先週金曜日に、マイケル・サンデル 究極の選択『ビンラディン殺害に正義はあるか』が放送されました。毎回、興味深い内容で議論が行われていますが、今回は特に難問だったように思います。


9・11同時多発テロから、今年で10年が経ちましたが、あのテロから、憎しみと暴力の連鎖は続き、罪の無い人を一瞬に死に追いやるテロが世界各地で起こるようになりました。


・・・ということで、今回の議論のテーマは、「テロ」。

世界が抱える問題!テロに立ち向かう時に、避けて通ることのできない究極の選択でした。

議論したテーマは、以下の4つでした。


1.アメリカ政府によるオサマ・ビンラディンの殺害は正当化されるのか?(今年5月に、アメリカがアルカイダ指導者・ビンラディンを殺害した時、オバマ大統領は、この殺害に対し、「正義は行われました」と発言しました。その時の、緊急記者会見の映像が流れていました。本当に、この殺害は正義といえるのか?)


2.タリバンが潜伏しているという場所に、アメリカ軍の部隊が偵察に行き、そこでヤギ飼いに出会った。敵への通報を防ぐために、罪のない民間人を殺してもいいのか?(アメリカ軍の4人の部隊が、アフガニスタンで実際に体験した話が元になっていました。)


3.自爆テロを目的としてハイジャックされた旅客機を、無実の乗客を犠牲にして撃墜することは許されるのか?


4.大量殺人を行うテロリストを処刑することは、道徳的に認められるのか?(法の支配の下での殺人、死刑の問題でした。現在、死刑廃止国は、139カ国。死刑存在国は、58カ国なのだそうです。死刑廃止国で、もしテロが起こったら、懲役○年で罪が許されてしまうことになる・・・という話も出てきていました。)


以上の4つの難問について、アメリカ(ハーバード大学の学生)、日本の学生、中国(復旦大学)の各国8名が、インターネット中継を通して、同時に議論を行いました。


サンデル教授は、いつもの通り、ご自分の考えはお話されませんでしたが、最後にこのようにまとめていました。


数の倫理、結果の倫理・・・。

時として、決断を迫られるリーダーには、とりわけ結果が求められるが・・・。

道徳にとって、数は重要ではないということ!現実に、多くの命を救うことは大切だけれど、それだけが道徳ではないということ!それ以外に何があるのか?それは、人間の尊厳であるということ!

人の命を奪うことに対する反対意見の中には、多くの命を救うことより、大切な人間の尊厳という原則があるということ!それは、人間を尊重するための根本的な原則であるということ!


数を超えたもの!人間の尊厳を超えたもの!それは、誰が何にふさわしいのか?誰がどのような罰に値するのか?テロリズムや殺人・・・誰かを救うために、他の命を犠牲にするということは、とても残酷なこと・・・。

けれども、これは人間の道徳的意味を考える上で、避けては通れない問題であるということ!


哲学と倫理、生と死、人の尊厳・・・答えの出ない難しい問題ばかりでした。

今回もサンデル教授から、究極の宿題を出されました。いつも、本当に難しい!


AとBのどちらが正しいのか?ではないんですよね。答えは複数あると思いますし、どの意見が正しいというわけではないんだと思います。国によって、文化や宗教、価値観等にも違いがあるので、そこを乗り越えて意見を述べることって、すごく大切なことのように思いました。テロは世界で問題になっていることなので、今回のように、グローバルな視点で、色んな国の方の意見を聴くことができて、とても良かったと思います。(番組を見ながら、私も真剣に考えました。答えは出ないんですよ。それが、答えだと思うんですけどね。でも、議論することで色んな方の意見が聴けて、視野が広がり、自分自身の中でも、また別の考えが生まれたりするので、とてもためになりました。)

また、宿題が増えてしまったな~。(笑)