聴いていた音楽を止めたら
ふと、どこからか怪しげな
呪文のようなお経のような呪いの言葉のような
そんな変な声が聞こえてきた。
おかしい…
テレビは消してある。
音源などないはずだ。
どこから聞こえてくるのか。
私は恐る恐る
その呪文が聞こえてくる場所を探した。
洗面所だった。
ドアを少し開けた。
そこにいたのは娘で
左手で髪の毛にドライヤーかけながら
右手に試験勉強のためノートを持ち
必死に暗記しているところだった。
怪しげな呪文に聞こえたのは
娘がドライヤーの轟音の中で唱えていた暗記文のようだ。
驚かせやがって。
背後にたたずむ私に気づいた娘が
突然振り返って悲鳴をあげた。
お母さん!
驚かせないでよー!
びっくりしたよー!
怖いよー!
お互い様だ。