昨日のプレミアム8<文化・芸術>で、シリーズ巨匠たちの肖像「ドガ 踊り子の画家」が放送されました。


先日、ボストン美術館展で『競走馬の馬車』、オルセー美術館展では『階段を上がる踊り子』を鑑賞してきたばかりのドガ・・・。


踊り子の画家と呼ばれるエドガー・ドガ。

ドガは生涯、独身を貫いた画家でした。そして、生涯をかけてバレリーナの姿を追い求め、描き続けた画家でした。なぜ、ドガが生涯をかけてバレリーナを描き続けたのか?

物議をかもした彫刻作品の秘密を解き明かしながら、ドガの思いを浮き彫りにする・・・という内容でした。


ドガは、パリで裕福な銀行家であった一家に生まれました。パリ生まれのパリ育ち。

当時としては珍しく、父親が画家になることを後押ししてくれ、名門エコール・デ・ボサールに入学し、美術の勉強をします。パリのルーブル美術館に通って、もうこれ以上、デッサンする作品はないというくらい、描き続けたそうです。

恵まれた境遇に育ち・・・。美術界のエリートコースで、美術を学ぶことができた人だったそうです。


当時、パリ・オペラ座でバレエを観劇できるのは、裕福な人たちだけだったのだそうです。ドガは、裕福な家に生まれたため、惜しげもなくオペラ座に通い続けることができたのだそうです。


順風満帆だったドガの人生でしたが・・・。

銀行家だった父親が、莫大な借金をかかえ、自殺をしてこの世を去ってしまいます。長男であったドガは、返済のために家や財産を売却したりするなど、大変な苦労を抱えることになってしまいます。

人生の儚さを感じたドガは、この頃から表舞台だけでなく、裏舞台も描くようになったそうです。


さらに悲劇が襲います。ドガは、30代半ばから、画家としては致命傷である病に苦しむことになります。

網膜の病を患い、ドガの視力は年とともに衰えていき、どんどん光を失っていきました・・・。

ドガは、病を患ってから、パステルを使い描き始めました。パステルの色は鮮やかで、衰えた視力でも識別しやすかったそうです。当時、パステルは1000色以上も色の種類があったそうです!ドガは、緑のパステルがお気に入りだったそうですよ♪

パステルによって、バレエの衣装、舞台を照らす光も細やかな線によって表現されました。


印象派の画家たちが、屋外の太陽の光を描いていく中、視力の衰えていったドガは、屋内の人工的な光を追い求めて描いていった画家です。

ドガは、写真技術にも関心をもち、ドガの撮影した写真は、陰影が素晴らしく表現された作品だったそうです。


そして、晩年・・・。目が闇に覆われても、銅像を作り続けたドガ・・・。

享年83歳・・・。独身を貫いたドガは、一人静かに亡くなっていったそうです。


ドガがバレリーナを描いていた時代、バレリーナは、裕福なパトロンに養ってもらい、援助なしに生きていくことは出来なかったのだそうです。バレエの技術より、求められていたのは美貌だったのだそうです。今とは全く違っていたんですよね・・・。悲しい事です。

ドガは、華やかな舞台上のバレリーナから・・・。稽古場や、着替えをしている、普段誰も目にすることがないバレリーナの姿も沢山描きました。舞台の上で完璧な動きが求められるバレリーナの裏の姿・・・。ぐったり肩を落としていたりする姿・・・。


華やかな舞台の裏には、暗い影・・・世間から冷たい目で見られていたバレリーナたちが向き合う厳しい現実・・・それを作品に描いていました。

ドガは、そんなバレリーナたちを助けるために多くの支援をされた方だったそうですよ・・・。知りませんでした。引退したバレリーナに寄付金を募ってあげたりしていたそうです。昨日の放送を見ていて、ドガは、とても優しい人だったんだろうな・・・と思いました。

Going my way ~どこまでも続く道~-ドガ

↑は、ドガの代表作として有名な『エトワール』。(ジャンプして、つま先立ちから着地した瞬間の様子・・・。どれだけ、バレエの舞台を観に行っていたんだろうと思うくらい、ドガの観察力は素晴らしいですよね・・・。躍動感があります。絵の中のバレリーナが踊りそうだもの・・・。昨日の放送で、パリ在住のバレエ講師が、ドガはバレエを踊れたのではないか?と思う・・・ドガのバレリーナの描き方は素晴らしいと絶賛していました。)


この絵に黒服の男性が描かれていますが、これがパトロンです。脇には出番を待つバレリーナの姿・・・。華やかで綺麗な世界だけでなく、厳しい現実の世界も描いているところが、やはりドガの作品の深いところだと思います。


ドガが描いたバレリーナは、後世に名前を残すことのないバレリーナたちが多かったそうです。

ドガが、生涯で唯一発表した彫刻「14歳の小さな踊り子」のモデルは、マリーという貧困の家庭に生まれた少女だったそうです。(美術関係者のみなさんが、莫大な資料から、時間をかけて、このモデルの少女を探し出したのだそうです。)この少女も15歳の時に、バレエ団を解雇されているそうです・・・。


彫刻「14歳の小さな踊り子」は、発表された途端に、世間から批判を浴びてしまったそうです。(私は、この作品が好きです。彫刻の少女が、バレエの衣装を身につけているんですよ。)

ドガは、この彫刻を、二度と人目にふれることがないように、大切にケースに入れて自宅に保管していたそうです。

亡くなってから、ドガの部屋からは、150体も銅像が見つかったのだそうです。光を失っても、ドガは彫刻作品を通して表現し続けた人でした。

ドガが、どれくらいバレエやバレリーナを愛していたか・・・強く感じた番組でした。


ちょっと先のことですが・・・。今年の秋(2010年9月18日(土)~2010年12月31日(金))、『ドガ展』(横浜美術館)が開催されます。↑の『エトワール』が、初来日します♪オルセー美術館の協力を得て、踊り子や裸婦を描いたパステル画、油彩画の代表作から晩年の彫刻まで約100点が展示されるということなので、今から楽しみです♪