母親のための願書作成講座 その2

 さて、昨日の続きです。
 前掲した「志望理由作成例」の訂正箇所を公開します。参考になさってください。


『拝啓 季冬の候、ますます御健勝のこととお慶び申し上げます。この度は愚息が本校の入試にてお世話になります。』

⇒まず、お手紙ではないのですから「拝啓~時候の挨拶」は不要です。「愚息」という表現も願書では使用すべきではありません。この場合は「息子」でよいでしょう。願書を提出する学校は「本校」でなく「貴校」(もしくは御校など)とすべきです。「入試にてお世話になります」も願書を提出した時点で暗黙知の事柄なのです。これも削除しましょう。


『本校に憧れたのは、小学校4年生の秋です。文化祭にお邪魔させていただき、愚息に多くの展示物を見せてあげました。』

⇒「本校」を「貴校」に訂正しましょう。また、「憧れた」のは誰なのかが分かりませんね。主語の欠落に気をつけましょう。「お邪魔」という否定的表現は用いるべきではありません。また、「~させていただき」は文法上誤りです。この場合、「文化祭にまいり」と端的に記せば事は済みます。そして、「~を見せてあげる」の「あげる」は尊敬語であり、子どもに対して用いないように気をつけましょう。この場合、「あげる」ではなく「やる」という表現を使用すべきです。


『その中で、生徒たちの書道の展示を拝見いたしました。』

⇒「生徒たち」ではなく、「在校生たち」に直しましょう。因みに、「生徒」という表現に嫌悪感を抱く年輩の方は少なからずいらっしゃいます。次に「拝見いたしました」は正しいように思えますが、これも間違い。「拝見する」(謙譲語)+「いたす」(謙譲語)で「二重謙譲」になってしまいます。「拝見しました」でよいでしょう。この二重謙譲(或いは二重尊敬)は「引っかけ問題」として中学入試でも出題されます。最後にこの文章でも「主語」が省略されてしまっています。誰が「拝見した」のか明確にすべきです。


『そのダイナミックな筆使いに学校の校風「自由闊達、のびやかに」が表れており、ぜひこんな学校で過ごさせてあげたいと思いました。』

⇒まず、「学校」「こんな学校」をともに「貴校」に訂正しましょう。また、漢字のミスを見逃せません。「筆使い」ではなく「筆遣い」、「表れて」ではなく「現れて」(はっきりと目に見える形をとっている場合、「現」という漢字を用います)です。このような同訓異字、あるいは同音異義語は大人でも気をつけないとミスしてしまうことが多いのです。次に「過ごさせてあげたい」は変ですね。また「誰に」過ごしてほしいのかも書かれていません。この場合、「息子に学校生活を送ってほしい」でいいのではないでしょうか。この文章の末尾に「~思いました。」とありますが、願書の中で「思う」というきっぱりと断定しない表現は避けましょう。「~です/~ます」、あるいは、「考えます」を「存じます」という謙譲表現に変えるべきです。


 今回はこれくらいにしておきましょう。さすがに解説を1回で終わらせることはできませんね。次回は文章の十行目以降の訂正箇所について解説します。