!くんが好きだったから、しばらくさみしかったけれど、キュンタにも徐々に馴染んできました。
「本があれば いつだって どこへだって 行けるんだ」
ホントだなぁ。
リストをみてみると、
懐かしい本もあって、
息子に読んでほしい本や、
私が未読で興味をそそられる本がいく冊も。
「実はわたし、138億年前に生まれたんだ」
それは、はるか彼方からの〈贈り物〉。思いがけない科学の知が、孤独に閉じた心を温めて・・・
新刊の文庫に伊与原新さんの『月まで三キロ』が仲間入りして嬉しい。
雨読の紹介をきっかけに読んだのですが、
好きです、このシリーズ(シリーズではないけど、この2冊は似た系統)。
同じ方の装丁なのかな、静かで透きとおった空気がみえるような表紙です。
『月まで三キロ』
目次
月まで三キロ
星六花
アンモナイトの探し方
天王寺ハイエイタス
エイリアンの食堂
山を刻む
『八月の銀の雪』
目次
八月の銀の雪
海へ還る日
アルノーと檸檬
玻璃を拾う
十万年の西風
どれも独立したお話ですが、
伊予原さん、東大大学院の博士課程で地球惑星科学を専攻されていただけあって、
どちらの本の末尾にも参考文献が載っている、科学的な考証もたしかな短編集です。
孤独をかかえ、
生きることに疲れた主人公が、
科学の奥深さに触れて
少し力が湧いてくる
そんな優しい気持ちになれるお話が多くて、
じんとくる読後感でした。
短編の感想は、
物語の顛末も予想できてしまいそうなので、 やめて、周辺の印象を。
特に心に残った作品は、
海へ還る日
独りで育児するシングルマザーのお話。
この鯨の絵を描かれた
国立科学博物館勤務の方から
インスピレーションを得たそうです。
その方の、
本編とは直接かかわらない
実話のエピソードにも心惹かれました。
玻璃を拾う
とあるトラブルをきっかけに知る
ひそやかな美の世界。
ワクワクが半減するので、
この先は飛ばしてくだい。
珪藻アートがでてくるお話です。
福音館書店サイトより
多摩六都科学館サイトより
綺麗
物語を読むうちに、登場人物の憤りに、そりゃそうだ、とうなずいてしまう。
珪藻アート、
はじめは知らなかったので
どんなものなのかと調べてみたら、
あまりの美しさに息をのんでしまいました。
近くで観察できる機会があったら、是非、顕微鏡をのぞいてみたいです。
大切な方との、おいしい小豆あんのエピソードも描かれています。
最近なにかと、
すごーく美味しい小豆あんを
丁寧に作る秘技をそなえていること、
あるいは、
硬い小豆あんを
作ってしまう粗忽さが
人物造形にかかかわるお話を
読んでいる気がします。
わかりやすいモチーフなのかな?
と、思ってしまうほど。
私が最後に作ったあんは、
レシピどおりに作ったつもりでも、
皮の硬さが残って、
それだけで
おいしさとやる気が半減しました・・
登場人物的には、粗忽な人ね
多分、灰汁をとりすぎて、煮る時間がすこしばかり少なかったから。
たしかに、
気に入った和菓子屋さんのことを
評するのに、
“あの店はあんが美味しい"
って聞きます。
気軽に口にできる
シンプルなお菓子でありながら、
技の奥深さを感じさせるに
格好の素材なのでしょう。
夏に、宇治金時のためにリベンジしてあんを炊くか?私?
そう思わせるくらい、
物語のなかでは小豆あんが
優しさと生命力に満ちた食べ物に
描かれていました。
アルノーと檸檬
シートン動物記「伝書鳩アルノー」のエピソードもあります。
エピソードを読んで思い出しました。
小学生の頃、
ファーブル昆虫記と
シートン動物記と
科学のアルバムを
全巻読破する勢いで読む男子っていたな〜って。
今読んだら、当時と印象が変わるのかしら。
ある伝書鳩とその鳥に関わる人々のお話。
鳩が語るわけでなく、磁気嵐に翻弄される伝書鳩の生き様に切なくなりました。
伊与原さんの二冊は、派生して興味が湧く分野がいろいろとあり、調べた分野と本編との行き来もまた面白いです。
一つの分野に傾倒する人のひたむきな思いにふれられて、その分野の魅力に気づかせてくれます。
自然の神秘を垣間見て、この世界、なかなか悪くないじゃない?ておおらかな気持ちにもなります。
ただ、研究を続けたくても、
予算がつかなかったり、
不遇な立場で研究を続けるしかない人物が
何人も登場して、
今の日本の学術研究の現実が描かれてもいます。
それ自体は主題ではないけれど、
そこで物語の切なさや悲哀をうんでもいて。
時代を描いてはいるけれど、
心情としては是とはしたくなくて、
素直に感動に浸れない気持ちにもなりました。
書評などを読んでいて、こちらのインタビュー記事が印象的でした。
国立極地研究所の片岡龍峰さんとの対談です。
片岡さんも、『オーロラ!』で現職に就くまで研究を続けるための紆余曲折を書かれています。
この本、オーロラの仕組みの箇所は私には身に余りました。
オーロラが発生する要件には磁気嵐が関係していて、
様々な機器に頼るようになった現代の生活が
磁気嵐にさらされたら
予測できない規模の危機的状況に陥るそうです。
磁気嵐のおそろしさを身近にイメージしやすくなり、宇宙兄弟もより臨場感をもって読めました。
気温マイナス40℃で、
撮影に夢中になって気がついたら
小指がシャーベットのようになっていた
なんて、片岡さんのオーロラ観測にかける情熱と行動力は半端ないです。
宇宙飛行士にも応募されたそうです。
宇宙兄弟の世界って、理系分野には思いの外、近いのだと胸おどりました。
そんな動画を見ているうちに、
空一面のオーロラを眺められたら、
世界観が変わるのかもな・・・
なんて気になります。
同じ片岡さんの著作で、
特に面白かったのがこちら、
『日本に現れたオーロラの謎』
滅多に起きない
巨大磁気嵐の記録を辿るために
古文書を紐解き、
その記述から
磁気嵐の規模や
発生メカニズムを研究するという、
文系と理系の枠を越えた
エキサイティングなプロジェクトのレポートです。
特に注目されるのが、
藤原定家が自身の日記『明月記』に書き残した赤気。
日本書紀の赤気。
古い大地震のデータも、
古典籍や地層から紐解かれていますが、
オーロラや磁気嵐の記録は更にレアなもの。
漢文の短い文に表された現象を、
実際見えたであろう光景におこして、
同時代の他の記録からみえる光景などと照らし合わせながら、それぞれの文献の信憑性や正確性を確かめていくさまは、さながらトレジャーハンターの謎解きのようでした。
一冊の本から心惹かれて他の本へと派生して、思いがけない分野を手に取るとき、
ふと、
しがない自分が
これを読む意味ってあるのかな、
という思いが頭をかすめます。
「本の数だけ待っている世界があるんだよ」
キュンタに語りかけるおじいさんのことば。
そうなのかも。
あるいは、
三浦しをんさんの『愛なき世界』で
植物に恋するように研究に邁進する本村さんに
料理人の藤丸が
惹かれて
恋するうちに
料理のことばで植物や研究の魅力を
咀嚼し
その魅力に気づいていったように
私も本の世界を通じて
(お邪魔するブログ記事も等しく同じで、)
驚いたり、心動かされるうちに
知らない世界に足をふみ入れていたり、
未知の感情に出会ったり、
忘れていた感情を思い出したり。
そんな揺れ動く自分に
出会っているのかもしれません。
・・・
まだ整理はつかないけれど。
移動がためらわれる今年の夏休みは
家事をうんと手抜きして
ゆっくり本や映画が描く世界に浸りたいな。


















