弟に家業をまかせ、隠居の身である孫一郎。
まだそこそこに若くて、現在独身。
庭にいる池に住む人魚のおたつにあれこれ求婚されるのですが、そのたびに異種婚姻譚のお伽噺を聞かせます。
それはうまく行くのもあればホラーなものもあるし、悲嘆のものもあります。
この小説の構造が、おたつと孫一郎のやりとりのパートの後におたつに聞かせるお伽噺のパートになり、それを聞いたおたつと孫一郎のやりとりに戻るというもの。
話のたびに少しずつ2人の関係に動きがあるので、それはそれでもちろんふむふむなのですけど、私は圧倒的にこのお伽噺のパートが好きでどっぷり味わっていました。
いま日本昔話エキスが不足なのかしら…。
最後の最後に辿り着く結果と、さらにおまけパートがなるほどねーなのでした。
そして今回Amazonからの引用で知った日本ファンタジーノベル大賞受賞にめちゃくちゃ納得したのもあのラストの展開だからだなぁ。
おたつちゃんの真っ直ぐでブレない孫一郎さんへの想いをラブストーリーとも読めるんですけど、まぁやはりお伽噺とのコラボの雰囲気もありやはりホラーに近いなぁ。
昔話ってそういうところありますしね。
孫一郎の弟もいて、おたつとこの弟との仲がめちゃくちゃ悪いところなんかもあって、単に閉じた世界のなかのお話でもない(でもまぁ閉じてますけど)ような。いわゆるスパイスがちょこちょこに効いていました。
SFとしてこの作品を取り上げてる方もいて、なるほどなぁと感じたり。
このあたりのジャンル分けって間口が広がるなら有りだと思います。
むかしむかしのちょっと閉じた人魚と大店旦那のお話でした。
〈Amazonより〉
何も残せないと思っていた僕だけど、君を生かせるのならば、これ以上の喜びはない――。
そうか、これが、僕と君が共にある、唯一の手段なんだね。
生きる理の違う美しき人魚と、
半人前な青年が築いた愛と幸せの形。
「これ以上のラストはない」と選考委員を唸らせた驚嘆の「日本ファンタジーノベル大賞2021」大賞受賞作。
若隠居した大店の跡取り息子・孫一郎は、人魚のおたつに求婚されてしまう。諦めさせるためにも、おたつにねだられるままに御伽話を語る孫一郎だったが、次第にその心は変化していく。しかし、人魚と人間がともに暮らせる未来があるわけでもなく……。
先月読んだ本を振り返る
先月の読了数は25冊だそう。マンガは入れたり入れなかったりしてるので小説と新書などの数だと思っていただければ。
今月の学びたい新書一冊も選定しなければ。
國分先生が岩波新書からスピノザを出されるのが楽しみなんですけど、予定ページ数が430p越えなんですよね…。買うのは確定です。
100pほどのめっちゃ薄い哲学系を扱う新書プロジェクトの出版社と正反対で、私としてはめちゃ嬉しいのですけど1ヶ月で読み切れる気がしません。
積読本から見繕うかな。