滋賀県で新たに交通税の導入が検討されているようだ
滋賀県では2026年6月18日告示・7月5日投票で県知事選挙が行われる。
ここで、選挙の争点となりそうな件があるので一度考察してみたい。
現知事「三日月大造」氏が導入検討を指示している「交通税」である。これは従来の市・県民税に上乗せする形で検討が進められている様である。まずはその概要を見てみよう。
滋賀県で検討されている「交通税」は、日本でも珍しいタイプの地方税で、背景や狙いがはっきりしている。
公共交通(バス・鉄道など)を維持するための財源を確保する新しい税金 である。
- 目的:地域の交通網(電車・バスなど)の維持・充実
- 対象:利用者だけでなく県民全体(個人・企業) で負担。
- 方法:「新しい税」をゼロから作るのではなく県民税などに上乗せする超過課税方式が検討
特徴として重要なのは「乗らない人も含め、広く薄くみんなで負担する」という考え方である。
その背景にある主な理由は以下の3つである。
1.公共交通の利用者減少とそれに伴う赤字の増大
- 人口減少や車社会の影響で利用者が減少
- 鉄道やバスが民間の努力だけでは維持できない
2.財源不足
- 今の支援だけでは将来資金不足が見込まれる見通し
3.生活インフラとして必要
- 通学・通院・高齢者の移動などに不可欠
- 公共交通がなくなると地域の衰退につながる可能性
■ メリット(期待される効果)
1. 公共交通の維持・充実
- バスや鉄道の廃止防止
- 本数増や利便性向上 移動しやすい地域になる
2. 社会全体へのメリット
- 高齢者の外出支援
- 子育ての負担軽減(送迎)
- 地域経済の活性化 利用者以外にも恩恵があるとされる
3. 環境・渋滞対策
- 車依存の減少
- CO₂削減・渋滞緩和
4. 地域の魅力維持
- 交通が整うことで
- 定住促進
- 観光客増加 地域の衰退防止につながる
■ デメリット・課題
1. 「使っていない人も負担」の不公平感
- 車中心の生活の人からは 「乗らないのに払うのは納得しにくい」
- 特に地方では強い反発がある
2. 税負担の増加
- 年間数百円〜数千円などが試算(規模による)
- 他の税に上乗せされるため 「増税」と感じやすい
3. 使い道の不透明さへの不安
- 本当に効果が出るのか?
- 無駄な支出にならないか? 説明不足が指摘されている
4. 別の方法があるのではという議論
- 既存予算の見直し
- ライドシェアなど民間活用 「税以外の手段で解決できるのでは?」という意見
5. 将来的な税額増加への懸念
- 一度導入すると将来的に税額が上がる可能性がある (一般的な公共政策への懸念)
まとめて言うなら
滋賀の交通税はシンプルに言うと「利用者負担」から「社会全体で支える仕組み」への転換である。
- メリット: 地域交通を持続させられる可能性(限りなく少ないと思うが)
- デメリット: 負担の公平性への疑義・納得感の問題
現状はまだ最終決定ではなく議論・制度設計の段階である。
決定には条例可決が必要で、導入是非も含め検討継続中
滋賀県という立地を考えると人口が集中しているのは南部の一地域のみで、全般的に公共交通の効率が極めて悪い、これは日本の他の地方実態と同様で、効率が悪い故公共交通が衰退してきたものだと思われる。問題点を整理してみる。
1.地理・人口構造の問題
- 滋賀県は南部(大津〜草津など)に人口が集中
- 東部・北部・西部は分散型で車依存
上記条件では“鉄道・路線バス型”は構造的に非効率になりやすい
2.需要と供給のミスマッチ
ガラガラのバス・低頻度で即応性に欠ける・高コスト
これは全国の地方交通で共通の問題で、
- 利用者が少ない → 本数を減らす
- 本数少ない → さらに使われない
典型的な「負のスパイラル」である
3.「なぜ旧来型に固執するのか」という疑問
実はここが一番重要な核心で、
交通税は「今の公共交通を延命させるだけではないのか?」という批判は実に多い
■ ただし県側の理屈(なぜそれでも維持したいか)
1.公共交通は「インフラ」
- 水道・道路と同じく「無くなると社会が成り立たない」
- 利用者が少なくても必要な人はいる 高齢者・学生など
つまり 効率ではなく“存在自体”が価値という考え 実に親切である
2. 廃止すると取り返しがつかない
- 鉄道を廃止したら復活はほぼ不可能
- 路線網が崩れると地域の人口減少が加速→ 「一度壊したら終わり」論
3.社会全体の便益(間接効果)
- 渋滞減少
- 観光・都市機能維持
- 労働力確保(通勤手段)
現実は、JRによる通勤通学等以外ローカル市・町地域内では上記便益はかなり恩恵は少ない
問題点を整理すると
- 分散地域でのバス・鉄道のコスト効率の悪さ
- 車社会との構造的ミスマッチ
- 旧来方式の延命に対する疑問
議論が分かれるポイント
- 「非効率でも維持すべきか?」
- 「全く新しい方式を実証試験のうえ切り替えるべきか?」
→ これは価値観の問題になる
■ 実際に検討されている「代替案」
滋賀県や他地域でも、完全に従来型だけではなく、以下は議論されてるようだ(※一般的な政策論)
1.オンデマンド交通(予約型バス)
- 必要な時だけ走る
- 空気輸送を減らす
2.ライドシェア・相乗り
- 民間や住民の車を活用
3.小型・分散型交通
- 小型EV(物理的・エネルギー論的に言えばEVよりも内燃機関のほうが効率的)
- コミュニティ交通
4.MaaS(アプリ統合)
- 検索・予約・決済を一体化
※▼MaaSとは(国土交通省による定義)
地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービスであり、観光や医療等の目的地における交通以外のサービス等との連携により、移動の利便性向上や地域の課題解決にも資する重要な手段
■ 結論 あくまでも私の立場であるが
「従来型の公共交通を維持するための税なら反対」、 「新しい効率的交通への転換なら条件付きで理解可能」、問題は交通税の中身が示されていないことにある。
■ 重要な視点
この議論の本質は税ではなく「地方で移動をどう設計し直すか」という事である。
- 現状維持(衰退止める)
- 効率化(作り替える)
どちらを優先するかで議論の方向性が真逆になる。
この問題は今後の滋賀県政における大変重要なものとなるであろう。
政策プロセスとしても重要な論点である。
結論から言うと、
「まず小規模で実証→効果確認→拡大」というやり方は、公共政策としては王道である。
そのうえで、なぜ滋賀県の議論が「増税ありき」に見えるのかを考える。
■ 政策論としての筋道 原則
· 不確実な政策 → 小規模実証(パイロット)
- 成果確認 → 段階的拡大
- 成果不明 → 見直し or 中止
これは行政の基本的な考え方で、実際に
- 社会実験(実証実験)
- モデル事業
- 特区制度
などはすべてこの考えに基づいている。
つまり 「いきなり広域課税」とんでもなくリスクの高い方法であるという事。
1.「旧来型に税を入れるだけでは意味がない」
- 低需要路線
- 非効率バス
にそのまま税を入れるなら 構造は何も変わらない
2.「検証設計が弱い」
重要なのはここで、「税を入れた結果、何を改善するか」が曖昧だと
- 効果測定できない
- 無駄になる可能性大
3.「政策順序の違和感」
本来は
- 新しい方法を試す
- 成果を見る
- 足りなければ財源追加
という順序で進めるべきなのに
「財源 → 後で中身検討」 のように見える。
つまり、以下のように進めるべきかと考える。
■ 段階型アプローチ(理想モデル)
STEP1:限られた地域で実証
- 過疎地域1つ選ぶ
- オンデマンド交通導入
- ライドシェア試験
STEP2:データ収集
- 利用率
- コスト/人
- 満足度
STEP3:既存交通との比較
- バス vs 新方式
- コスト効率
- 使いやすさ
STEP4:最適モデル決定
- 地域ごとに方式を変える
- 都市:鉄道+バス
- 田舎:オンデマンド
STEP5:必要な分だけ財源確保
ここで初めて「税」の議論
■ 結論(バランス整理)
- 検証なしの広域課税への疑問
- 旧来モデルの非効率への批判
- 段階的導入の必要性
✔ ただし現実の制約
- 鉄道などは「止めると終わり」
- 一部実験が難しい分野もある
- 時間的余裕がない路線もある
■ 結論
この議論は本質的に
「最適化」か「延命」かの違いである。
- 現実的手法 → 最適化(構造改革)
- 行政 → 延命+徐々に改善
実際問題として三日月知事はこの方針で今後増税に向かうのであろう。行政の正常なプロセスを無視したこういう進め方については県民として許容できないと言わざるを得ない。