昨日のNHK追跡!AtoZ』は、「虐待の傷を超えて」でした。


今、児童虐待のニュースが後を絶ちません。尊い命が、虐待によって奪われる事件も相次いで起こっています。

激しい虐待で心も体も傷ついた子どもたち・・・。その治療にあたる施設の取り組みと、子どもたちとの格闘を通して、「児童虐待」の実態と、大人として社会に復帰する難しさを伝えるという内容でした。


昨年7月の追跡!AtoZでも「虐待の傷は癒えるのか~子どもたちの格闘~」が放送され、とても厳しい現実が放送されていて、ショックを受けました。その時の私のブログは、こちら です。


昨年の放送と同様に今回の放送も、長崎県大村市にある大村椿の森学園で取材を行った内容でした。昨年は、半年間の取材となっていましたが、今回は、500日間の密着取材となっていました。


昨日の放送の中で、特に密着取材をしていたのは、17歳のアオイさんという少女でした。

アオイさんは、実の父親と義理の母親から虐待を受けて、施設に預けられていました。

(裸で外に放り出されてしまったことがあったりしたそうです。「結局、今こうして施設に預けられているってことは、私は見捨てられたってことだよね・・・」と、寂しそうに語っていた姿を見て、とても切なくなりました。)


この施設に居られるのは18歳まで・・・。スタッフのみなさんが、懸命にアオイさんを助けようとしていました。

アオイさんは、取材当初は、児童指導員に暴力を振るったり、椅子や壁にあたってしまっていました。(辛い過去がフラッシュバックしたり、溜まってきた傷や痛みを、どこにぶつけていいのか?わからないんだろうな・・・と思いました。とても苦しんでいる様子でした。)

それが、児童指導員さんの支えや・・・。学校でのトラブルもあったのですが、それも自分で乗り越えて、成長ぶりがみられ・・・。番組の後半では、自分の夢は保育士になること!とはっきりと言って、夢に向かって頑張っている様子が流れました。(児童指導員さんが、手を握ってずっとそばに居てくれたことが嬉しかったと語っていて、そばに寄り添ってくれる人の大切さを知ることができたようです。保育士さんになりたいという夢も、きっかけはそこからだったそうです。)


その後、アオイさんは、保育士になるための短大の学費等が、120万円もかかることがわかり、一時はどうなってしまうんだろう・・・と思いましたが、施設の職員さんたちの働きで、実の父親に会い、保育士になることを応援してくれるという嬉しい返事を貰うことができました。保証人にもなってくれることに・・・。ただ、金銭面は、1年間待って欲しいということでしたが、自治体の制度を活用することで、短大に通えることになります。(勉強もしっかりされていて、ご自身の努力も相当あったんだと思います。)


番組の途中で、昨年の7月にスタジオゲストにいらした、臨床心理士の玉井邦夫さんが出演されていました。

そこで、ユングの「箱庭療法」が紹介されていました。箱の中に砂がしきつめられていて、その中にミニチュアのお人形や動物を自由に入れてもらい・・・。そこから、心の中の不安や恐怖を読み取る療法なんですけどね・・・。(心理学を勉強していると、この「箱庭療法」が、頻繁に出てきます。最近も、ある場所でユングの箱庭を勉強したばかりだったので、とても興味深かったです。)

虐待で傷ついた子供は、ワニに人が食べられてしまうような・・・そんな表現方法をすると、おしゃっていました。


スタジオゲストは、精神科医の宮田雄吾さんと映画『誰も知らない』の監督・是枝裕和さんでした。

映画『誰も知らない』は、母親と暮らす4人の兄弟の話なんですけど・・・。その兄弟の父親がそれぞれ別々で、学校にも通ったことがない子供達の存在は、世間からも誰も知らない存在となり・・・。母親が、子供を捨ててしまうという・・・虐待(ネグレクト)の話です。(東京の下町で起きた実話をもとに作られた映画です。今、ネグレクト(育児放棄)の問題は、ニュースでも多く取り上げられていますよね・・・。)

是枝監督は、映画の中で、悪人を出したくなかったそうです。傷ついた子供が、親を恨んでも、そこからは何も生まれない・・・とおっしゃっていました。

そして、宮田医師は、虐待された人が、私は虐待されましたと言って現れるわけではない・・・。ちょっと困っている隣人に声をかけるような気持ちが大切・・・と、おっしゃっていました。


最後に、アオイさんが一人暮らしを始めるところで番組は終わっていました。施設で、ずっと支えてきてくれた児童指導員さんが、アオイさんに早く彼氏が出来ますように・・・♪と言って、お茶碗2つ(アオイさんと彼の分)をプレゼントしてくれ、「あなたの幸せをいつも願っています」というメモを残していました。決して、自分は一人ではなく、自分を支えてくれている人がいる・・・ということに、アオイさんは気がついたのだと思います。


宮田医師が、虐待の連鎖についてお話された時・・・。3割か、4割はあるけれど、逆に言えば6割か7割は連鎖していない・・・。どこかで人のやさしさに触れて、信頼関係がきずかれるから・・・という言葉が印象に残りました。


これ以上、虐待の事件が増えないことを祈りつつ、虐待をされた心の傷がどれだけ深く辛いものなのかについて考えさせられる番組でした。