先週、『阿修羅展』に行ってきました。その感想・・・。
今回の『阿修羅展』に向けて、阿修羅の事や仏像の見方について、かなり予習して行ったんですよ!(大笑)
去年の秋頃に発売されたサライの「仏像の見方」や芸術新潮3月号「阿修羅特集」を読んだり・・・。
NHKのプロフェッショナルの文化財輸送、海老名和明さんの阿修羅の輸送密着の番組も見ましたし・・・。
私が行った日は、すごく雨が降っていて、人も少なくて、待ち時間なしで入る事ができました。博物館の中も比較的、空いていた時間帯だったと思います。(休日の夜は少ないかも・・・。)
さすがに、阿修羅は大人気でしたが・・・。ほんの数十秒(笑)、阿修羅を目の前で鑑賞することが出来ました。
『仏像界のスーパースター、阿修羅!』
NHKの番組で、こう紹介されていて、笑ってしまいましたが、本当に神秘的な仏像でした。
阿修羅の正面に立った時、目が合ったかのような感覚になり(笑)、思わず立ち止まってしまいました。(職員のお姉さんは、「正面で立ち止まらないでください!」と、ず~っと案内していましたが・・・。立ち止まりたくなりますよ!(笑))
本物は、テレビや写真で観る以上に魅力的で、気持ちが惹きつけられるような感覚になりますよ!
8頭身で、すらりとした体形に、6本の腕と、3つの顔!
華奢な身体に、布だけをまとい、少年のような姿・・・。
細くて、しなやかな腕・・・。
そして、戦う神のイメージとは違って、穏やかな表情でした。
阿修羅の3つの顔は、それぞれに表情が違い、正面から向かって左の顔は、下唇を噛締めた顔。向かって右顔は、ううむき加減、少し苦悩の表情。そして、正面の顔が一番、穏やかな表情をしていました。
(でも、不思議なのは、正面の顔も、見る角度によって、悲しそうに見えたり、怒っているようにも見ました。)
5月2日に放送されたNHKの「ワンダー×ワンダー」 も阿修羅を特集していたのですが・・・。
その中で、人の顔を科学的に研究していらっしゃる、元東京大学教授の原島博さんが、とても興味深いことをおっしゃっていました。
3つの顔を並べると、阿修羅は成長しているというのです。
人の顔は、幼い時ほど目の位置が顔の中心にあるそうです。そして、成長するにつれ、目の位置があがっていく特徴をもつそうです。
阿修羅の左の顔→右の顔→正面の顔と目の位置が、だんだんと高くなっていて、これは、1人の少年が成長し、大人になっている様を表しているのではないか?とおっしゃっていました。
三十三間堂の阿修羅は、3つの顔に3つの首。
でも、興福寺の阿修羅は、3つの顔に1つの首・・・。
1人の人物であることを強調しているようで、阿修羅は人間の心の成長を表しているのでは・・・とおっしゃっていました。
左は、下唇を噛んで、幼い頃の阿修羅。自ら過ちを認めることができず、反抗的な表情。
右は、少し成長し、過ちに気づき、悩み始めた思春期の頃。
そして、正面は、罪を悔い改め、悩みから抜け出そうとする青年の頃の阿修羅。
さらに腕を高くかかげた荒ぶる阿修羅が、やがて腕を下ろし、最後は祈りの合掌へ・・・。
この説は、あくまで仮説ということでしたが、とてもおもしろい仮説だな・・・と思いました。
阿修羅を作らせた光明皇后は、懺悔して心の中を清める意味合いで、阿修羅を作ったのではないか・・・という説があるそうです。
阿修羅は、悩みの世界を生きていく人間そのものを映し出している仏像なのかも?しれません。
とても神秘的な仏像でした。
阿修羅の事だけで、こんなに長くなってしまいましたが、他の八部衆像(釈迦を守る8人の従者)、十大弟子像も見ごたえがありました。(鳥頭の迦楼羅像など・・・)
「国宝 阿修羅展」は、6月7日まで、東京国立博物館で開催されています。HPは、こちら です。
入場待ち時間を確認できるサイトは、こちら です。(通常は、18:00まで開館されていますが、会期中の金・土・日曜・祝・休日は20:00まで開館されています。)