浅田次郎さんの小説『王妃の館』上・下巻を読みました。

浅田さんの小説は、日経に連載されていた『黒書院の六兵衛』以来でした。今まで、浅田さんの小説は、『壬生義士伝』、『蒼穹の昴』、『プリズンホテル』、『地下鉄に乗って』、『見知らぬ妻へ』、『天国までの100マイル』、『鉄道員』を読んでいますが、どの本も良くて、ハズレはありませんでした。(映画『鉄道員』の舞台となったJR北海道の根室本線幾寅駅まで、わざわざ行ったくらい、私は浅田次郎さんの小説が好きです♪)

『王妃の館』は、随所にちりばめられたユーモアや人間描写が見事で、笑いあり、涙ありで、あっという間に読み終わりました。さすが、浅田次郎さん♪
個人的には、お笑いの要素が強く、泣きの場面もたくさんあった『プリズンホテル』と似ているように思いました。

今回は今年のゴールデンウィークに『王妃の館』が映画化されて公開されるということで、映画の予習として読んでみました。

メトロの駅で見かけた映画『王妃の館』の看板です♪
右京先生役の水谷さんが素敵すぎます。大人気ドラマ『相棒』シリーズの杉下右京と同じ名前の天才売れっ子作家・北白川右京先生役です。オカッパ頭が似合いますね♪

※ここからネタバレがあるので、内容を知りたくない方はパスしてくださいね



パリのヴォージュ広場にある、ルイ14世が寵姫のために建てたという最高級のホテル「王妃の館(シャトー・ドウ・ラ・レーヌ)」。
倒産寸前の旅行会社が起死回生策として、この「王妃の館」に滞在するツアー、パリ10日間149万8000円の超豪華「光(ポジ)ツアー」と、19万8000円の格安「影(ネガ)ツアー」を同時に催行しようと企画します。ツアーの「二重売り」によって月末の手形決済を切り抜けようとするんです。

両ツアーの参加者は、一癖も二癖もある個性的なお客さんばかり。「光(ポジ)ツアー」と「影(ネガ)ツアー」が昼と夜とで部屋を共有するという無理な状況に、ツアー客が引き起こすドタバタ騒ぎとニアミスで、ツアーの二重売り計画は次々と危機にさらされていきます。

「光(ポジ)」ツアー参加者は、成金の金沢貫一と愛人のミチル、小さな町工場が破産寸前で心中目的で旅行に参加した下田夫婦、上司と不倫の果てにリストラされたOLの桜井香、そして、ベストセラー作家の北白川右京先生。右京先生に付いてきた編集者の早見リツ子。

「影(ネガ)」のツアー参加者は、脳みそ筋肉でクソ真面目な元警察官・近藤誠、突然消えたフランス人恋人を探しにパリまで来たオカマのクレヨン、カード詐欺師の丹野夫婦、下田夫妻の夜間学校の頃の恩師である岩波夫婦、右京先生と早見リツ子を追ってきた他社編集者の谷文弥と香取良夫。

これだけ癖のある人物が勢揃いしているのだから、何も起こらないわけがないのです(笑)。
このメンバーがドタバタ騒ぎをしている間に、右京先生には神が降りてきて書き下ろす小説『ヴェルサイユの百合』(笑)改め『王妃の館』…ルイ14世が登場するヴェルサイユと、ルイ14世が心から愛していた王妃のために建てられた館が舞台となった小説も進んでいきます。ルーヴル美術館やヴェルサイユ宮殿をツアーする旅行とルイ14世のお話しが交互に語られて、それぞれの物語が少しずつ絡み合いながら進行していくんです。

ツアーの「二重売り」がバレるんじゃないか?とハラハラドキドキしながら、右京先生の描くルイ14世の物語の続きが知りたくて、あっという間に読み終わっていました。

気になっていた石丸さんが演じるルイ14世ですが…。
ルイ14世は人間に許されうる最高の美貌と叡智をあわせ持った、完全なる男性。
ルイ14世は、心の闇を人々に気取られぬよう、明るい人格を装っているけれど、世界一孤独な人物。

そのルイ14世には、心から愛する王妃と王子がいるのですが、離れて暮らしているのですよ。
“朕はルイという一人の男である前に、国家であった。フランス国民が太陽と仰ぐ、ブルボンの王であった。”という言葉があるように、ルイ14世は、国家の平安のためには、愛する王妃と王子をヴェルサイユから追うことのほかに、選ぶべき道はなかったのです(涙)。(国も時代も違うけれど、ミュージカル『レディ・ベス』のよう、国を背負った人間の宿命のようなものを感じました。)
ルイ14世は太陽、王妃は月のように気高く美しく…でも、太陽と月は一緒にはなれないのですよね。

最初に、石丸さんがこの映画にご出演することを知った時には驚きましたが、ミュージカルで外国人を何役も演じられてきた石丸さんだからこそ、右京先生が描く小説の中のルイ14世にピッタリなのではないか?と思いました。

看板からルイ14世&王妃&王子のアップ♪
ウィッグが盛り盛りで凄いのですが、ルイ14世の時代は、かつらブームで華麗なかつらはバロック時代の王権の象徴だったらしいですよ♪

また、王子であるプティ・ルイは、足が不自由なのですが、王子は賢く、優しく、健気なのです。最後に父であるルイ14世と対面を果たし、まだ幼い7歳の王子の決断に涙、涙…となりました。(プティ・ルイ役は、石丸さんと『エリザベート』で共演した山田瑛瑠くんが演じるそうなので楽しみです♪)

ツアー客のメンバーも、一癖も二癖もありましたが、みんな良い方ばかりでした。
それぞれ苦悩を背負って生きているわけですが、ハンディを背負っても前向きに、懸命に生きていくことができる人の強さをプティ・ルイやツアーに参加した人達から感じることができました。(プティ・ルイが、自分の弱さや不幸を動かぬ足のせいにするのはよそう…と思う場面に、とても感銘を受けました。)

ツアコンの朝霧玲子が「幸福と不幸は神様がコントロールしているわけじゃないわ。人間が選んでいるわけでもない。ひとりひとりが、幸か不幸かを勝手に決めているだけ。」と言うのですが、その通りだと思います。小説の中で、この言葉が一番印象に残りました。(成金の金沢貫一の愛人ミチルやオカマのクレヨンの言葉にも、感動した言葉がありました。)
苦悩することを不幸と思ってしまったらおしまいのような気がします。

もし、石丸さんがこの映画にご出演されなかったら、この小説を読まなかったかもしれません。ご縁があって読むことができて良かったです♪

お・ま・け♪
映画『王妃の館』予告

予告の途中で流れている曲が、『レ・ミゼラブル』の「民衆の歌」によく似ているのは気のせいでしょうか♪
小説を読んで、映画の公開が待ち遠しくなりました。とても楽しみです♪