土曜日、バスを待っている時に珍しい物をみた

白いバンがすーと車をつけ、その中から二人のペンキだらけの
服を着た青年が降りて来た
窓はティントがしてありハッキリ見えないが、
あと2、3人乗っているようだ
彼らは全員Black Americanで、
中に居る子は、同僚の話にも
新聞から目を離さず軽く相づちするだけ
とても心はずむような雰囲気ではない
私は何が行われるのか気になった

降りて来た男はブラウンのペンキを持ち、
おもむろに私の後ろにあった3つのベンチに塗りだしたのだ
なぜか

よく見ると、ベンチには無数のgrafittiがある
そう、彼らは時々こうして、街のやんちゃ坊主が残して行く
落書きを消しているのだ
なにが私の心をしめつけたか

彼らの正体である
降りて来た青年のジーンズからはトランクスが半分覗いている
とうていプロフェッショナルな仕事人には見えない
歳も二十歳にとどくがどうかというところ
車にははっきり、city service workと書いてある
予想ではあるが、彼らは、少年院の青年ではないか
彼らは週末、サービスワークとして外で仕事しているのだ
彼らがこういう風に働いているのを聞いた事はあるが
目撃したのは初めてだった

むしゃくしゃして、つい奇麗なベンチに落書きしてしまう
青少年たちがいる
その落書きを消す仕事を与えられた少年院の青年が居る
なにか、悲しいサイクルを見ているようで
私はなんともいえない気持ちで彼らから離れた

彼らは仕事を終えた後、
ボールペンで"wet paint"
と書かれた青い紙をベンチの上に置き、
無言でどこかに向かって行った

作業中に開けっ放しにしてあるバンのドア
中にいる子はいつだって出られる
しかし、なにか鉄の扉のようなものが私には見えた
彼らがあの死んだような魚の目をしなくなる日は来るのか