ディストピア小説って結構避けがちです。
なんか悲しい気持ちになるか、非現実すぎであまり乗ってこないので。
でもこの作品の場合は、どちらかというと、何かが足りない世界が描かれてるという感じのディストピア小説です。
特に私が大好きだなぁと思ったのは一作目の『65歳デス』
まさに65歳に死ぬようにプログラムされた薬を打つことにした人類が何世代にもわたっても遺伝により系統されていきます。
ピッタリでなく、数ヶ月の誤差もあるし、死ぬ時はめちゃくちゃ幸せな気持ちのまま体の力が抜けるように死ぬようになっています。
だからこの世界ではみなその時までに達成したいことを書いて過ごしています。
ただこれはこれで心を病む人もいて、それに見合う仕事の人がいます。
この世界において貧富の差は今の日本の100年くらい前だったり、大昔の海外にありそうな状況です。
ただ個人的には死亡することが確定するのであれば、社会保障や就労などはそれに応じた設計になるのだから、ここまでのことになるかしら?と思ったり。
知識や経験の継承もその時間軸に見合った形で進めそうだよなぁと。
不安症な私だからでしょうか、この設定の世界は私は結構羨ましいなぁと感じていました。
ただ内容の面白さはそこではないので、ぜひ元気なおばあさまを楽しんでください。ハードボイルドですよ。
そして数学のない世界にトリップする高校生のお話は、もうこのまま短編を抜粋してヤングアダルト向けにしても良いのでは?と思うくらい知的好奇心を満たすものでした。
数学の面白さと数学嫌いな人の訴えるイヤな理由はちゃんと折り合いがつくのだろうなぁと思う作品です。
最後のシュレーディンガーの少女はもちろんシュレーディンガーの猫からきてます。
量子自殺というのを初めて知りました。
このあたりの物理や数学が好きな方は私よりずっと楽しめそうです^ ^
理系でない人も全然問題なくたのしめるSFです。というか理系とか文系とか、もはや分けること自体もう時代にあっていない気もします。。
あっという間に読了したので、多くの人に手に取って楽しんでもらえたらと思います。
〈Amazonより〉
数学の使用が禁じられた世界
“Zウイルス”によるパンデミックが起きた渋谷の街
秋刀魚がいなくなってしまった未来の食卓
さまざまなディストピア世界を生き延びる、
パワフルで勇敢な女性たちの物語
すべての65歳に例外なく、プログラムされた死が訪れる世界。肥満者たちをテレビスタジオに集め、公開デスゲームを開催する健康至上主義社会。あらゆる数学を市民に禁じ、違反者を捕らえては刑に処している王国。はたまた日々の食卓から、秋刀魚が消え失せてしまった未来──様々なディストピア世界でたくましく生きのびる女性たちを描いた、コミカルでちょっぴりダークな短編集。著者あとがき=松崎有理
■目次
「六十五歳デス」
「太っていたらだめですか?」
「異世界数学」
「秋刀魚(さんま)、苦いかしょっぱいか」
「ペンローズの乙女」
「シュレーディンガーの少女」
本屋さん日記
自治体に一つもないというところが2割くらいあると聞いてなんということか…と思いました。
図書館の必要性が増しますよね。
というか実際に触ってみてみて買うが出来ないのは結構つらいなぁ。
本の値段も高くなりつつあるので、これも仕方ないのか…。
うむぅと声を出してしまうのでした。