本日は、東急シアターオーブで公演中の『ウォー・ホース ~戦火の馬~』を観劇してきました。

第1次世界大戦下のイギリスを舞台に、少年アルバートと馬のジョーイの友情を描いたマイケル・モーパーゴの同名児童小説の舞台版。

2011年のトニー賞で5部門を受賞した作品。(司会のニールが主役の馬・ジョーイにまたがって登場していましたよね♪)
あのスピルバーグ監督も感動し、映画化した「戦火の馬」の元ネタとなった舞台ということで、とても楽しみにしていました。
実際に今日観劇してみて、想像以上の迫力と馬のリアルな動きに圧倒させられました。

※以下、あらすじやストーリーに触れています。ネタバレもあるので、これからご覧になる方は注意してくださいね。

馬のジョーイは、最初に仔馬として登場していました。
父が競り落としてきた仔馬に、アルバートはジョーイと名づけ、餌を与え・・・アルバートとジョーイの距離が少しずつ近づいていくシーンが素敵でした。やがてアルバートが口笛を吹くと、ジョーイがアルバートの元へ駆けつけてくるようにまでなります。

絆が深まっていく中、ジョーイはフランス軍に軍馬として売られてしまい、ジョーイを探すために、アルバートは戦地に赴き、苦難の末に再会を果たすという感動のストーリーでした。

馬のパペットは、1頭につき3人の役者さんによって演じられて、命が吹き込まれていました。これがビックリするほどリアルで本物の馬に見えました。本物の馬にしか見えなかったという表現の方が正しいです。馬の声、馬の細かい動き・・・。役者さんが傍にいるのに、馬しか見えなくなり、パペットだということを忘れて、ストーリーの世界にどっぷり浸かっていました。素晴らしかったです♪(ウォーホースの番宣で、石丸幹二さんが「本物の馬よりも馬らしかった」という表現をされていましたが、まさにその表現がピッタリと当て嵌まりました。)

ジョーイは、最初はフランス軍の軍馬として扱われながら、戦場でドイツ軍に捉えられ・・・過酷な戦場の中、力強く生き延びます。
人は国籍があるけれど、馬に国籍がないのは当たり前で、敵とか味方とか・・・そんなものは関係なく、戦場を生き抜いていくわけです。その姿を見ると、何の罪もない馬がどれくらい戦争の犠牲になったことか?人間の愚かさを強く感じさせていました。

戦場で出会った、同じ軍馬のトップソーンが亡くなるシーンで・・・ジョーイと出会ったばかりの頃はお互い反発もしていたけれど、ずっと一緒にいたトップソーンが倒れて、それを見たジョーイがトップソーンに近づくシーンで胸がきゅんとなりました。(このシーンでトップソーンを操っていた俳優さんたちが、すっと身体から抜けていき・・・トップソーンの魂が天に昇っていったことがわかりました。素晴らしい表現でした。)

また戦場のシーンが凄かった!
セットはシンプルなんですけど、バックに流れる映像と、ピストルや大砲などの効果音の使い方が上手く、大迫力の戦場シーンとなっていました。その迫力が素晴らしすぎて、恐怖を感じたほどです。
不思議な感覚だったんですけど、舞台なのに映画を観ているような・・・でも、映画よりリアルに恐怖が伝わってくる感じでした。
戦争を扱った舞台で、ここまで恐怖を身近に感じた舞台は初めてでした。

ジョーイに会うために戦場に赴いたアルバートにも過酷な運命が待っていて・・・最後にジョーイとアルバートが会えて終わりになるんだろうな~ということは予想していましたが、本当に会えるんだろうか?と思わせるほどの命の危険にさらされ、戦場のシーンがあまりにもリアルだったこともあり、胸が苦しくなったシーンがたくさんありました。

最後にジョーイとアルバートが会えたのは、本当に奇跡的という感じで、涙、涙、涙・・・となりました。(ジョーイがまだ仔馬で、アルバートと出会った時のシーンが勝手に回想されるような・・・そんな感動の再会でした。)

一番印象に残ったシーンは、ジョーイが戦場に張り巡らされた有刺鉄線に絡まって動けなくなってしまった時、イギリスとドイツの両軍が一時戦いを止め、ジョーイを助けたシーンでした。
このシーンで、「言葉が通じれば戦争にならなかったかもしれない」という台詞があって、握手したイギリス兵とドイツ兵に胸が熱くなりました。

その他にも、この舞台はイギリスが舞台でありながら、イギリス兵の気持ちをアルバートが表現し、敵対するドイツ兵の気持ちを、戦場でジョーイとトップソーンを助けて2頭の世話をしたドイツ兵のフリードリヒが表現していたり・・・。フリードリヒは、また敵対するフランスの少女エミリーと出会ったり・・・。どの国の味方というのではなく、国に関係なく、一人の人間のそれぞれの生き方や気持ちが表現されていて、そこがこの舞台の素晴らしいところではないかな~と感じました。

国と国とが敵対していても、個人の人と人だったらわかりあえることってあると思うんです。国と国に境があるだけで、人と人との関係に境がある必要はないと思うんです。そのことを、国籍をもたない馬のジョーイが伝えてくれていたように思います。

今まで動物を擬人化して表現した舞台はいくつも観てきましたが、馬が馬のままで、それでいて、その姿から戦争の悲惨さや人間の愚かさを悟るような作品は初めてだったので、衝撃的でした。大変感銘を受けました。
観に行けて本当に良かったと心から思える舞台でした♪