10年以上も前のこと。


流行りのコメディ映画を

ある人と見て、同じところで

同じタイミングで、笑った…。


それだけのことなんだけど


そのとき、私は、笑いながら、

静かに涙を流していた。


こういうふうに過ごせる人と

人生を共にしたら、


たくさん笑えたのかもね。

 

何気ない会話もスムーズで

喋り続けたりしているわけじゃなく


それでも、一言、ひとことが幸せだった。


たまに見つめ合い、何だか気恥ずかしく

なって照れ隠しに笑い合ったり。


その人の笑顔を見ていると


すごく幸せだった。


あれから、何年かに一度くらい

その人との幸せな時間の夢を見ることがある。


目覚めて、さみしくて、涙が出てしまう。


今夜、あるところで

ばったりその人と会ってしまった。


一昨年くらいにも偶然、出会ってしまい


そのとき私は心が乱れて

泣きながらその場を走り去ったけど


今日は普通に会話ができた。


でも、何とも思わないわけじゃないし


あの頃を思い出して


絶対に戻れないのに、戻れたらな、とか


虚しい思いが湧き上がった。


少し話してすれ違って


別々の方向に進みながら


夜中で誰も見ていないから


私はきっと涙を流すのだろうな、と、


思っていたけれど

意外に平常心で帰ることができたことに


自分が1番びっくりしている。


直接連絡をとる術も今はないけれど

 

もしも、いつか自分の人生の期限を

告げられるような事態になったら

人を介してでも


最後にはその人に会いたい。


生きてきて、貴方の笑顔が

1番大好きでした。


一緒に笑ってくれてありがとう。


いろんな話をできてうれしかった。


ちゃんと、ありがとうって

自分で直接言いたかった。


ホントに好きでした。さようなら、って


言いたいと思っている。


ただ偶然会えて

顔を見て少しだけ話した今夜。

私は…ただまた一度

会えただけで嬉しかったんだな。


10年以上前のこと、


そうか、私はあれから

10年以上、心から誰かと

笑い合ってうれしいと感じたことが

ないんだな。