中日春秋からの転載
けっこう、納得
https://www.chunichi.co.jp/article/739223
吉田兼好の「徒然草」に良覚僧正という「極めて腹あしき」(怒りっぽい、意地悪い)人の話がある。高校の教科書に載っていたから「榎木の僧正」といえば思い出す方もいるだろう
▼こんな話だ。僧正の寺のそばに大きな榎の木があったので人々は「榎木の僧正」と呼んでいた。今でいうニックネームだが、それが気に入らぬと良覚さん、榎木を切ってしまう
▼ところがこれで終わらない。人々は残った切杭(きりくい)を見て、「切杭の僧正」と呼ぶようになる。ならばと僧正、掘り返して切杭を捨てるも、大きな穴ができ、「堀池の僧正」と呼ばれることになる
▼短慮から木を切り倒したことがすべてのはじまりだろう。事実なら、これも浅はかな短慮が原因か。保険金の不正請求が問題となっている中古車販売大手のビッグモーターである。今度は店舗前の街路樹を除草剤などで意図的に枯らしていたのではないかとささやかれる
▼道路から店舗の車を見やすくするためではないかと疑われる。国土交通省が調査を指示したが、人々の目を楽しませ、夏には緑陰をこしらえる街路樹である。それを商いに障りがあるからと身勝手にも枯らしていたのなら「極めて腹あしき」ふるまいだろう
▼「車を売るなら」のCMのうたい文句は「車をゴルフボールで傷つけるなら」となり、今度は「街路樹枯らすなら」の陰口と変わりそうな気配である。